心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(7:拡張機能と心不全症状)

今回は、拡張機能と心不全症状のお話です。


私は、心臓においては収縮よりも拡張する機能の方が、多くの心不全では重要だと考えています。

特に心機能障害がかなり進行して心臓がだす(拍出)血流量が、体が必要とする有効循環血流量を満たすことができない低灌流状態にならない限り、心不全の症状に直接関与するのは、拡張(弛緩)する機能だからです。

そのため、まず拡張、弛緩に関してからお話をしています。


もちろん、拡張機能と収縮機能はマクロでみても互いに関係します。

拡張機能が多少悪くなってきても、収縮機能が十分に保たれていれば、心臓はあまり拡張せずに、十分に全身が必要とする有効循環血液量を提供することができます。

このような状況では、心不全による症状はでません。しかし、安静時には全身が必要等する有効循環血液量が少ないためにこれを満たせるが、運動すると有効循環血液量が運動の強度に従ってどんどんと増加し、そのときになって初めて症状が出現する人がいます。いわゆる労作時の呼吸困難です。

運動して必要な血液量が増加してくると、心臓は脈を早くすることでも心拍出量を増やしますが、運動の当初は同時に心臓の収縮力を増やして心室から血液ができった際の心臓の容積(収縮末期容積)を小さくし、さらに心室に血液が入る量が増える(拡張末期容積)ことで、1回の拍出量を増加させます。


注意:心臓は能動的に収縮末期容積を減少させることはできますが、拡張末期容積はあくまで全身の血液の還流量により決まるので、受動的です。拡張の一番はじめは収縮末期の収縮性の良さがかなり関与しますが、これも収縮による反発のようなものなので受動といえると思います。


運動したときに、弛緩性がいい心臓であれば、容積が増えてもあまり心内圧があがりませんが、弛緩性の悪い心臓では容積が増えたときの心内圧のあがり方が急峻になります。

つまり、心臓の容積が同じ時に心内圧がどれくらいかというのが、弛緩性の指標になります。さらに、何らかの変化によって心臓をわざと容積を拡張させたときに(運動や急速輸液、血管収縮薬など)どれだけ圧を上げないで容積を増やせるかというのが、心不全症状のでにくさということになります。


運動をする→左室が拡張する→弛緩性の良さによってあがる心内圧が決まる。

拡張性が悪い心臓は、このときに過剰に心内圧が上昇する。

→左室の拡張末期の心内圧がある一定の数値を越えると、肺静脈がうっ血し、肺胞と毛細血管の酸素交換に障害が出始める。

→呼吸困難を自覚する

というようになります。