健康リブ ー健康に生きるために病気を知るー

心不全について私が知るすべてを話すブログ

TR(8):三尖弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療の可能性について

三尖弁閉鎖不全に対する治療に対するカテーテル治療に関しての論文が最近報告されました。​
「Georg Nickenig, Marcel Weber, Robert Schueler, et al.​
6-Month Outcomes of Tricuspid Valve Reconstruction for Patients With Severe Tricuspid Regurgitation
Journal of the American College of Cardiology, Volume 73, Issue 15, April 2019 ​​」​
 
これは、カテーテル的にカルディオバンド(cardioband)というカテーテル治療を行って、三尖弁閉鎖不全を治療した結果をフォローしたという報告です。
 
30人の患者さんに、多施設で同じような治療を行いフォローした結果が報告されています。
患者さんは、左室の明らかな疾患がなくて、何らかの理由で施設毎の治療チームが外科手術が困難と判断した患者さんという具合になっています。
そのため、海外のデータにしては、平均75歳と高齢ですし、左室駆出率は58%と、平均としては正常の中でやや低めという程度になります。ただ、NYHA class III or IVで、浮腫などによる症状はしっかりとあるようです。
 
個々の細かい原因や、血行動態などなど、一例一例根掘り葉掘り評価させていただきたい衝動に駆られますが、ひとまずざっくりとそのような方々にcardiobandを行うと、三尖弁逆流の定量的な評価で行った重症度もよくなり、NYHA class分類で評価する呼吸困難や、浮腫などといった臨床所見が改善し、6分間歩行の距離も、6か月後の段階で+60mもよくなると報告されています。
 
おそらく、右室の心筋の障害の程度が軽く、三尖弁逆流が弁輪を中心とした構造としての問題を持っているもののほうが、この治療は有効であると考えられますが、細かいことまではわかりません。
右室心筋の障害やダメージが強くて、三尖弁輪と腱索の距離が伸びているような場合には、弁輪を狭くしても効果は小さいと思います。
 
ちなみにcardiobandは、youtubeで調べていただければ、手術の画像が検索できます。便利な世の中になりました。
caridobandは、カテーテルで形成術の時に用いられるような馬蹄形のものを弁輪にスクリューを使って固定して弁輪を小さくすることで弁の逆流を治そうというものです。このスクリューで固定する仕方が、すごいことを考える人がいるものだなと思ってしまうすごい作りになっています。
 
 
外科手術で行う弁置換の時には、有効性を個々の心機能を総合的に評価して、かなり必死に考える必要があります。
弁置換では、外科的な手術ですので、外膜を剥離することで多少なりとも心外膜炎になる可能性がありますし、これが起こると心機能が悪いものに対しての術後のもっとも困難な血行動態的な障害となります。
また、人工弁であれば多少なりとも弁による抵抗ができます。左心系はもともと高圧系なので、弁の抵抗はほぼ無視できますが、右心の場合にはこれが効いてくる場合にがあります。
 
血行動態的に手術により三尖弁閉鎖不全の治療が有効かどうかは、血行動態的に予測することが望まれます。
逆流が減ることにより低下する拡張末期圧は、右室にとって増加する後負荷(孔が一つ減る)と収縮機能によってきまる収縮末期容積に、1回拍出量が足されることにより決定する拡張末期容積が、手術前よりもどれだけもとより減るかによって決まります。​
人工弁でできる圧較差 < 逆流が減ることにより低下する拡張末期圧」 であれば、右房圧は低下し、手術は有効と判断されます。
さらに、外科的手術では、外膜炎の可能性はなくはないので、これもリスクとして考えるのと、外科の先生には可能な限り右室周りの心外膜(periの方だけしかできませんが)の剥離をお願いすることが重要となります。
 
外科手術の場合には、これらを包括して手術の有効性を考えなければなりませんが、cardiobandであれば、外膜円も起こりませんし、手技そのものの合併症は低いようですが、それが明確になれば、手技に伴う合併症以外には、血行動態的に基本的に悪いことはしないと考えられますので、やっても悪くはないし、有効な人も一定数いるということになりますので、よい治療だと思います。
 
あとは、有効であろう人のグルーピングを行って、コストに見合う成果を残せるようにすることが重要だと思います。
ひとまずは、この研究のように左室の病気はなくて、三尖弁閉鎖不全が重度にあって、それによる症状があるということになりますが、それに加えて右室機能の評価も行っていけばある、完全に有効な人はわからなくても、有効な人を含む一定のグルーピングは可能だと思います。