心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(14:心臓の容積はどのように決まるのか。重要キーワード Afterloadmismatchとは)

心臓は、体が必要とする酸素需要を満たすために適当な循環血流量を駆出します。

心臓の大きさは人の胸郭の大きさによって適当な範囲の大きさで、かつ、心臓のエネルギー効率との兼ね合いで、1回の心拍出量がおよそ70ml程度で、心拍数70回程度、左室の駆出率65%というのがおおよその正常な値になります。


心臓の左室の拡張末期の容積と収縮末期の容積の差が心拍出量となります。(弁膜症がなければ)

心臓の大きさを考えるときにどのように考えるとよいかというと、個人的な考え方ですが、まず、心室の収縮末期の容積を一番に考えます。


収縮末期の容積は、圧容積関係図という考え方から、心室の本質的な収縮機能と、心臓が血液を拍出する時に、心室にかかる負担(負荷)を後負荷といいますが、その2つによって決まります。


心臓がよくて、後負荷がすくなければ、心室の収縮末期容積は小さくなり、心臓が悪くなるか、後負荷が大きくなれば、収縮末期容積は大きくなります。

ただし、心臓の後負荷に関しては、慢性的かつ持続的に高い後負荷がかかり続けると心臓はそれに対抗するために、心筋自体を分厚くして、さらに左室の容積を小さくすることでその持続的に高い圧を軽減しようとしていきます。

(それができる心臓であればという条件が前提です)


収縮機能に関しては、短期的にも長期的にも程度は違いますが、心臓は大きくなります。


まずその心臓のその時点での収縮機能と後負荷により、心臓の収縮末期容積が決まります。後は、必要な循環血液量を心拍数でわると、1回拍出量が決まりますので、その値を上乗せすると拡張末期容積が決まります。


ここで、重要なのが、心臓の拡張機能は、この過程に出てきていないということです。

心臓は、基本的に容積が大きくなれば多少な利とも心内圧はあがります。

その上がり方は、はじめはほぼ平坦で、徐々に急峻になっていく富士山のような感じです。

拡張機能を測定するひとつの方法としては、左室なりをどんどん大きくしていって、そのときに圧がどれだけ低いかということで評価できます。

いくら大きくなっても、圧があがらなければ拡張機能は障害されておらず、小さいのに圧が高い、または、少し大きくしただけなのに圧が急激にあがるのは拡張機能が悪いということになります。


心臓の駆出率で評価される収縮機能が悪化すれば、心室は大きくなり、それにより心は駆出量を維持します。

拡張機能がよければ、心臓は大きくなってお圧があがらず、拡張末期の心内圧によって規定される心不全の症状はでませんし、そのような状態では、心拍出量は維持できているはずですので、臓器灌流が不十分な低灌流所見は起きません。安静時だけでなく、運動して、さらに心室が大きくなっても、拡張末期の心内圧があがらなければ、心不全の症状はでないのです。


逆に、心臓が少し容積が増えるだけで圧が急激に増加する場合に、その程度が高度であれば、心臓の容積が圧によって押さえられて、容積が増加することができなくなります。

心機能が低下するか、急に後負荷が増加して、左室収縮末期容積が増えるのに、それに応じて左室拡張末期容積は増えることができず、心拍出量が減ります。それに応じて、心拍数があがるか、それもできないか、心拍数の限界値であれば、低還流所見が生じます。

これの現象のうち、急に後負荷があがって、拡張できずに心拍出量が減少することを、特にAfterload mismatch(後負荷不適応状態)といいます。