心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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starling下降脚についての考察

スターリング曲線では、右房圧を上げれば、右房圧が低い領域ではほぼ直線上に心拍出量は変化しますが、ある程度のところでは、右房圧当たりの心拍出量が変化は徐々に鈍くなっていき、右房圧を一定以上に上げすぎると心拍出量は下がってきます。これをスターリングの下降脚といいます。

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下降脚の原因としては、サルコメアの過伸展で説明する説があります。
サルコメアは、アクチンとミオシンを中心とした心筋の収縮弛緩のメカニズムの中心を成す構造です。サルコメアの両端はZ帯という壁のようなものがあり、Z帯に、アクチンがくっついています。そのアクチンの間にミオシンがあって、アクチンとミオシンが滑り込み構造で心筋は収縮します。例えると、ミオシンが筋肉ムキムキの人で、両サイドにZ帯という壁があって、アクチンという紐が壁から飲んて来ていて、アクチンを引っ張ると壁が引っ張ている人に向かって平行に動くというイメージすです。

両サイドの壁の真ん中にいるミオシンがアクチンを引っ張って両サイドの壁の距離を短くすることで、心筋全体が短縮して収縮するという仕組みです。
壁をスライドさせるのに、サルコメアはバネの特性を持っているため、収縮させる前に、壁であるZ帯の間を離せば離すほど、大きな力が生まれて強く収縮します。これが、フランク・スターリングの法則ですが、引っ張りすぎて、ある一定の長さを超えると、バネとしての特性が失われ、収縮のエネルギーが減退します。伸ばせば伸ばすほど発生する力が大きくなるという特性は失われるとされています。
これがサルコメアに注目したスターリング曲線の下降脚に関する仮説です。


この下降脚の考えが、実臨床でも有効かというと、実は有効で、心膜による心室の拡張の阻害である血行動態学的な心膜炎状態(hemodynamic CP)の時にこの現象がみられます。心膜は主に中皮細胞で構成されていますので、慢性的な経過であれば増殖したり、細胞間の距離を広げることで、広がっていくことはできますが、心不全の急性増悪のように急な心臓の拡大に伴って十分に広がることはできませんので、もともとある余分なスペースが埋まると、心室の拡張は心膜の抵抗を受けることになります。この一時的な血行動態的収縮性心膜炎状態が、臨床的には下降脚に該当し、実臨床でも意味のある曲線ということになります。
Hemodynamic CPの状態かどうかは、右と左の心房圧の比をみると判断できることが多いです。


最後に、私のスターリングの下降脚に関する仮説を追加しておきます。
あくまで、参考程度にみていただきたいのですが、心筋の収縮は、細胞レベルでみると横方向におこります。つまり、心筋をエコーで言うと短軸方向にみたときに、円周の接線方向にそれぞれの細胞のアクチンとミオシンの滑り込み現象が起こって、それによって、心筋が円周方向に引き合い円周が短くなるのと、縦方向(中心方向)に心筋が肥大することが合わさって、左室内腔容積が減少し、その減少した分の血液が駆出されます。心エコーや心臓MRIで心筋の太さが変わるのを観察できますので、これが中心方向への肥大で、円周が変化するのは外周(心筋の心膜外膜側)の変化としてとらえることができます。この時に、左室が小さければ小さいほど、中心方向への肥大は有効になり、また、円周方向への変化も半径が小さいほど有効になります。断面積が大きくなり、円周が大きくなれば、接線の強力である中心方向への力は小さくなります。
心筋線維で考えた場合には、伸ばせば伸ばすほど収縮する力はバネのように大きくなります。ただ、心筋は基本的には円周方向(部位によって異なるものの、心筋は心尖部から心基部に向かうねじれ状になっている)配置されていますので、円として考えなければなりません。
これらを合わせると、伸ばせば伸ばすほど収縮力が上がるということと、円が大きくなればなるほど内腔を狭くする効率が悪くなるということの兼ね合いのようなもので、ある一定の面積を超えると収縮性が低下する可能性があります。
これは仮説ですが。