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サムスカは、膜の透過性を変化させて胸水を減らす可能性があるのではないかと個人的には思っています。

サムスカは、膜の透過性を変化して胸水を減らす可能性があるのではないかと個人的には思っています。
 
臨床的に、尿量と血清ナトリウムが上がる作用以上に、胸水がへっている印象があったというのが、この考えの一番の出発点です。
これに関しての答えはありません。わかりません。
 
現時点で発表されている基礎を含めた論文をばらまいて、何とかつなげて、この仮説を証明しようとしても、まだまだいくつかの線として結べるだけで最終的には否定も肯定もできません。
大きな理由は、おそらくアクアポリンやTRP(transient receptor potential)といった水やカルシウムを透過させるチェンネルが深くかかわっているのですが、これらについて、30年程度の歴史なので、意外にわかっていないこともが結構あるんじゃないかと思われる点があります。
 
今までの基礎や臨床の論文をつなぎ合わせて、一部仮説でつなぐと、胸水が膜の透過性の変化でもって変化する、さらには、血行動態が安定して水が引ける理由の一つに膜の透過性の変化があり、血管内の水の確保が他の利尿薬よりも安定的に行われている可能性があるというのが仮説です。
 
 
サムスカは、バソプレシン2受容体の阻害薬です。主な作用は腎臓のバソプレシン2受容体を阻害しますが、もちろん全身のバソプレシン2受容体があれば、その作用を阻害します。
では、バソプレシン2受容体(VR2)はどこにあるかというと、正常な人では腎臓だけのようで、ラジオアイソトープがくっついたのは、腎臓集合管部分だけであったようです。(Endocrinology. 1990 Mar;126(3):1478-84. Localization of vasopressin binding sites in rat tissues using specific V1 and V2 selective ligands.)。しかし、耳のリンパ嚢には存在しているのが確認されていますので、密度か大きさによってはわからないのかもしれません。つまり、この論文で、腎臓にしかVR2はないんだと言い切るには少し早いかもしれません。
また、何らかの疾患になった時に、正常では発現していない部分に何らかの受容体が増えたり、減ったりすることはよくあることです。例えば、正常の状態でVR2があるのかないのかはわかりませんが、肝硬変マウスでは、少なくとも腸管にトルバプタンが作用する受容体があり、アクアポリン2が増減することで、下痢になったりすることが報告されています。(Chao Chen, Tolvaptan regulates aquaporin-2 and fecal water in cirrhotic rats with ascites. World J Gastroenterol. 2016 Mar 28; 22(12): 3363–3371.)
 
また、アクアポリンに視点を移せば、胸膜の水分の透過性チェンネルとしてはアクアポリン1が分布しているようです(UANLIN SONG, California 94143-0521 Received 6 April 2000; Role of aquaporin water channels in pleural fluid dynamics)。
 
水分の透過性をコントロールしているのは、アクアポリンのほかに、TRRというチャンネルがあります。これは主にカルシウムイオンとともに水を透過させるチェンネルになり、ストレッチ刺激などさまざまな反応で刺激されます。特にストレッチにより刺激が起こるということは、圧による形態的な変化によって刺激されるということになります。
TRPにはいくつかのファミリーがありますが、ここで特に重要なのは、TRPVで、その中でもTRPV4は肺や気管支などの血管の平滑筋や内皮に分布し、透過性の調整を行っています。TRPV4を阻害すると、肺うっ血が起こっても肺の間質及び実質への水の移動は抑制されることが知られていて(J Respir Cell Mol Biol. 2008 Apr;38(4):386-92. High vascular pressure-induced lung injury requires P450 epoxygenase-dependent activation of TRPV4.)、現在、肺うっ血の呼吸困難を軽減される目的でTRPV4阻害薬が開発され、治験などが行われているようです。
 
 
これらの透過性に関係するチャンネルに関して、特にリンパ系の話になりますが、リンパ嚢の水分量の調整は、TPRV4, AVP-VR2, AQP2,NKCC2によって行われていることが知られていているらしく、これらの水の調整に異常によってメニエール病が起こることとされているようです。(Asmar MH. Otolaryngol Head Neck Surg. 2018 Apr;158(4):721-728. Ménière's Disease Pathophysiology: Endolymphatic Sac Immunohistochemical Study of Aquaporin-2, V2R Vasopressin Receptor, NKCC2, and TRPV4.)
 
これらを少し強引につなぎ合わせると、心不全となり、特に難治性胸水のような日常的に胸水が起こっている胸膜胸腔内では、水の透過性が正常とは違うチャンネルによって制御されている可能性がなくはないのではないかと思います。
リンパ系では、水分の管理が複数のチャンネルによってなされており、その中には、トルバプタンが効果は発揮するAVP-VR2-AQP2という系と肺うっ血に強く関係するTRPV4および、フロセミドに関係するNKCC2があることから、病的な胸膜や胸膜間質などでは、これらの水の調整チャンネルが関係し、かつ異常をきたしていて、トルバプタンの投与により、水の透過がしにくくなり、水の移動が減ることで胸水が減少する可能性がなくはないのかもしれないと思っています。
 
 
ある透析施設から、少しだけ自尿が残っている維持透析患者さんに、難治性の慢性胸水があって、すこしでも自尿が増えて、良くならないかと思い、トルバプタンを試しに投与したところ、多少自尿が増えて、胸水がきれいになくなったという報告がありました。
もちろん、自尿が増えていたのでそれによる可能性もありますが、ただ、その自尿の増加で、その量の胸水がその期間で減るものかという疑問がありました。もしかしたら、難治性慢性胸水の患者さんの中に、トルバプタンが有効な胸膜の水の浸透性の異常が原因となっている患者さんが一部いて、トルバプタンが有効な可能性がなくはないのかもしれません。
 
もう少し、基礎的な論文と病的な胸膜におこる浸透性に関する基礎研究が必要だと思いますが、それらの結果が難治性慢性胸水の人にトルバプタンが有効な可能性がしっかりと示しさせれるような結果であれば、維持透析の方の有症候性の慢性胸水に使用することは考えられてもいいのかもしれません。