心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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左室の駆出率の保たれた心不全について(3)

HFrEFの最大の共通点は、心臓の収縮機能が低下し、代償性に心臓が大きくなるということで、それは拡張型心筋症でも、虚血性心疾患でも変わりません。代謝性疾患や弁膜症、高心拍出が必要な状態などがなければ、収縮性が低下もしていないのに、心機能が良いまま、ただただ心臓が大きくなる疾患はありません。

しかし、HFpEFに関しては、何かが蓄積して心筋が肥大する、または、圧(後負荷)に対応して肥大するというだけでも全く機序が違う上に、極端な話、左室の病気ではないもの(肺動脈疾患、右心室疾患、心膜疾患)も含まれてしまい、HFrEFのように横たわる決定的な共通点がありません。


HFpEFをみるときには、少なくとも左室を主体とした不全心かどうかはみる必要があります。
そのうえで、HFpEFの原因について、考えていきたいと思います。
日本循環器学会の心筋症診療ガイドライン(2018年改訂)からの抜粋で、心臓に異常が及んで肥大する原因についての一覧となります。

 

代謝異常 
 糖原病:Pompe病,PRKAG2遺伝子異常,Danon病,Forbes病 
 脂質蓄積:全身性Carnitine欠損症 
 ライソゾーム病:ファブリー病 


ミトコンドリア病:MELAS病,MERFF病 


神経筋疾患:Friedreich失調症,FHL-I遺伝子異常


Malformation Syndromes:Ras/MAPK関連蛋白異常 Noonan症候群,LEOPARD症候群,Castello症候群 


浸潤性疾患:心アミロイドーシス(家族性,遺伝性TTR,全身性野生型TTR, ALアミロイドーシス )


炎症性疾患:急性心筋炎 


内分泌疾患:糖尿病罹患母体からの出生児, 褐色細胞腫,巨人症 
薬剤:ステロイド,タクロリムス,ヒドロキシクロロキン

となります。

 

正直、糖原病や脂質蓄積疾患、Malformation Syndromesに分類される疾患はみたことがありません。ただ、これらの疾患は、全身疾患だと思いますので、心臓単独の異常ということはないと思います。心不全とその他の症状と合わせて診断がついていくと思います。
また、若年者では遺伝子の検査が必須となってくると思いますので、明らかな遺伝子異常が知られている疾患に関しては、その遺伝子異常があるかないかを調べる必要はあると思います。