心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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心不全のすべて(38:ウイルス感染による慢性心筋炎)

今回は、ウイルス感染による慢性心筋炎を中心に述べていきたいと思います。

ウイルスによる慢性心筋炎は、疾患概念として存在するかどうかが確定していない概念です。
 
正確に言えば、ウイルスが心筋組織に持続的に感染し、それによって心筋に障害が起こり続け、慢性的な心機能障害が生じて、心不全となっている病態であると考えられます。
この証明のためには、ウイルスが心筋に感染していること、心筋に持続的に炎症がおこっていること、その炎症がウイルスによるものであることを示さなければなりません。
 
そのためには、心筋生検や心嚢液などの心臓の影響しか受けない組織からウイルスのDNAやRNA、または、抗原や抗体などを検出する必要があります。
また、炎症が起きているかどうかは、現時点では心筋生検でリンパ球などの浸潤が起きているか、または、心臓MRIのT2で何らかの浮腫所見を示さなければらなりません。おそらく、慢性経過であれば、MRIのT2で所見がでるほどの炎症はないと思いますので、心筋生検が必須になると思われます。血液検査でのトロポニンIやTの上昇は心筋障害を反映し、慢性的な炎症の間接的な証拠にはなりうると思います。また、動脈と冠静脈の炎症に関するインターロイキンなどのサイトカインに差があれば、心臓に炎症が起きているといえると思います。
さらに、炎症を起こすほかの原因を否定すれば、ウイルスが炎症を起こしているといえるかもしれませんが、もともと心筋が炎症を起こすことは頻度的には低いので、ウイルスがいて、炎症がおきていれば、ひとまずはウイルスによる炎症といってもいいかもしれません。
この条件を満たす、ウイルスによる慢性心筋炎はかなりまれだと思いますが、HIV感染のように内服でウイルスの排除はできないが、低ウイルス量を維持できるようなものであれば、慢性心筋炎は起こりえると考えられます。
 
日本では、一般的に、慢性心筋炎といわれるものは、急性心筋炎が無症状か、ごく軽症でいったんは自然治癒し、ウイルス自体はいなくなったものの、そのあとに、何らかの抗体などの影響で慢性的な炎症が持続しているか、炎症自体ではなく、心機能障害そのものによって、心機能障害が徐々に進行し、収縮機能が低下することで心不全を呈しているような病態であろうと思います。
 
また、私は経験したことはありませんが、HCVによる慢性心筋炎があるならば、現在HCV感染症は完治可能な疾患となりましたので、完治を目指せるのかもしれません。