心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

左室の駆出率の保たれた心不全について(4)

肥大型心筋症や、後負荷などが関係している心筋症以外で、心筋が肥大する可能性があって、臨床でも実際に出会うであろう(少なくとも私がみたことはある)疾患について、述べていきたいと思います。
 
ライソゾーム病:ファブリー病 
ミトコンドリア病:MELAS病、(MERFF病) 
浸潤性疾患:心アミロイドーシス(家族性,遺伝性TTR,全身性野生型TTR, ALアミロイドーシス )
炎症性疾患:急性心筋炎 
内分泌疾患:巨人症 
(薬剤:ステロイド,タクロリムス,ヒドロキシクロロキン)
この中で、まず心筋炎はすこし毛色が違うかなと思います。急性期は心筋自体が分厚くて、動きが悪くなります。ただ、心筋の浮腫がエコーで分かるほどであれば、かなり重症で、おそらく補助循環がいるほど血行動態が崩れていると思います。昔であれば、VA-ECMO+IABP。今であれば、VA-ECMO+Impellaであろうかと思います。特に左室が著しくやられているときには、Impellaで少しでもLV圧を下げる必要があります。また、心筋炎にImpellaだけは危険な可能性があります。心筋炎は、はじめ少し落ち着いているようにみえて、その後、急速に悪化するものがあります。初めの段階(初日)でImpellaを考えるほどに不安定であれば、その後急激に悪化する可能性が高く、両室が止まってもいい準備が必要ですので、心筋炎の時には原則的にECMOを導入するべきだと思います。そのうえで、Impellaをするとより有効だと思います。
 
さて、他の疾患に関しては、慢性的な疾患になります。
細かいことはさておき、上記の疾患は、内分泌疾患以外は、心筋生検すれば、診断できます。特にファブリーは心臓にしか異常が起こらない心ファブリーがありますので、その可能性を考慮に入れて検査する必要があります。
心ファブリーは、剖検例で、肥大心の10%程度に見られたとの報告が散見されておりますので、肥大心を見た時には、考える必要があります。
普通のファブリー病は、男性であれば酵素の量がほぼないので、診断は簡単です。ただ、女性の場合には、少し低下しているだけのことが多く、心ファブリーの診断になったとして、酵素補充が必要かどうかはある意味やってみるしかないと思います。かなり高額な治療になりますが。
 
ミトコンドリア病であるMELASなどに関しては、特に若年で、糖尿病と難聴がある人に関しては積極的に疑う必要があります。ミトコンドリア病は、拡張型心筋症に近いものから、肥大心になったりと、心病変に関しては多様ですので、何らかの不全心で難聴や糖尿病があれば疑っていくということになります。ミトコンドリアの異常ですので、酸素・エネルギーが多量に必要な臓器が障害を受けるということになります。
 
アミロイドーシスに関しては、ALアミロイドーシスは重篤で、すぐに治療が必要ですが、他のアミロイドーシスに関しては、緩徐な進行ですので、落ち着いて検査していけば大丈夫です。
血液検査で、血清アミロイド(SAA)を測定することも重要ではありますが、血液透析やリウマチ治療などがいろいろとよくなってきているようですので、透析とかリウマチに関連したアミロイドーシスは激減しているように思います。
また、遺伝性のトランスサイレチン関係のアミロイドーシスに関しては、薬物治療が可能になっており、劇的に治療が変化していますので、診断が一層重要になってきています。
アミロイドーシスは、遅延造影MRI検査で、心膜内膜がきれいに染まりますので、診断に有用です。
現時点で、肥大心に対する検査で、MRI検査は必須だと考えていますので、かならず行っていただきたいと思っています。