心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

機械的なサポートに最低限必要なのは、止血機能だろうと思います。

私、結構重症な患者を診てきたと思います。

重症患者の治療で、もっとも重要な機能は、止血機能と肝機能だと思います。

大概の臓器は、薬剤や機械で代替できます。心臓が止まったところで、急性期は薬剤やIABPをサポートに、VA-ECMOやImpellaを使えば、何とななります。慢性期であれば、両室ないし、左室補助循環装置を使えば、何とかなります。無脈の心室頻拍が持続的に続きながら(実質的な心停止状態)、心臓移植にたどり着いた人もいます。

腎臓は、血液透析があります。

以前、首吊りをされ、おそらく頚髄が断裂され、自律神経系が破綻していると思われるような方でも、バソプレッシンを2単位/Hで投与しつつ、ノルアドレナリン0.2-1γで調整すれば、失われた自律神経、特に交感神経機能を薬剤的に補うことはできます。

(頚髄断裂では徐脈、低血圧と副交感神経優位のような状況になります)

 

しかし、機械を安定的に作動させるには、血管と血液の止血機能が正常ということが前提になります。これが破綻していると、血管と留置しているカテーテルの間から、浸出液がとめどなく出てきて、そして、点滴などの小さいものの横からすらも浸出液が止まらず、機械を回すことができなくなります(浸出液ということは、赤血球が通過できないほど小さい孔から漏れるということ)。程度によりますが、これが起こると血管内にかなりのスピードで輸液をしても、どうしようもなくなり、機械で臓器機能を代替できず、救命できないということになります。また、全身の血管からの組織に浸出液がもれるため、全身が相当にむくんでしまいます。

正直、ただの出血なら問題とはなりません。分単位で500mlの急速輸液できる機械を、大概麻酔科が持っていますので、麻酔科に電話して、すぐ持ってきてと頼めば、持ってきてくれると思いますので、ただの出血だけならたいして問題になりません。(もちろん、その後、何らかの形で止血できればの話ですが)

 

しかし、感染などでいわゆるDICになると、全身の血管と血液の止血機能が破綻しますので、なんともできなくなり、機械を用いての救命は相当困難になります。

 

また、肝機能も現在の医学では代替できません。ASTやALTの上昇は、肝障害であって、イコール肝機能障害ではありません(研修医の時にプレゼンでかなり怒られました)。ASTやALTが上がることは、重要ですが、決定的ではなく、あくまで肝臓の機能障害が起こると決定的に厳しいということです。

循環不全が原因という範囲で(要は肝臓が一次的な原因ではない)、ASTやALTが上がっていても、多少であれば(<100)、一時的な急性のうっ血肝でもみられますし、1000前後でも、循環不全を伴う急性心不全でしばしばみられます。しかし、T-bilがあがりはじめ、なんとなくですが、4mg/dlあたりを超えるとかなり厳しいです。循環不全に対して、あらゆる手を打ちますが、打つ手がない状態だあれば、元に戻るということは厳しいラインだなと感じることが多いです。

 

コロナウイルスで、数日という急激な経過で死亡される方がみられますが、個人的には、心筋炎の見逃し、ないし、止血機能の破綻による機械サポートができないことが原因ではないかと思っています。激烈な肺炎でも、機械がきちんと機能できる状態であれば、数日ということはあまりないかなと個人的には思います。

1週間を超えるものについては、肝障害や機械そのものの合併症、細菌や真菌などの2次感染など多様な理由によるものかとも思っています。