心不全の臨床経過のイメージです。
心不全の話を進めるうえで、知っておかないと話がややこしくなる問題があります。
心不全といっても、症状がない段階から、安静でも息苦しさや倦怠感がとれないような状況まで様々です。
上の図は、慢性的にゆっくりと進む心不全の概念図です。
まず、心不全の原因となるような何かの原因につながる疾患があるが、心臓自体は悪くない段階がStageAという段階になります。
この段階は、リスク段階という感じです。
次に、心臓に負荷のかかるような疾患や、心臓を栄養する冠動脈の血流に異常を及ぼすような疾患に長期罹患していると、徐々に心臓そのものの構造変化が起こり、心不全症状はないものの(労作時を含め)、心臓になんらかの異常が出始めている状態をStageBといいます。
また、無症状の弁膜症などがある方も無条件でこの段階になります。
この段階で、かなり積極的に介入しないと基本的には手遅れになります。
次の段階は、心不全の症状が出現し始める段階となります。この段階をStageC、Dに分けています。StageC、Dの違いは、現在の医療で打ちうる手があるかないかということです。
心不全の治療には、大きく分けて、症状をとる治療と、長期の予後を改善させる治療に分かれます。もちろん、両方の効果を合わせている、ひとまずの症状もとるし、長期の予後も改善される治療法もあります。
具体的には、胸水や浮腫などをとる利尿薬はひとまずの治療で、β遮断薬などは長期の予後を改善させる治療になります。
StageCとDを分けているのは、長期予後をよくする治療をすべて行うか、何らかの理由で行えない状態で、症状をとる治療を行っても症状が取れない状態ではないでしょうか。
たとえば、長期予後を良くするといわれる治療をまだ行っていない状態であれば、ひとまずの症状をとる治療を行ったり、または、一時的になんらかの血行動態を補助してあげる機械をつけたりして、症状を落ち着け、徐々に長期予後を良くする治療を行っていけば、その治療に反応して、心不全自体が落ち着き、機械を離脱し、日常生活を送れる可能性があります。
(この時の長期予後改善治療は、β遮断薬や適応のある人への特殊なペースメーカ治療(CRT)などを想定しています。)
しかし、長期予後を良くするといわれる治療をすべて行っている状態で、妙な不整脈もないし、利尿薬などのひとまずの症状をとる治療を行うような適応もない(体に過剰な水がない)にもかかわらず、軽い日常生活でも倦怠感や呼吸困難が出る、安静時の倦怠感が取れないなどという状況では、残念ながら次の打ちうる根本的な手はありません。
心臓移植か、緩和ケアということになってしまいます。
この段階がStageDとなります。
StageDはやるべき治療をしっかりやる、または、何らかの理由でやれない状態で、心不全による症状により日常生活を送ることができない状態であると考えています。
循環器医が介入するのは、基本的にはStageB以降です。
StageAは一般医師が担当することになると思われます。
さらに、StageAを早期発見する、または、予防するのは、個人個人になります。
できるだけ、StageA以降に行かないようにするために、どうすればいいのか真剣に考えていきたいです。