心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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心不全のすべて(19:右室拡張末期圧上昇による臓器のうっ血)

左室拡張末期圧の上昇は、肺うっ血、肺水腫を起こします。また、慢性的な経過で、肺胞の構造変化や、肺血管の構造変化により、酸素交換能の低下や肺高血圧を引き起こします。

 

右室拡張末期圧の上昇は、平均右房圧の上昇を引き起こします。全身の臓器を潅流した血液は、ほぼすべて右房に帰ってきます。

(気管支動脈の一部は、肺静脈に合流し、左房に返ります)

そのため、右房圧が上昇すると、全身を潅流した後の静脈の圧はかならず、右房よりも高い圧でないと右房へは帰れません。右房よりも高く、さらに、臓器から右房までの静脈による抵抗が起こす圧の低下を加味した圧だけ高くないと右房へ帰れないのです。

 

そのため、右房圧の上昇は、全身の静脈圧の上昇となり、また、全身の臓器の毛細血管圧の上昇ということになります。

毛細血管の内圧(水が作るので圧なので、静水圧といいます)は、毛細血管と組織間質との水の出入りの重要な要素ですので、この圧が高くなるとそれに応じて毛細血管から組織間質への水の移動が増えます。

水が増えると、まず間質には吸湿性の線維があります(おむつの線維みたいに)ので、多少水が増えたとしても、この吸湿性の線維に水が吸着されて間質の水自体は増えても、すぐに水浸しにはなりませんし、間質の静水圧も上昇はしません。また、リンパ機能も水の増加により、機能が亢進して、間質からの水の排泄を促します。つまり、この間質の吸湿性繊維とリンパ機能によって、間質の水のバッファー効果と処理が行われています。

さらにいうと、二つの機能が低下すると、同じ静水圧でも間質が水浸しになる、つまり臓器の浮腫がおこりやすくなります。

高齢者がむくみやすいのは、加齢とともにこの機能が低下するため、加齢すればするほど浮腫が起こりやすくなります。

 

臓器の浮腫には、浮腫を起こす臓器によってそれぞれ肝うっ血や腎うっ血というような言葉で表現されます。

ここで注意が必要なのは、臓器の毛細血管の圧が上がって、うっ血がおこっているだけなのか、それとも臓器の間質に水が移動して臓器の浮腫が起こっているのかは問題としていないところにあります。同じ言葉を、状況に応じて、意味の理解を分けている感じになります。

 

さて、筋肉が第2の心臓という言い方をされることがあります。

なぜかというと、心臓はポンプ機能で血液を全身に送り出しますが、ふくらはぎなどの筋肉も、意図的に筋肉を動かすことで静脈の血流を早くする効果があります。

何かの理由で右房圧が上がった時に、臓器の静脈圧は上がらなければ右房に血液を返せません。心臓以外の臓器に圧を作る能力はありませんので、静脈圧の上昇はそのままその臓器の毛細血管圧の上昇となります。

しかし、筋肉が静脈の血流を加速させる(エネルギーを与える)ことができれば、その手前にある臓器の毛細血管圧は右房圧より低くても、筋肉が途中でポンプになって血流にエネルギーを与えてくれるため、毛細血管圧を低く維持でき、組織間質を適正な水の量に維持できるのです。

そのため、四肢の筋肉がしっかりとあり、動かせていると、右房圧が高くても、筋肉で一段加速させられるため、組織の毛細血管の圧は低く抑えることができ、臓器浮腫が起こりにくくなります。

もちろん、肝臓や腎臓と心臓の間に筋肉はないので、この作用はあくまで四肢の浮腫に限定される効果ではありますが。