心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(1:心不全とは)

今回から、心不全について書いていきたいと思います。

 

まず、「心不全とは」からいきます。

心不全とは、心臓が何かしら悪いということ。

心不全とは、すべての心疾患の結果。

心不全とは、心臓が悪くて起こる自覚症状、他覚所見(レントゲンとか血液検査とかの異常)がある状態。

 

医学的に、

何らかの心機能の障害、または、全身の需要の亢進により、有効な循環血流量を維持できない、または、有効循環血流量を維持するために心臓に何らかの負荷がかかっている状態を心不全といい、

この状態が安静時に起こっている場合はもちろん、同年齢程度の平均的な人が行う労作によっても、心臓の負荷が過剰となり、心内圧の上昇による何らかの症状が出ている状態、また、場合によっては有効血流量が不足するために症状を合併している状態を、心不全または心不全症候群という。

 

少しずつ解説していきます。

何らかの心機能の障害 → なんでもいいです。

すごく心臓が大きくて、動きが悪い(→拡張型心筋症、虚血性心疾患etc)。すごく動いてい入るけど、心筋が分厚い(肥大型心筋症や何らかの蓄積性疾患etc)。弁がおかしい(弁膜症)、なんか心臓の外側についている膜がごつごつしている(収縮性心外膜炎)。右の部屋(右房、右室)がなんか大きい(不整脈原性心筋症、Ebsteinなどの奇形、短絡疾患、肺高血圧etc)。心臓の内膜が変(繊維内膜弾性症)。なんかおかしくは見えないけど、いやに左房が大きい(左室駆出率が保たれている心不全、拘束性心筋症etc)。

本当になんでもいいです。

上に上げたものは、あくまで代表的なものです。それに重複するものもあります。小さくて動きの悪い蓄積性疾患もあったり、サルコイドーシスなんて、変幻自在です(今は活動性のあるサルコイドーシスは診断可能)。

 

厄介なことに、安静時に行う検査では、ほぼ正常所見である心不全の人もいます。

現時点で、そのような人でも共通するのは、最大運動時の酸素摂取量が低いということです。これは非常に重要ですので、また、詳しく説明します。

(特殊な機会を用いて、吐く息を分析して、酸素の摂取量を測定することができます。これを運動しながら測定して、最大の運動量とその時の酸素の摂取量を求めます。ちなみに、これが14という値以下だと、それだけで心臓移植が必要だなという説得力をもつような数字です)

 

 

全身が需要の亢進→おもに重度の貧血と、甲状腺機能亢進のクリーゼという緊急事態、脚気(ビタミンB1不足、今の日本では酒だけしか飲まない人におこる)です。

これらの時には、全身の血流の要求量が非常に増加するか、末梢の血管の抵抗が下げります。そのため、心臓が普通の機能でも、普通の機能では出せないくらいに血液を要求されるので、心内圧が上昇し、有効循環血流量が需要に追い付かず、破綻します。これも、心不全といいます。心筋不全ではないのですけど、起きていることは、同じようなことなので心不全とまとめられるのだと思います。

治療は、心不全の治療をしてもよくなりません。代わりに、原疾患を治療すると非常にきれいに治ります。

(急性期に、バイタルを安定させる治療はしますが、心不全治療とは言えないと思います。特に甲状腺機能亢進の時は心不全の治療は状態を悪化させることがあります)

 

少しだけ、補足すると、脚気だけだと心機能は過剰に動いている、すごく元気な状態です。ただ、衝心脚気という状態になると、心機能は低下して、一見普通の拡張型心筋症による心不全にみえます。酒飲みに多いので、アルコール性心筋症を基礎にした心不全の急性増悪としても説明できてしまいます。

少しでも、疑ったら、すぐにビタミンB1を含む注射を静注してください(なんでもいいです、とにかく早く)。

投与前の血清を保存して、あとでいいので、ビタミンB1をはかっておくのも忘れないでください。脚気の場合に、ビタミンB1を打つと、劇的に改善します。

やせている酒飲みは、酒しか飲んでいない可能性が高いです。

 

次回、有効循環血流量の部分から説明します。