血圧は、脳・血管・腎臓の3つによって、作られ、調整されるのだと思います。血圧に心臓はあまり関係なく、心臓は従属的な臓器です。体が必要とした血液循環を維持するために、ただ、自律神経に命じられて、帰ってくる血液を血管に対して拍出するだけの臓器といえます。
血圧、特に平均血圧は、末梢血管抵抗と心拍出量の積であると表現されます。この心拍出量がはいることで、まるで心臓が血圧の維持の主役のように見えますが、心拍出量を決定するのは、体の酸素需要量で、心拍数は自律神経が決めますので、通常(正常)であれば、心臓が決めるわけではありません。
(心臓が決めると、自律神経の支配から離れた、移植後の心臓の状態に近くなると思いますが、心拍数は100前後になります)
血管抵抗もあくまで平均血管抵抗です。血管抵抗は、臓器によってことなり、また、状態によっても変化します。必要な時に、必要な臓器に血液を分布させるためです。末梢血管抵抗は、自律神経やサイトカインなどでNOを介して調整されています。主な役割は繰り返しますが、適切な血流の分布です。
この抵抗血管の調整が破綻し、すべての末梢血管抵抗が等しく低下するのが、感染性ショックなどの状態です。このような時には、そう末梢血管抵抗が低下するので、心拍出量は増えますが、不要な臓器への灌流が増加して、必要な臓器への灌流が低下するので、重要臓器での血流・酸素不足となり、臓器障害が生じます。
基本的には、血管から間質に押し込む圧(静水圧)と必要十分な血流があればいいのですが、血圧そのものが必要な臓器があります。それが腎臓です。腎臓は、血液から、血漿をろ過して、尿細管・集合管でなんやかんやして、最終的に尿にします。この時のろ過率を決定する因子が、糸球体の量・毛細血管面積、腎血流量、糸球体内圧です。この糸球体内圧を一定以上に維持しなければ、適切な血漿ろ過が行われないということになります。圧を一番必要としているのは腎臓です。そして、腎臓は全身の血圧に、レニン-アンギオテンシン-アルドステロイン系、自律神経を介して調整する機能を持ちます。
以前にお話ししたように、腎臓は塩を中心とした恒常性を維持するために働きます。通常であれば、塩分の摂取が多少増えたり、減ったりしても同じ血圧でその塩を排出することができます。しかし、極端に塩分摂取が多かったり、塩分摂取あたりの血圧の変動が大きい人(食塩感受性が高い)に関しては、塩分を排出するために血圧が変動します。これが、腎臓の圧利尿曲線です。つまり、血圧は、心機能などが正常の人では腎臓が制御しているといえます。
もう一つの可能性として指摘されているのが、脳です。もちろん、血圧中枢ともいえる頭側延髄外腹側野などの自律神経制御も脳ですが、それ以外にも、アストロサイトの働きにより血圧が調整されている可能性も示唆されています。
このように血圧は、脳・血管・腎臓で、セットポイントの設定と、それを中心にした調整が行われているといえます。
ちなみに、末梢血管は収縮期から拡張期のすべての血液が動いている時相で抵抗になります。大動脈が柔らかければ、同じ1回拍出量でも拡張期に流れる血液量がありますので、時間軸で見たときに総抵抗値は低くなります。
これに、容量血管である大血管の硬さにより、若年性高血圧と老人の血圧の差になってきます。
若年性高血圧
末梢血管抵抗が上がる→大血管が柔らかい→収縮期のリザーブが利くので拡張期にも十分に血液が流れる→収縮期血圧はそれほど上がらずに、拡張期血圧があがる。
老人の血圧
末梢血管抵抗が上がる→大血管が固い→血液の大血管リザーブが減る→収縮期の血流量が増える→より正味の血管抵抗が大きくなる→収縮期の血液リザーブを増えるので、その分硬い血管を押し広げて、収縮期血圧が上がる→拡張期の血流は相対定期に減少するので、拡張期血圧は相対的に下がる。