心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全とは(原因・検査・症状・診断まで)

心不全のすべて(25:心不全のStage)

心不全の臨床経過のイメージです。 心不全の話を進めるうえで、知っておかないと話がややこしくなる問題があります。 心不全といっても、症状がない段階から、安静でも息苦しさや倦怠感がとれないような状況まで様々です。 上の図は、慢性的にゆっくりと進む…

心不全のすべて(24:心不全の自覚症状)

心不全の症状を、まずは列記します。 左心不全症状:息切れや動悸、易疲労感、夜間発作性呼吸困難や起座呼吸 右心不全症状:浮腫、体重増加、消化器症状(悪心・嘔吐・便秘)、食欲不振 低灌流所見:尿量の低下、四肢の冷感、記銘力低下、集中力低下、性格変化…

心不全のすべて(23:低灌流所見は実は非常に診断が難しい)

心機能がいよいよ悪化してくると、心臓から血液を駆出できる量に制限が出てしまいます。 さらに、心機能が非常に悪い人は心拍数を司る洞結節にも不全がおよび、心拍数をあげることもできなくなることもしばしばみられます。 1回拍出量が少なく、さらに、心拍…

心不全のすべて (22:胸水と肺うっ血)

肺うっ血と胸水は、胸に水がたまるという意味では共通していますが、肺うっ血および肺水腫は左心不全症状で、胸水は右心不全症状です。 左心不全症状は、左室拡張末期圧および左房圧の上昇による症状で、右心不全症状は、右室拡張末期圧および右房圧の上昇に…

心不全のすべて(21:左心不全症状と右心不全症状は、機能不全とは必ずしも一致しない)

心不全のうっ血及び溢水による症状は、左心の拡張末期圧と右心の拡張末期圧の上昇によるものに分けられます。 それぞれのうっ血、溢水の症状を左心不全症状、右心不全症状と言うことがあります。 ちなみに心拍出量の低下は、左室・右室のどちらに起因するも…

心不全のすべて(20:左室の駆出率の保たれた心不全とは。 Heart failure with Preserved Ejection Fraction)

左室の駆出率の保たれた心不全という疾患群があります。 かなり前、患者さんは心不全なのに、心エコーで左室が良く動いていて、弁膜症もないということに疑問が呈されていたようです。なぜ、心臓が良く動いているのに、心不全になるのかということです。 左…

心不全のすべて(19:右室拡張末期圧上昇による臓器のうっ血)

左室拡張末期圧の上昇は、肺うっ血、肺水腫を起こします。また、慢性的な経過で、肺胞の構造変化や、肺血管の構造変化により、酸素交換能の低下や肺高血圧を引き起こします。 右室拡張末期圧の上昇は、平均右房圧の上昇を引き起こします。全身の臓器を潅流し…

心不全のすべて(18:左室拡張末期圧の上昇は、急性には肺水腫を起こし、慢性的には肺高血圧、酸素拡散能の低下を起こす)

心不全の症状は、低灌流による症状とうっ血による症状に分けられます。 低灌流による症状はある程度重症度の高い心不全にみられるのに対して、うっ血の症状はすべての心不全にみられます。 有症候性心不全というのは、うっ血の症状があることが前提です。重…

心不全のすべて(17:肺うっ血と肺水腫は左室拡張末期圧の上昇が原因)

心不全では、静脈系の血流のうっ滞によっていろいろな症状が出ます。 心不全による症状は、基本的に心臓の拡張機能不全が原因です。拡張機能不全とは、拡張末期の左室が最大容積の時の心臓の内圧が過剰に上昇している状態と定義されると考えています。 ここ…

心不全のすべて(16:一般的な急性心不全では血圧は低下しない、むしろ上昇する )

心臓には、右心系と左心系があり、さらにそれぞれ心房と心室にわけられます。心臓は左右・上下で4つの部屋に分けられます。 心不全の症状は、大きく3つに分けられます。 左室の拡張末期圧上昇による症状、右室の拡張末期圧の上昇による症状、そして、心拍出…

心不全のすべて(15:心不全の症状の原因)

心不全で、収縮機能が悪くなると、必然的に心臓は大きくなります。 急性の変化では、心室が大きくなるに従って、心内圧は上昇します。 慢性の変化でも、おそらく心臓が大きくなることで心内圧が低下することはないと考えられます。 収縮機能低下を原因にした…

心不全のすべて(14:心臓の容積はどのように決まるのか。重要キーワード Afterloadmismatchとは)

心臓は、体が必要とする酸素需要を満たすために適当な循環血流量を駆出します。 心臓の大きさは人の胸郭の大きさによって適当な範囲の大きさで、かつ、心臓のエネルギー効率との兼ね合いで、1回の心拍出量がおよそ70ml程度で、心拍数70回程度、左室の駆出…

心不全のすべて(12:心筋細胞不全)

心不全の心筋には何が起こっているのか。 心臓の筋肉は、心筋細胞内にあるアクチン・ミオシンの、カルシウム濃度に依存した滑り込み機構によって、収縮と拡張を繰り返します。 心不全を起こす最も狭い意味での不全心は、心筋細胞の機能不全を基礎にしていま…

心不全のすべて(11:心臓を流れる電気)

心臓の収縮拡張は電気的な刺激でコントロールされています。 心臓の電気によるコントロールで、非常に大事な部分が2つあります。 右房の上大静脈近くにある洞結節と、同じく右房の左右の心房心室が集まる部分の近くにある房室結節です。 心房と心室は、房室…

心不全のすべて(10:心筋細胞のカルシウム濃度が増える仕組み))

心筋細胞の拡張と収縮には、細胞内のカルシウム濃度が重要です。 心筋の収縮機構であるアクチン・ミオシンのアクチンにくっついているトロポニンCという蛋白に、カルシウムがくっついて心筋が収縮し、はずれることで心筋は弛緩します。 また、カルシウムのほ…

心不全のすべて(9:心筋細胞の収縮)

心臓の収縮を細胞のレベルで見ていきたいと思います。 (おおむねほかの筋肉でも起きていることは同じですが、心臓は自律的に動くので、コントロール系統が違います) 心筋の中には、筋肉繊維が束ねられた束があって、それが収縮することで細胞としても収縮し…

心不全のすべて(8:心臓の収縮機構)

心臓は、組織としてみるとバネの性質を持っています。 心臓の筋肉を取り出して、棒状にするとバネになります(カエルの心臓で実験されています)。 棒状の心臓の筋肉を引っ張って放すと、自然にしている状態の長さよりも短く縮んで、元に戻ります。 また、長く…

心不全のすべて(7:拡張機能と心不全症状)

今回は、拡張機能と心不全症状のお話です。 私は、心臓においては収縮よりも拡張する機能の方が、多くの心不全では重要だと考えています。 特に心機能障害がかなり進行して心臓がだす(拍出)血流量が、体が必要とする有効循環血流量を満たすことができない…

心不全のすべて(6-2:拡張機能を障害するもの (蓄積性疾患と拘束型心筋症))

間質の線維化のほかにも、蓄積性疾患といって異常なたんぱくが心筋間質に沈着することで、心機能の拡張機能が低下するような疾患もあります。2次性の拘束型心筋症といわれることもあります。 蓄積性疾患として比較的よくみるのが、アミロイドーシスとサルコ…

心不全のすべて(6-1:拡張機能を障害するもの (心膜と間質線維化を中心に))

心臓の拡張機能(いかに柔らかくなれるか)は、非常に重要です。 心室が全身や肺循環からの血液を受けいれるのに、拡張末期の圧が上がってしまうのには、いくつかの要因があります。 心臓の弛緩の要素として、心筋細胞そのもの、心臓の心筋細胞以外の間質組織…

心不全のすべて(5:心不全のうっ血症状の原因)

心不全の症状は、大きく二つに分かれます。 一つは、心房圧上昇によるうっ血症状で、もう一つは心臓から駆出される血液量が、有効循環血流量に満たないためにおこる低潅流症状です。 今回は心房札上昇によるうっ血症状についてお話します。 心臓の機能が低下…

心不全のすべて(4:心室の拡張末期圧とは?)

心臓は、収縮する臓器でありますが、エネルギー自体は拡張するときに多くを使っています。心臓は拡張する臓器でもあります。 心臓が拡張するときには、心筋細胞内では細胞内のカルシウム濃度を下げることによって、心筋細胞内のアクチン・ミオシンという収縮…

心不全のすべて(3:心臓の発生と大きさ)

心不全の根底には、心臓に血液が充満するとき(拡張期)に心臓の中の圧力(心内圧)がどれだけ上がらずに血液を貯められるかということが、非常に重要です。 心臓は、おそらく心筋そのものはかなりおおきくなれるポテンシャルを持っていると思います。 その前に…

心不全のすべて(2:心機能の悪い心臓とは?)

心不全は、何らかの原因で機能低下した心臓が原因です。 では、心機能が良い、悪いはどうしたらわかるでしょうか。 一言でいうと、心臓、特に心室がもっとも拡張したとき(収縮する寸前)の、心室の中の圧力が上がらない心臓は、悪くないといえます。 心臓は、…

心不全のすべて(1-2:心不全とは)

血流量心不全とは: 何らかの心機能の障害、または、全身の需要の亢進により、有効な循環血流量を維持できない、または、有効循環血流量を維持するために心臓に何らかの負荷がかかっている状態を心不全といい、 この状態が安静時に起こっている場合はもちろ…

心不全のすべて(1:心不全とは)

今回から、心不全について書いていきたいと思います。 まず、「心不全とは」からいきます。 心不全とは、心臓が何かしら悪いということ。 心不全とは、すべての心疾患の結果。 心不全とは、心臓が悪くて起こる自覚症状、他覚所見(レントゲンとか血液検査とか…