心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(9:心筋細胞の収縮)

心臓の収縮を細胞のレベルで見ていきたいと思います。

(おおむねほかの筋肉でも起きていることは同じですが、心臓は自律的に動くので、コントロール系統が違います)

 

心筋の中には、筋肉繊維が束ねられた束があって、それが収縮することで細胞としても収縮します。

筋肉繊維には、一定間隔でZ膜という区切りがあって、その間にアクチン・ミオシンという収縮に関係するゴムのようなものがあります。

Z膜は、板のような感じで、板と板の間に、アクチンとミオシンがあるようなイメージです。

 

アクチン・ミオシンの働きにより、Z膜の間の距離が短くなります。

Z膜の距離が短くなるということは繊維全体の長さ自体が短くなる、つまり、収縮しているのです。

 

例えると、Z膜が動く壁で、ミオシンが筋肉もりもりの人、アクチンが壁を動かすために、壁とつながっているゴム製の綱。壁は2枚あって、その間に人がいるとします。

筋肉もりもりの人が、筋トレのために壁につながったゴムの綱を引っ張って、壁を引き寄せて、近付けます。

近付いたら、電気の力で、壁はまた離れていきます。

それを1日10万回繰り返します。

 

人が綱を引くときに、人にはエネルギーがいります。また、電気で壁を動かすときにも電力のエネルギーがいります。

同じように心臓の拡張にも収縮にもエネルギーが必要なのです。

 

綱はゴム製なので、引っ張れば引っ張るほど最初はゴムの弾性でよく収縮しますが、引き寄せきるには人の力も必要で、ただ、ゴムに勢いがあるので、よく引っ張った時のほうがより短くできるイメージです。

 

画像を確認いただいたほうがわかりやすいと思います。

一度、Googleなどで、「ミオシン アクチン」で画像検索していただいたら、いろいろとわかりやすい画像が出てきます。

 

ミオシンは太めのファイバーのようなフィラメントで、アクチンは細めのフィラメントになっています。介在板とアクチンがくっついていてます。ミオシンは、直接ではなく、タイチンというたんぱくの糸でつながっています。

ミオシンには、ムカデの足のように胴体からいっぱい足がでています。その足の先にはミオシンヘッドといって、エネルギーを使って、アクチンを手繰り寄せるように動かす部分があります。

収縮が起こるきっかけは、アクチンについているトロポニンCというたんぱくにカルシウムが結合することで始まります。

細胞内のカルシウム濃度が高まればトロポニンCとカルシウムが結合し、ミオシンの足の先のミオシンヘッドがエネルギーを使ってアクチンを手繰り寄せて、Z膜同士の距離が短くなります。

そして、細胞の中のカルシウム濃度が低下し始めるとトロポニンCとカルシウムがはずれて、ミオシンヘッドの手繰り寄せがはずれて、Z膜の距離が開いていき、拡張します。

これをクロスブリッジといいます。

 

ちなみに、心筋梗塞の時に測るトロポニンT,トロポニンIというのは、トロポニンCと同じようにアクチンにくっついているたんぱくのことで、心臓に特異的に存在するので、これが通常より高くなっていると心筋にダメージが起こっていると判断されます。

トロポニンは心筋ダメージを測定する項目です。

 

では、このカルシウムの上がり下がりは何によっておこるかというと、電気刺激です。

心臓の収縮の始まりは、心臓の右房の上大静脈の近くにある洞結節という場所が、心臓のリズムをコントロールしています。

そして、洞結節が刺激を送ると、それが電気が流れる専用の心筋ファイバーと使って、心臓全体に電気刺激をまず心房に、次いで心室に送ります。

心房と心室には、それぞれほぼ同時に電気刺激が送られますが、心室の場合に、心臓の先の尖っているところを心尖部といいますが、電気伝導専用のファイバーの大きな出口が心尖部にあるので、心尖部から刺激を受けます。

その刺激はナトリウム刺激で、その刺激によって、最終的に、細胞の中のカルシウムを貯蔵している筋小胞体という袋からカルシウムが一気にでて、このカルシウムがアクチン・ミオシンを刺激して、収縮が起こります。

そして、次にカルシウムを回収するのも筋小胞体で、ホスホランバンというたんぱくをリン酸化して、SERCA2aという入り口を開いて、カルシウムを筋小胞体に収容し、細胞内のカルシウム濃度が下がることで、アクチン・ミオシンによって拡張していきます。

 

このようにして、心筋は、電気の流れをきっかけに収縮拡張を起こします。

一般的に、カルシウム濃度が上がってから下がるまでは、時間に依存しており、収縮の時間は、心拍数が上がっても、下がってもほぼ同じ時間間隔で経過します。

 

ちなみに、血管の抵抗などを決めている平滑筋は、ミオシンの軽鎖といって、ミオシンを構成する一部がリン酸化されたり、脱リン酸化されたりすることで、一定の緊張度を保つようにコントロールされています。

(血管の平滑筋は動くよりも、収縮状態を段階的に変化させることで、体に必要な抵抗値を作り出し、コントロールすることが重要なため)