健康リブ ー健康に生きるために病気を知るー

セミリタイアした医者のブログ。元気に長生きするためにしっておいてほしいこと。平日は毎日更新していこうと思っています。

心不全のすべて(3:心臓の発生と大きさ)

心不全の根底には、心臓に血液が充満するとき(拡張期)に心臓の中の圧力(心内圧)がどれだけ上がらずに血液を貯められるかということが、非常に重要です。

 

心臓は、おそらく心筋そのものはかなりおおきくなれるポテンシャルを持っていると思います。

 

その前に、この前にこのあたりを説明するのに、まず、心臓の発生と形について説明します。

 

心臓には、4つの部屋があります。左と右(左心系と右心系)、上と下(心房と心室)4分割されて、右上を右心房(右房)、右下を右心室(右室)、左上を左心房(左房)、左下を左心室(左室)といいます。

心臓が形作られる過程では、下の心室ができて、それが左右に分割されるように中隔という敷居ができて、同時に、左室の上の部分が心房となって、右側に伸びていく感じで右の心房ができます。移動が終わると、右心房と右心室がつながり、心房の間にも中隔という敷居ができて、左右に分けられます。そして、右心房は大静脈(全身の血液が返ってくる最後の一番太い静脈)と、右心室はもともつながっていると肺動脈と、左心房は肺静脈(肺を還流した血液が戻ってくる血管)と、左心室は大動脈とつながって、心臓が全身の循環とつながります。

 

左右に分かれ、全身の循環とつながる過程で、心臓の血流が一方向に流れるように、それぞれの心房と心室の間と心室と動脈の間に逆流防止弁が形成されます。

母親の体内では、子供の肺は機能していないので、心房の間が空いているのと、肺動脈と大動脈の間に短絡といって抜け道があるのですが、生まれると主に、肺に空気が入って機能すると閉じます。

 

この過程で、さまざまな発生の異常が起きると、流産・死産となるか、全身を循環させるのに必要な条件がそろっていれば、正常ではないものの、先天性心疾患といわれる心疾患を持った状態で生まれてこられます。

有名な先天性疾患としては、心房の左右の隔たりが不十分な心房中隔欠損や、心室の隔たりが不十分な心房中隔欠損症でしょうか。(不十分というより穴()が開いている感じです)

また、逆流防止弁に異常があることもおおいですが、弁の形態異常(本来3枚ある弁が2枚とか4枚とか)や機能異常は比較的よくみられます。

 

 

左室は、一番形態がシンプルで、回転楕円といわれます。回転楕円とは、ざっくりいうとラグビーボールです。私も患者さんに、左室の形の説明をするときには、ラグビーボールを真ん中で半分に切った感じといっていました。

円柱ではなく、回転楕円であることが非常に重要で、拡張したり、収縮したりするのに回転楕円のほうが、エネルギー効率がいいのです。

また、心臓は拡張し、収縮しきるときに、心臓の中を空にせずに40%程血液を残して収縮を終えます。つまり、60%程度の血液を動脈に出している(駆出といいます)のですが、実は、回転楕円であること、この40%程度残して駆出することは、11回の拡張・収縮のエネルギー効率がいいとのことです。

この60%駆出することを、駆出率といって心臓では非常に重要な数字になってきます。左室の駆出率を、左室駆出率といいます。英語でleft ventricular ejection fractionといい、さらに省略して、LVEF, EFといいます。

さらに、心臓のエネルギー効率が一番よくなるのが、ほんの軽い運動をしている状態で、この時の心臓の消費エネルギーと心臓の血液の駆出の効率が理想的だといわれています。

(このあたりを知りたい方は、生体医工学会の書籍を参考にしてください)

 

実際の左室の大きさですが、血液が最も貯まっている時の左室の最も大きな断面で、大体直径50mm程度です。正常は40-55mm程度といわれています。

最大に血液が貯まっている時の左心室の容積は、回転楕円の式を応用したTeichholz法と用いると、70-150ml程度になります。左室の駆出率を60%とすると、おおよお、1回の収縮で45-90mlとなります。

循環血液量のうち、心臓の1回の収縮で駆出される血液は、45-90mlで、さらに、これに心拍数(1分あたり60-80)をかけると、おおよそ4000-5000ml(4-5L)となります。

 

ちなみに、心臓の拍出量は、心臓が決めていません。あくまで、血液を1分間に5L程度駆出しているのは、その血液量を全身が要求しているからです。心臓以外の全身がきめる血流の必要量にしたがって、運動したら多めに、安静時には少なめに、心臓の拡張・収縮の強さや心拍数を変化させて常にその要求に的確に答え続けているのです。

心臓は、実はもっとも健気で、忠実な臓器なのです。

 

ただ、心臓が心拍出量を決定するときがあります。それは、心不全が進行し、心機能が低下して、体が要求するだけの血流量を提供できなくなる時です。心不全で低心拍出状態、また、臓器を潅流する血液が減少するので、低潅流状態(英語の、Low perfusionの直訳)といいます。心不全でも、もっとも深刻な状態の時だけ、心臓が心拍出量を規定します。