心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(10:心筋細胞のカルシウム濃度が増える仕組み))

心筋細胞の拡張と収縮には、細胞内のカルシウム濃度が重要です。

心筋の収縮機構であるアクチン・ミオシンのアクチンにくっついているトロポニンCという蛋白に、カルシウムがくっついて心筋が収縮し、はずれることで心筋は弛緩します。

また、カルシウムのほとんどは、細胞内に絶縁されている筋小胞体という袋の中にしまわれていて、刺激によりカルシウムが放出され、時間経過でカルシウムが回収されるということを繰り返して、細胞内のカルシウムの変化に従って、心筋細胞は収縮と弛緩を繰り返します。

 

では、カルシウムの放出が起こる刺激は何かというと、細胞の外から細胞の中へカルシウムが入ってきて、細胞内のカルシウム濃度が少し上がるという変化です。

細胞内のカルシウム濃度が少しあがることを刺激として、筋小胞体内からカルシウムが放出されます。

 

では、細胞内にカルシウムが流入する刺激は何かというと、隣接する細胞からの刺激です。

隣接する心筋細胞から、電気的な刺激がきます。これはナトリウム(正確に言うと電解質はすべてイオンです)によって起こされます。隣の心筋からのナトリウムをメッセンジャーにして刺激をうけると、その刺激によって、細胞の外から中へナトリウムを通過させるチェンネルが開きます。すると、細胞の中は、クロールなどのマイナスイオンによって、細胞外よりも電圧が低くなっています(低いどころかマイナス90mVです)ので、一気に細胞の中にナトリウムが流れ込みます。これにともなって、カルシウムを通すイオンチャンネルも同時に開いて、カルシウムも流れ込みます。

このカルシウムの流れ込みが刺激となって、筋小胞体からカルシウムが一気に細胞内に流れ出し、アクチン・ミオシンは収縮します。

 

ちなみに、このカルシウムチャネルをより強く開いて、通過量を増やすのが交感神経の刺激です。流れを増やして、細胞内にカルシウムを供給し、心筋の収縮力を上げる効果を持っています。

また、ブロックしてしまうのが、不整脈などに用いられるカルシウムチャネルブロッカーです。今、上市されている高血圧に対して用いられるカルシウムチャネルブロッカーは、血管平滑筋のカルシウムチャネルにしか作用しませんので、心筋の作用を弱くすることはありませんので、心不全患者にも必要であれば使用できます。

 

また、この筋小胞体の出口をコントロールしているのが、リアノジン受容体という受容体の刺激です。

心不全患者では、このリアノジン受容体が不全を起こしていて、拡張期でもだらだらとカルシウムが細胞内に流出してしまし、拡張・収縮が弱まっていると報告されています。拡張期には、しっかりとカルシウムを吸収して、収縮期に一気に吐き出すという、メリハリも非常に重要なようです。

また、強心薬の作用点である、筋小胞体のカルシウム回収機構であるホスホランバンとSERCA2aの不全も心不全で報告されており、心筋内のカルシウムのメリハリをコントロールすることの重要性を認識させられます。

 

細胞間の連絡用にコネキシンという穴が開いています。最近、心筋間だけではなく、マクロファージという免疫を担当する細胞ともコネキシンがあることがわかってきています。

脳では、脳細胞だけはなく、周囲の細胞(アストロサイトなど)が脳神経疾患の原因となっていることがわかっており、それらに対する治療も始まっています。

心臓でも、マクロファージや樹状細胞の重要性を以前から指摘し、研究されている方もいらっしゃいます。

樹状細胞などが、炎症を通してだけではなく、心筋のコントロールに関与していると非常に面白いですが、アストロサイトのような機能のある細胞は残念ながら、今はわかっていません。