健康リブ ー健康に生きるために病気を知るー

セミリタイアした医者のブログ。元気に長生きするためにしっておいてほしいこと。平日は毎日更新していこうと思っています。

心不全のすべて(42:特発性拡張型心筋症の実際の診断の流れ)

拡張型心筋症の診断は、実際どのように行われていて、どこまで行えばいいのかというのは悩ましいところであると思います。

 

拡張型心筋症の診断は、形態的に駆出率が低下し、心室が拡大するような変化をとる原因のはっきりとしている疾患を除外することです。

つまり、除外診断の末に診断されるということです。

 
まず、拡張型心筋症が疑われる時には、大きく二つの場合があると思います。
一つは心疾患に関係する症状は全くないが、偶然行った何らかの検査(胸部レントゲンや心電図)で心疾患を疑うような異常があり、エコーなどで拡張型心筋症が疑われて精査が始まる場合。
もう一つは、心疾患に関係する症状、特に急性心不全として、救急かそれに近い形で病院を受診し、拡張型心筋症が強く疑われるということ状況が多いのではないでしょうか。
 
ともかく、何らかのきっかけで心エコーまでたどり着いて、左室ないし右室が、ある程度大きくて、駆出率(1回拍出量÷拡張末期容積 #注;弁膜症がないことが前提)がある程度低下していることがわかれば、ひとまず心不全のタイプとして、拡張型心筋症の類似疾患と言うことになります。
 
現在、心不全をざっくりと左室の駆出率で分けるようになっています。
左室の駆出率(EF)で、駆出率の低下した心不全(heart failure with reduced EF)と、保持されている心不全(heart failure with preserved EF)と、その間(heart faillure with mid-range EF)という風にも分けられます。
拡張型心筋症は、駆出率の低下した心不全の代表的なものとなります。
(この概念には、心臓の大きさは考慮されません。心臓が大きくない駆出率の低下した疾患もreduced EFの心不全となり、往々にして最重症であることが多いです)
 
 
ひとまず、左室か右室が大きくて、駆出率が低下しているということがわかると、拡張型心筋症としての除外診断が始まります。
ここで重要なのが、特に原因が、今まで述べてきた予防できる、または、根治できる原因によるものか否かです。予防できるというと、診断された時点で心不全になってしまっているので、予防ではないのですが、少なくとも予防可能な原因の場合には、その原因を管理することで進行を遅らせることが可能となります。
また、より重要なのは、治療可能な原因を調べることとです。
 
 
そのため、どこの施設でもされることですが、まず、心臓動脈(ただしくは、冠動脈)が狭窄や、亜閉塞、完全閉塞を起こしていないかどうかを、CTや心臓カテーテル検査によって調べます。
冠動脈(心臓動脈)に多少狭いところがあるだけではだめです。基本的には狭窄のある全ての主要な血管を検査して、それが心臓の機能低下を起こしていることを証明することが必要です。
心不全の場合には、シンチグラフィなどよりも、直接冠動脈で、狭窄による血流低下を起きているかどうかを検査できる方法がありますので、それによって冠動脈を1本ずつ評価するのがいいように思いますが、決まりはありません。
 
ホルモン異常や自己免疫系の疾患など血液検査や尿検査で除外診断ができるような疾患に関しては、しっかりと行いましょう。
ここで重要なのは、家族歴、発育歴、身体所見などの内科医としての基本が重要となってきます。
循環器医は、何も考えなくても冠動脈の精査するのですが、循環器疾患以外も念頭に置いた病歴や身体所見もしっかりととるようにしたいものです。
ある程度、基本となるホルモンは自動的に測定するとして(甲状腺、成長ホルモン(GH,IGF-1)、副腎系ホルモン)、身体所見などから例えば、末端肥大症が疑われるなどがあれば、内分泌内科などの専門家と相談し、必要な画像診断や負荷試験を追加しないといけません。ルーチンで測定する項目が正常だからといっても、身体所見をおざなりにしてはいけません。
 
 
また、決して少なくはないサルコイドーシスはかならず除外しなくてはなりません。
別項目で述べたような検査を行ってみてください。
その辺の癌よりも悪い心不全の生存率の低さを考えると、治療可能な疾患をしっかりと診断することは、非常に重要ですので、私は個人的には全患者さんにガリウムシンチグラフィを行うことを推奨します。
不整脈で何らかのブロックを伴う心不全や、心臓エコーや心臓MRIでの不自然な局所的な壁の菲薄化や瘤化があれば、絶対に必要ですが、そうでないときにもしておくべきだと思っています。
もちろん、保険医療なので、むずかしいめんはあるかもしれませんが。
 
将来的に、心臓移植などをしたとき、サルコイドーシスであったことがわかったら、初回診断に疑う所見がなかったから、仕方がないではすまないと思います。
活動性のあるサルコイドーシスは治療できるからです。
心不全であることは、サルコイドーシスを疑うきっかけだと、私は考えています。