コロナウイルスに関して、私は感染症の専門ではないので、全般的なことは何も言えませんが、当初中国からの報告で心臓への障害が強いと、中国の医師が記者会見で言っていたので、心筋炎が起こっているのだなと思っていました。
コロナウイルスなどのウイルスによる心筋炎は、ある程度の循環器の専門施設に勤めているとまれではなく、しばしば診ることになります。
ウイルス感染を起こすと一定の確率で、患者さんは心筋炎を起こします。原因は、明確にはなっていませんが、その人のそのウイルスに対する免疫を中心とした反応や心筋に発現する、している受容体の問題で、心筋に感染を起こしやすいだけだと、個人的には思っています。これは、おそらく、人によっても変わりますし、同じ人でも時期によっても変わると思います。また、その季節のそのウイルスだったからなったということもあると思います。
風邪の症状があってから数日後に心筋炎を発症して、一気に重篤になったというような病歴をよく聞くことがありましたので、咽頭などに到達し、そこでひとまず感染を起こし、血液の乗って心臓に到達し、そこで心筋炎を起こすのだと思います。
中国から尿から検出されたと報告がありましたが、これは尿のもとである血液にウイルスがいたということでもあります。
また、肝炎ウイルスなどでも、心筋炎を起こしますが、その際には肝炎にはならないとも言われており、その人のウイルスに対する臓器の特的な反応性が違うのかもしれません。
ウイルス性心筋炎になると、以前心筋炎について記載しましたが、心筋炎は進行性の疾患であるという認識が重要です。重篤な全身状態となるような広範な心筋梗塞の治療に慣れていると、心筋炎治療の時には一歩遅い対応になることが多々あります。心筋梗塞の時よりも一歩も二歩も早い決断が必要です。
心筋梗塞は、生じたその瞬間が最も重篤な状態で、血行再建がうまくいけば、その後も心臓自体がどんどん悪化していくということはありませんが、心筋炎は、進行性の疾患です。様々な治療をして、いったん落ち着いても、炎症自体は進行していきますので、その時に落ちつけた治療では時間経過とともに疾患の重症化の進行に治療が負けて悪化します。
進行性の疾患であるという認識のもと、VA-ECMOを含めた方法を、常に念頭に置いた治療が必要だと考えていました。
ちなみに、心筋梗塞のCK 1000は軽症ですが、心筋炎のCK 1000は重症だという違いも重要です。
また、一部報道にもありましたが、呼吸不全時の最終手段はVV-ECMOです。成人の重症管理では普段使う機会は少ないですが、心障害がなく、心機能が保たれている人で、人工呼吸器がある程度の設定でも酸素化が保てなければ、VV-ECMOの導入を考えてください。VV-ECMOは、VA-ECMOの最大の懸念である動脈血栓症が起きませんので、導入しやすいと思います。
ウイルスの感染であれば、その感染の急性期をさまざまなデバイスを用いて、こらえている間に、ウイルスが自然に、ないし何らかの薬剤(抗インフルや抗HIV薬)によって排除されれば、あとは改善していくはずです。
しかし、免疫系まで障害されていたりするとこの限りではないのかもしれません。
中国で、若い医療従事者が亡くなっていますが、あまりに患者が多く、これらの治療が行き届かなかったのか、治療を行ってもダメなくらい、1000や10000人に何人か単位で劇症化しているのかはわかりません。
コロナウイルスであれば、ある程度の季節になれば、きっと感染しにくくなると思います。もうすぐそのような季節が訪れると思います。