心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(16:一般的な急性心不全では血圧は低下しない、むしろ上昇する )

 心臓には、右心系と左心系があり、さらにそれぞれ心房と心室にわけられます。心臓は左右・上下で4つの部屋に分けられます。


心不全の症状は、大きく3つに分けられます。

左室の拡張末期圧上昇による症状、右室の拡張末期圧の上昇による症状、そして、心拍出量減少に伴う症状です。

 

心不全の時に、どのような症状が出るかは、心臓のどの部分がどう悪いかと、心不全の発症が急性か、慢性かによっても異なってきます。

 

まずは、心不全の時に血圧はどうなるかをお話しします。

 

心臓が悪いと血圧が低くなるイメージがあると思いますが、これは、急性心筋梗塞や心筋炎など、急に心臓の機能が低下して、全身がその変化に対応できないときに生じます。

 

心筋炎、心筋梗塞の場合には、心臓の筋肉が突然死滅してしまい、収縮機能が悪くなります。この時、もともと静脈には血液が余分にプールされている(主に脾臓や肝臓)ので、それを交感神経の刺激で、静脈を収縮させることで、血液のプールを心臓に返してます。返ってきた血液の一部が心拍出量の増加となるので、循環血液量を増やす働きとなります。(ただし、心機能が悪いと、この効率は著しく低下する)。

また、普段プールされている部分の血液がなくなるので、より少ない循環血液量(血流量ではなく血液量)でも循環を回せることになります(これは出血性ショックに有効な仕組みです)。

 

心臓の機能低下時には、血圧を維持しようと交感神経が働きます。
心臓の機能低下が起こると、交感神経が活性化しますので、体の血圧を作っている動脈のの末梢の抵抗血管に対して働き、交感神経の刺激で抵抗血管が収縮状態となり、血圧を維持しようとします。しかし、それ以上に循環血流量が低下していると血圧を維持できずに、血圧は低下します。

また、心筋梗塞や心筋炎などの時には、多臓器の不全も同時に起きることがよくあります。このような時には、炎症に伴ってサイトカインというホルモンのグループが増えます。サイトカインにはいろいろありますが、このような時には抵抗血管を拡張させるような働きをもったものが増えます。

多臓器の障害に伴い、交感神経の抵抗血管を収縮させようとする作用を、心機能の低下とこのサイトカインによる抵抗血管の拡張作用が上回り、血圧は低下することが多いです。

 


一般的なかなり長い期間で、徐々に心機能が低下してきてたり、または、もともと心機能が良くない状態などで、普段以上の過度な負荷がかかって発症するような慢性心不全の急性増悪といわれるような急性心不全のタイプでは、血圧は上昇していることが多いです。

心機能自体は、悪くなっていないので、急に体に負担がかかって、それにより体が必要な有効循環血液量の増加を求める場合には、特殊な状況以外(別に説明します)では、心機能自体はほとんど変わっていないので、心拍出量は低下せずに、心臓の容積の増加による心内圧の上昇が起こります。

また、このような心不全の急性増悪といわれる状態では、感染がきっかけとなることも多い(特に呼吸器感染)ですが、風邪やちょっとした肺炎程度では血圧が下がるほどのサイトカインは出ませんので、交感神経の刺激による血圧の上昇によって、普段より血圧が上昇していることのほうが多いのです。

 


つまり、ほとんどの急性心不全では、心拍出量の低下は起こってないか、起こっていても血圧を低下させるほどの低下ではなく、また、同時に交感神経刺激による抵抗血管の収縮がおこるので、血圧は低下しない、というよりも上昇することのほうが多いのです。