心不全に対して、できるだけ早い時期に一通り原因を検索することは非常に重要なことだと考えています。
それは、心不全そのものに対する根治的な治療が存在しないためです。
そのため、可能な限り、治療可能か、少なくとも悪影響を及ぼしている因子を診断し、治療を始めることが重要だと考えます。
心筋障害の少ない時期に、それらができれば心不全自体を起こさなくなると思います。
すこし、脱線しますが、時折、心不全は心臓移植以外に根治的な治療のない疾患と言われますが、心臓移植は決して根治的な治療ではありません。
根治的な治療であれば、治療後になにもしなくてもいいはずです。
一時期しんどかったけど、もう今はなにも心配ないねと言うのが、根治的な治療であり、根治という状況です。
しかし、心臓移植は決してそうではありません。
まず、絶対に免疫抑制薬を服用しなければなりません。薬の量や種類は、安定していれば、徐々に減ってはいきますが、中止にはなりません。
また、移植後の拒絶反応は多少なりともあります。それは、心筋であったり、冠動脈であったりと移植後の組織にはそういう変化がでます。
また、心臓移植後の生命予後も、同年齢健康者とは、同じではありません。
リンパ系の悪性腫瘍などが発生することもありますし、日和見感染を起こすこともあります。
このような治療が根治療法なはずがありません。
心臓移植は、以前よりも増えました、海外でもできはします。
移植できて、よかったというのは、間違いではありません。
それまで、人工補助循環や強心剤の持続投与が必要であった人が、それらなしで、生活ができるようになるのですが、非常に有効な治療であることは間違いありませんが、私は、根治療法ではなく心臓移植後状態、または、移植心というあらたな状態になったという認識です。治ったわけではありません。
心臓移植後、彼ら彼女らは何度も血液検査や心臓カテーテル検査を受けて、免疫抑制薬の濃度のチェックや心筋・冠動脈の拒絶反応の状態をチェックします。また、時には薬の副作用や、拒絶反応に苦しみます。
決して根治療法でもなし、心移植する事がゴールではないのです。
心不全は、基本的には未だ根治的な治療のない疾患なのです。
そのために、初回の診断時に、とことん検査をやるというのは非常に大事です。
サルコイドーシスなら治る可能性があるからです。
治せる可能性のある心不全は、かならず除外診断をしなければならないと考えています。