心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心臓移植登録の流れ(4)​

​ー厚生労働省資料ー 適応となる疾患 心臓移植の適応となる疾患は従来の治療法では救命ないし延命の期 待がもてない以下の重症心疾患とする。 ​ I. 拡張型心筋症、および拡張相の肥大型心筋症 ​ II. 虚血性心筋疾患 ​ III. その他(日本循環器学会および日本…

心臓移植登録の流れ(3)

心臓移植のレシピエントの適応について、厚生労働省の資料を実際の現場の判断を踏まえて、お話ししたいと思います。 ー厚生労働省資料ー 心臓移植レシピエントの適応 1 心臓移植の適応は以下の事項を考慮して決定する。 ​ I. 移植以外に患者の命を助ける有効…

心臓移植登録の流れ(2)

心臓移植のレシピエントとしての基準として、治療不可能な重症心不全であるという以外にどのような項目があるかというと、それは厚生労働省によって大まかに決められていて、その大まかな指針のようなものを実際の患者さんに適用するときに、全国的に各移植…

心臓移植登録の流れ(1)

心臓移植に関することで、特に一般の病院でも関わる可能性のある心臓移植の必要性を感じてから実際に移植登録までの流れについてお話ししたいと思います。 心臓移植の一番初めのスタート地点は、主治医が重症の心不全で、通常の治療では、NYHA IIIないしIVの…

LVAD植え込み後の循環不全の原因と対策

植え込み型左室補助循環装置(implantable left ventricular assist device, iLVAD, 植え込みVAD)の手術をすれば、かならず循環不全が改善し、心不全にはならないというわけではありません。少数ではありますが、LVAD植え込みでも心不全の治療を行う必要のあ…

植え込み型左室補助循環について

植え込み型左室補助循環装置(implantable left ventricular assist device, 植え込みVAD)について少しお話ししたいと思います。 植え込みLVADの適応は、保険診療上は心臓移植が前提になります。では、心臓移植の登録のどの段階で可能かというと、移植施設内…

日本では使えない、Tandem HeartというpVAD

LVAD(left ventricular assist device)は、ニプロ式LVADの仲間とそれ以外にわけられます。体外かどうかということもありますが、血行動態的には、拍動か、連続流かどうかという点が違います。 ニプロ式の仲間は、東大型、ABS、ベルリンハート(Excor)などの心…

ニプロ式LVADとすこしだけ心臓移植登録について

体外式左心室補助循環(体外LVAD)で、特に昔はトーヨーボー、今はニプロといわれる単回使用体外設置式補助人工心臓ポンプについてお話ししたいと思います。 体外式左心室補助循環は、保険診療上特殊な制約(心臓移植登録済みなど)はありません。臨床的に必要と…

重症心不全の終末期には、心臓移植と緩和医療以外に、自費での植え込み型心室補助循環という選択肢もあります。

VAD(ventricular assist device, 心室補助装置)は、特殊な治療となります。 VADは、体外型と植え込み型に分けられます。 この2つには、臨床上の違い以外に保険適応の問題で大きな違いがあります。 現在(2019/5/13)、保険診療上、体外型VADは、必要があればす…

心不全治療にCHDFの準備は必要だと思います。

心不全で、何らかの理由で利尿が得られず、うっ血の症状が強く出ているときには、CHDFによる除水で機械的に体内の水分バランスを保つことも重要です。 ♯CHDF (continuous hemodiafiltration):持続的血液濾過透析 このCHDFやECUMについては、半透膜だの浸透圧…

Impella時代になっても、VA-ECMOはもちろん重要です。

Impella時代になっても、VA-ECMOはもちろん重要です。 PCPS = VA-ECMO ​​ PCPS (percutaneous cardiopulmonary support):経皮的心肺補助[法、装置]​​ ECMO (extracorporeal membrane oxygenation)​:膜型人工肺による酸素化、体外膜型人工肺 IMPELLA:これは商…

心不全の急性期治療としての機械的な治療、IABPについて

急性期の機械的な治療についてです。 現在、心不全で使用される機械的な治療としては、呼吸管理のほかには、IABP, IMPELLA, PCPS(VA-ECMO), VAD, ECUM, CHDF, (VV-ECMO)があると思います。 IABP (intra-aortic balloon pumping)​:大動脈内バルーンパンピング…

心不全の慢性期治療にはルプラックを使うのがいいと思います。

ルプラックという薬は慢性期の心不全にって非常に有用だと私は思っています。 以前にもお話ししましたが、私は慢性期のループ利尿薬は、基本的にルプラックを選択して、カリウム値が高いようであれば、ダイアートにするというようにしており、ラシックスを慢…

サムスカは、膜の透過性を変化させて胸水を減らす可能性があるのではないかと個人的には思っています。

サムスカは、膜の透過性を変化して胸水を減らす可能性があるのではないかと個人的には思っています。 臨床的に、尿量と血清ナトリウムが上がる作用以上に、胸水がへっている印象があったというのが、この考えの一番の出発点です。 これに関しての答えはあり…

私が考えるサムスカ副作用が起こる最大の危険因子は、軽度の認知症

サムスカは、血行動態的に一番安全な利尿薬だと思います。ラシックスなども効かなければ尿が出ないだけなので、血管拡張薬に比べれば、全然危険ということはないのですが、サムスカは血行動態的に乱れることが最も少ないと思います。 ただ、サムスカ特有の合…

なぜ、サムスカは有効なのか、血行動態的に安全なのか。それは、腎静脈のナトリウム濃度の変化にあると考えられる。

すこし浮腫に関してのおさらいです。 心不全の時には、何らかの理由で心内圧が上昇します。その結果、心臓の最も下流にある右房圧が上昇します。すると全身の静脈圧が上昇し、それによって全身の浮腫が生じます。この時の血管から間質への水の漏れはスターリ…

サムスカが教えてくれたこと:水はどのように全身に分布するのか。

サムスカが教えてくれた水の分布についてです。 ​ 心不全の時には、体に余分な水が貯まります。​ 水のたまり方について、サムスカは考えさせてくれました。​ ​ 輸液の考え方で、水(自由水=ブドウ糖液)を輸液するときと、生理食塩水を輸液するとき、アルブミ…

サムスカという薬

サムスカという利尿薬があります。発売が2010年12月14日とのことですので、すでに8年と少し経っていることになります。 新しい機序の薬というのは、治療の新たな一手となるだけではなく、特に臨床医に病態を考え直すきっかけを与えたり、改めて今までにもあ…

TR(8):三尖弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療の可能性について

三尖弁閉鎖不全に対する治療に対するカテーテル治療に関しての論文が最近報告されました。​ 「Georg Nickenig, Marcel Weber, Robert Schueler, et al.​ 6-Month Outcomes of Tricuspid Valve Reconstruction for Patients With Severe Tricuspid Regurgitat…

急性心不全の治療(29):急性心不全で徐脈を合併しているときには

急性心不全の時には、なんだかんだでしんどくなりますので、普段よりも脈は速くなります。しかし、徐脈性の不整脈が合併していて、明らかに徐脈になっていたり、心不全の急性期のわりに徐脈っぽくなっていることがあります。 心エコーでの心臓の動きは正常で…

急性心不全の治療(28):心不全と心房細動とジギタリスと

ジギタリス製剤は、心房細動によく投与されているのをみかけますが、慢性期の心房細動の患者に投与するのは、エビデンス的には、有害な可能性がありますので、心房細動を伴う心不全患者への投与は勧められません。 ジギタリスの作用としては、Na/Kチャンネル…

急性心不全の治療(27):頻拍に対する治療(心房細動、心房粗動の時)

心房細動の時にどうするかですが、心房細動の時には、洞調律の時に使えるジギタリス、オノアクトに加えて、ワソランやヘルベッサーも有効になります。また、特に初回の心房細動では電気的除細動をどのタイミングで行うかというのも、重要な選択肢になります。…

急性心不全の治療(26):頻拍に対する治療(洞調律の時)

循環不全や利尿が不十分で、その理由として心拍数が考えられる時には、心拍数そのものを治療しに行くことになります。あくまで目安ですが、洞調律の時には110bpmくらいまでは、心拍出量が低下する原因にはなりにくいかと考えていて、甲状腺などの原因を調べ…

急性心不全の治療(25):急性期の心拍数の評価は、モニター心電図を使いましょう。

心不全の急性期に心拍数に対して治療するかどうかは、悩ましい問題です。 救急外来や入院直後の頻拍に関しては、循環不全や呼吸不全に対して治療を行うことで安定することは多いと思います。 では、どのくらいの心拍数なら、そのまま様子を見るかという問題…

急性心不全の治療(24):急性期および重症心不全治療におけるACE阻害薬の意味と使い方

心不全の慢性期に、予後などをよくすることを目的にして使用する薬剤として代表的なものに、ACE阻害薬とβ受容体遮断薬があります。 β受容体遮断薬は、心機能を一時的に抑制する作用があるため、急性期から使用する時には、心拍数を何とかしたいというとき以…

急性心不全の治療(23):患者さんのセルフケアの必要性、外来での急性心不全治療での利尿薬の使い方

急性心不全の治療は、循環不全を常に意識し、呼吸状態を安定させながら、全身の溢水とうっ血を改善させるということになります。 基本的には、どんな心不全でも考え方や評価の仕方は同じで、重症になればなるほど、低拍出による循環不全が前面に出てくるので…

急性心不全の治療(22):心不全治療の時の1日尿量は2500±500mlくらいでいいと思います。

ファーストタッチの後に、具体的にどのように利尿薬を使用するかをお話ししました。 心不全の急性期の治療において、どれくらいの尿量があればよしとするかについての、私がなんとなくこれくらいかなと思っていることをお話ししたいと思います。 できるだけ…

急性心不全の治療(21):ひとまずのラシックス静注後の利尿薬の選択をどうするか。そして、ラシックスはクロールとともに持続静注を。

慢性心不全の急性増悪の時に私が行っていた利尿薬の投与法は、まず、ラシックスを10 or 20mg静注して、その反応を60分程度でみて、次にどうするかを考えていました。 次に打つ手として多いのが、トルバプタン(サムスカ)の追加内服か、ラシックスの追加静注で…

急性心不全の治療(20):ファーストタッチのラシックス10 (or 20)mg投与

心不全の急性期の薬剤治療については、最も重要なのが利尿薬です。 また、特に重症心不全などでは利尿薬を使いつつ、ECUMという選択肢を意識しておくのも重要です。 さて、ほとんどの心不全の増悪状態では、ある程度余分な水が体にたまっていることがほとん…

急性心不全の治療(19):カルペリチドの具体的使用方法とガイドラインでの扱いに対する疑問

カルペリチドの具体的に使用用法としては、少量から開始し、必要があれば増量するということでいいだろうと思います。具体的には、0.01γ(=ug/kg/min)程度で開始して、0.005 or 0.01γずつ30-60分程度で増量していく感じでいいと思います。それ以下でしか始め…