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心不全に対する慢性期治療(4):ARNI

慢性心不全のHFrEF(Heart Failure with Reduced Ejection Fraction)に対する治療で、ACE阻害薬、βブロッカー、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬以外の薬物治療についてのお話ししたいと思います。


主に、今回はまず、日本で未発売のARNIについてお話ししていこうかと思います。


ARNIというのは、ARB(Angiotensin Receptor Blocker)+Ni(ネプリライシン阻害薬, Neprilysin Inhibition)のことで、具体的にはバルサルタンと
sacubitrilの効果を合わせた薬となります。論文上では、Angiotensin-neprilysin inhibitionという単語が使われています。
sacubitrilは、ACE阻害薬のような名前ですが、BNPなどを分解するNEPを阻害する薬となります。心不全の時に、BNPが上がるので、ついつい忘れてしまいそうになりますが、BNPは心血管保護的に働く内因性ホルモンですので、BNPを代謝、失活させる酵素を阻害して、BNPの濃度を高く保つことができれば、心血管保護的に働いてよい効果を及ぼすであろうと思われました。その結果できたのが、ACE阻害薬+Niでしたが、もともとのACE阻害薬の副作用である血管浮腫が相当みられ、臨床的に使用が困難であると判断され、次にARBであるバルサルタンにくっつけて開発されたのが、この薬剤ということになります。ちなみに欧米での商品名は、「Entresto」というようですが、名前の起源は知りません。
さて、ARNIに関する臨床試験は、PARADIGM-HF(N Engl J Med. 2014 Sep 11;371(11):993-1004.)といいます。これは、エナラプリルとARNIのダブルブラインドの試験です。1万人弱を2年ちょっと(正確には、8442人を中央値で27か月)追いかけています。参加基準は、LVEF 40%以下で、NYHA II以上、後はBNPなどの基準があります。結果的には、ARNIがエナラプリルよりも、心血管死亡を減らし、心不全入院を減少させました。副作用としては、低血圧と血管浮腫が多かったとのことです。血管浮腫は、ACE阻害薬でよくみられますが、ARNIでよりみられたことや、先行のACEi+NiでACE阻害薬単独より血管浮腫が臨床で使うのに許容できないほど多かったことを考えると、Niそのものがそれなりに血管浮腫を起こさせると考えられます。もともと、日本人は血管浮腫が起こりやすいとされておりますので、日本人における臨床利用では注意が必要なのかもしれません。
ARNIが有効なのは確かだと思いますが、対象がエナラプリルであることは若干の議論の余地があるかもしれません。どうせなら、ACE阻害薬の中でも最も有効性が高いといわれているラミプリルかぺリンドプリルを対象にしたほうが、より説得力があったように思います。この件については、今後少し規模を落として行われるかもしれませんが、たぶん、行われないと思います。
(ちなみに、ARBのミカルディスは、ラミプリルとガチンコで引き分けていますので(ONTARGET, J Am Coll Cardiol. 2012; 59: 74-83.)、エナラプリルならミカルディスが勝っていたかもしれません)