心機能がいよいよ悪化してくると、心臓から血液を駆出できる量に制限が出てしまいます。
さらに、心機能が非常に悪い人は心拍数を司る洞結節にも不全がおよび、心拍数をあげることもできなくなることもしばしばみられます。
1回拍出量が少なく、さらに、心拍数をもあげることができない状態では、安静時にも有効な循環血液量を維持することができなくなります。
循環血流量が維持できなくなると、細胞に運ばれる酸素が不十分となり、それぞれの組織で、低酸素による組織障害が出始めます。
多臓器に影響を及ぼしますので、血液検査でいうと、肝臓や腎臓といった臓器の障害がみられます。特に、肝臓に関しては、T-bilはうっ血でみられ、100以上に増加するAST/ALTは低灌流でみられるといわれています。
腎機能に関しては、基本的にクレアチニン(Cr)が基準となりますが、うっ血でも、低灌流でも同様に上昇するため、区別がつきませんが、尿検査所見をみると、低灌流かどうかがわかります。
低灌流状態の腎臓では、尿の生成を腎臓の中心(傍髄質といわれる部分)を中心に行います。この状態になると、ナトリウムやクロールといった電解質の再吸収が亢進しますので、尿検査をみると、低ナトリウム尿や低クロール尿は低灌流の所見となります。
また、水の再吸収の亢進や分布障害がみられるため、血清電解質では、低ナトリウムと低クロール血症がみられます。脳への血流不足により、不穏やせん妄、性格の変貌などがみられます。
また、手の爪は循環の状態をみることができますので、爪を押さえて再度爪のピンク色が戻るまでの時間を測定することで、循環不全の有無を評価することができます。
低灌流所見は、低灌流所見だけにみられる所見が尿検査以外にはなく、診断が難しいことがあります。
特に、極軽度か、低灌流になりかかっている状態の心不全は非常に危険な状態にあります。なぜなら、低灌流を意識せずに、医師がうっ血の治療を行ってしまうと、うっ血の治療は低灌流を悪化させますので、医師が行った治療のために、低灌流所見が悪化してしまうことがあります。また、慢性期に投与するような薬も低灌流所見を改善させるか、あることを意識して非常に慎重に行わないと低灌流を悪化させるため、低灌流所見を常に意識して診療を行うことが重要です。