心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(6-2:拡張機能を障害するもの (蓄積性疾患と拘束型心筋症))

間質の線維化のほかにも、蓄積性疾患といって異常なたんぱくが心筋間質に沈着することで、心機能の拡張機能が低下するような疾患もあります。2次性の拘束型心筋症といわれることもあります。

 

蓄積性疾患として比較的よくみるのが、アミロイドーシスとサルコイドーシスです(厚生省の難病疾患59参照)。

サルコイドーシスは蓄積性疾患というよりも、心筋組織で炎症を起こすことで、線維化を起こすだけではなく、局所的な心筋細胞の壊死を起こすことで、心室瘤が起こったり、心臓の伝導路に対して障害を起こして不整脈を起こすことがあったりと、何かが蓄積する(顕微鏡でサルコイドーシスの組織をみると、肉芽腫はできますが、それよりリンパ球の心筋浸潤のほうが特徴的です)というわけではありません。(心サルコイドーシスに関しては別項目でお話しします)

 

一方、アミロイドーシスに関しては、アミロイドというたんぱくが心筋に沈着することで、心機能のうちの弛緩能が低下します。心筋が正常でも、間に異常なたんぱくが沈着することで、柔らかくなれないようになります。また、進行すると心筋細胞への障害が進んで、心筋の収縮性も障害され、心不全としてもっとも困難な状態である、心臓が小さくて動きの悪いという状態になります。

 

血液の悪性疾患(いわゆる血液のがん)で、多発性骨髄腫という疾患では、抗体に分類されるたんぱくが異常に増加し、それによりたんぱくの代謝物であるアミロイドがどんどんと産生されて蓄積することで、心アミロイドーシスの状態になります。また、腎臓などの臓器にも沈着することで腎不全もよくおこします。多発性骨髄腫の時には、疾患そのものよりも、多臓器、特に心病変の重篤性が予後を左右してしまいます。

 

心臓の拡張機能が高度に障害されている心筋症として拘束型心筋症という病気があります。アミロイド―シスなどは、2次性の拘束型心筋症と分類されますが、生まれつき心臓の拡張機能が低下している、原因不明の特発性拘束型心筋症というものがあります。

頻度はかなりまれで、厚生省の難病に指定されています。また、利尿薬などの対症療法以外の根本的な治療はなく、心臓移植が行われます。小児科の先生は、比較的みられているのかもしれませんが、成人の循環器医ではあまりみることはないと思われます。

この疾患の原因がわかれば、心筋の弛緩性を決めている重要な要素がわかるかもしれませんが、現時点では、タイチンといわれる収縮する蛋白をひっぱっている蛋白などよりは、収縮蛋白であるアクチンとミオシンを離す機構になんらかの異常があり、通常では離すのにものすごく抵抗があるものの、収縮機能は比較的保たれているため、がんばってがんばった拡張して、収縮するというサイクルを繰り返しているのかもしれません。

 

また、肥大型心筋症は部分的に心筋が肥大している疾患ですが、部分的には高度に障害されていても、全体的に十分弛緩できれば問題とはならないのですが、弛緩障害が全体にかつ、高度に障害されていることがあり、この時には拘束型心筋症同様心臓移植以外での治療は困難です。

また、肥大型心筋症の中で、肥大していた場所が徐々に薄くなり、かつ全体的に収縮能すら悪化してしまうことがあり、拡張相肥大型心筋症と呼ばれる病態があります。このような方には、もともと部分的ではなく、全体的な異常があった可能性があります。ただ、現在の医療でそれを特定するのは困難ですが、MRIがまだ可能性を残しています。

 

このように心筋細胞の拡張不全は存在しますが、その原因ははっきりとはしていません。