心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心臓移植登録の流れ(2)

心臓移植のレシピエントとしての基準として、治療不可能な重症心不全であるという以外にどのような項目があるかというと、それは厚生労働省によって大まかに決められていて、その大まかな指針のようなものを実際の患者さんに適用するときに、全国的に各移植実施施設間で齟齬がないように、併存していれば除外されるような疾患や病状を具体的な項目に翻訳しているというような状況です。
例えば、厚生労働省の基準では、心臓移植の除外基準として、肝臓の不可逆的な障害という項目がありますが、これを慢性的な肝炎ウイルス感染状態、または、肝硬変状態という具体的な病名・疾患名に翻訳して、それらの疾患を併発している状態では、心臓移植登録からは、除外されるという感じになります。
 
厚生労働省の心臓移植のレシピエントの適応に関する参考資料をお読みになった方は意外に少ないかと思います。
特殊な施設にいて、移植の申請にかかわっていると、この資料に書いてあることをみているということは必須であり、この文書自体が必読なので、移植申請を行うような施設とそうでない施設とのこの文書の周知度にはかなり差があるかと思います。
 
あまりこういうのをみる機会は少ないかと思いますので、少し見ていこうかと思います。
 
厚生労働省から参考資料として出されている文言をそのまま掲載しています。
これらの文言をもとに、心臓移植のレシピエントとして適応があるかどうかを判定してきます。
少しずつ説明してきたいと思います。
 
 
ー厚生労働省資料ー
心臓移植レシピエントの適応
1 心臓移植の適応は以下の事項を考慮して決定する。 ​
 I. 移植以外に患者の命を助ける有効な治療手段はないのか?​
 II. 移植治療を行わない場合、どの位の余命があると思われる か? ​
 III. 移植手術後の定期的(ときに緊急時)検査とそれに基づく免疫 抑制療法に心理的・身体的に十分耐え得るか? ​
 IV. 患者本人が移植の必要性を認識し、これを積極的に希望する と共に家族の協力が期待できるか? 
などである  ​
2 適応となる疾患 心臓移植の適応となる疾患は従来の治療法では救命ないし延命の期 待がもてない以下の重症心疾患とする。 ​
 I. 拡張型心筋症、および拡張相の肥大型心筋症 ​
 II. 虚血性心筋疾患 ​
 III. その他(日本循環器学会および日本小児循環器学会の心臓移 植適応検討会で承認する心臓疾患) ​
3 適応条件 ​
 I. 不治の末期的状態にあり、以下のいずれかの条件を満たす場 合 ​
  a. 長期間またはくり返し入院治療を必要とする心不全 ​
  b. β遮断薬および ACE 阻害薬を含む従来の治療法では NYHA3 度ないし4度から改善しない心不全 ​
  c. 現存するいかなる治療法でも無効な致死的重症不整脈 を有する症例 ​
 II. 年齢は 60 歳未満が望ましい ​
 III. 本人および家族の心臓移植に対する十分な理解と協力が得ら れること ​
4除外条件 ​
 I. 絶対的除外条件 ​
  a. 肝臓、腎臓の不可逆的機能障害 ​
  b. 活動性感染症(サイトメガロウイルス感染症を含む) ​
  c. 肺高血圧症(肺血管抵抗が血管拡張薬を使用しても 6 wood 単位以上) ​
  d. 薬物依存症(アルコール性心筋疾患を含む)​
  e. 悪性腫瘍 ​
  f. HIV(Human Immunodeficiency Virus)抗体陽性 ​
 II. 相対的除外条件 ​
  a. 腎機能障害、肝機能障害 ​
  b. 活動性消化性潰瘍 ​
  c. インスリン依存性糖尿病 ​
  d. 精神神経症(自分の病気、病態に対する不安を取り除く 努力をしても、何ら改善がみられない場合に除外条件と なることがある) ​
  e. 肺梗塞症の既往、肺血管閉塞病変 ​
  f. 膠原病などの全身性疾患 ​
5 適応の決定  ​
当面は、各施設内検討会および日本循環器学会心臓移植委員会適 応検討小委員会の2段階審査を経て公式に適応を決定する。心臓移植は適応決定後、本人および家族のインフォームドコンセントを経て、 移植患者待機リストにのった者を対象とする。 ​
医学的緊急性については、合併する臓器障害を十分に考慮する。 ​
付記事項 ​

 I. 上記適応症疾患および適応条件は、内科的および外科的治療 の進歩によって改訂されるものとする。