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急性心筋炎の診断と治療

急性心筋炎の診断と治療に関してのお話をしたいと思います。

劇症型心筋炎を意識してお話します。ただ、後述しますが、来院時は、劇症ではなくても、入院後に劇症化することも多々ありますので、すべての心筋炎は劇症化する前提での対応が重要です。

 

 

診断に関しては、どのような心筋炎であるかというに関しては、心筋の病理標本を基準にしたがって診断していきます。ただそれは、病理学の先生と相談するか、わからなければ私が以前勤務をしていた循環器の専門施設の病理部門の先生にコンタクトをとれば、患者さんの重要な命にかかわる診断ですので、病理組織の診断に力を貸してくれると思います。

私も、病理標本はある程度しかよめませんので、病理組織の診断は、ここでは(できないので)しないで起きます。

(私の病理の知識は、提示された心筋標本の特徴とか、好酸球とか巨細胞とか、心筋が肥大しているとか線維化が強いとか診断程度です)

 

それでは、心筋炎を実際の臨床の経過について、補足していきながら説明していきます。

一言だけお断りをいれておきますが、心筋炎の治療に関しては、特にステロイドと免疫抑制薬の使い方に関しては、異論はあると思います。たぶん、私がある大学の急性期の治療の担当をしていた時に、きっと私のやり方に否定的だった人がいたかもしれません。そのくらいに定まってはいない側面もあるものだということだと思います。

 

急性心筋炎は、突然心機能が低下した急性心不全の状態で来院します。救急外来でのパッと見の所見としては、意識混濁、低血圧、顔面蒼白、冷汗、呼吸困難かと思います。急性に来ると浮腫などはあまり目立ちません。亜急性のように一定の期間をかけて悪くなるとその間に水が貯まるので、浮腫を伴うこともあります。

 

これらの所見から、かなり急性心筋梗塞を疑って、心電図、心エコー、血液検査が行われます。心筋梗塞であれば、閉塞した冠動脈に応じた特徴的な変化が生じて、実際には心電図から、どこの血管が閉塞したのかを診断します。心筋炎の場合には、心電図は、STが上昇していたりしますが、心電図所所見からはどこの閉塞かはまったくわからないような変化となります。この段階では、一瞬肺血栓塞栓症を思い浮かべたりしますが、心エコーを行うと全く違う所見がみられます。心エコーでは、左室が肥厚して、全体的に動きが悪くなり、かつ、筋肉の粘度があがったようなどろっとしたような何とも言えない動きになっており、この段階でほぼ心筋炎という診断ができると思います。

血液検査はこれらの検査の後に出てくると思いますが、所見としては、心筋梗塞の所見と大して変わらない、白血球が高く、CK、CKMB、トロポニンが上昇しているという状態になります。

ここで重症度に関しての注意ですが、心筋梗塞でCK 1000であれば、軽症か、まだ上がる手前かと思います。しかし、心筋炎でCK 1000というのは重症です。心筋梗塞のように一瞬で血管が詰まって、その後に心筋から流れ出るCKと、ずっと炎症が続いて心筋そのものが痛み続けて持続的に出続けるCKでは値の持つ意味が変わります。心筋炎の CK 1000は重症と考えてください。

また、心筋梗塞はなった時の心機能がひとまずの底で、そこからどんどんと状態が悪くなることはあっても、心機能そのものがどんどんと悪くなるということはないと思いますが、心筋炎はどんどんと悪くなります。来院時が底ではなく、心筋の炎症は持続的に続くため、来院後特にその日から翌日にかけて悪くなることを覚悟しないといけません。

 

 

さて、心筋炎の治療としては、血行動態や症状に対する治療としては、普通の急性心不全の治療と同じです。ただ、通常の急性心不全と心筋炎は、決定的違う点が一点あり、繰り返しとなりますが、心機能障害が進行するということです。普通の心不全であれば、入院の段階から水分バランスの調整(循環を保ちつつ利尿する)がうまくいかずに難儀することはありますが、基本的に心機能そのものは変わりありません。しかし、心筋炎の時には、入院後も心筋の炎症はある程度の期間続きますので、その炎症が続く限り心機能は低下していきます。日中の入院時になかった循環不全が、夜間に出現することもあります。というか、でます。そのため、常に時々刻々循環不全や心機能を評価しつつ、柔軟に、かつ適切に機械的な治療を導入する必要があります。

この点が、心筋炎を治療するにあたって重々意識せねばならない点です。入院後も病気の根本が進行し続ける病気というのはあまりなく、特に循環器領域では、いらないことをしなければ、基本的に入院したときの状態が底のことがほとんどですので、治療に困ることはあっても、どんどんと悪くなることはあまりありませんが、心筋炎だけはそこが根本的に違って、ここを誤ると助けられる患者が助からないということになります。

 

心筋炎には、特別なことが一つあります。診断のために、心筋生検を行うことが必要であるということです。心筋炎であるかどうかということまでは、上述のように、普通の検査でほぼ診断ができます。ただし、心筋炎の中にはステロイドの治療によって、心筋の炎症自体を抑えることができる疾患(好酸や巨細胞、サルコイドーシス)があり、これらの疾患に対しては、適切にステロイドと免疫抑制薬を使うことで心筋炎の進行を止められます。他の疾患は、どうかというと、心筋炎の炎症は、風邪のようにただ待つしかありません。インフルエンザであれば、抗インフルエンザ薬を点滴静注したり、原因となるウイルスが簡易にわかって、治療薬があればそれを投与しますが、あるほうがまれです。

このステロイド反応性の心筋炎かどうかを、見極めるために心筋生検を早期に行うことがあります。

どれくらい早期にすればいいかというと、数時間でも早くです。心筋梗塞の緊急カテーテルのように5分でも早くというわけではありませんが、可能な限り早く行うべきです。それだけ、ステロイドで心筋の炎症を抑えることが重要だと私は考えているからです。

 

具体的に私がいた施設ではどうしていたかというと、緊急呼び出しです。

心筋生検ができる人間が2名以上いたので可能だったというのもありますが、それができない施設は、心筋炎を見てはいけないと思っています。すぐに高次医療機関に送るべきです。

具体的には、心筋炎の患者が来るとします。冠動脈造影で冠動脈による心機能低下ではないことを確認して、そのまま右でも左でもいいので、心筋生検を行います。そして、右心機能の評価カテーテル(スワンガンツカテーテル)で心機能を評価したうえで、持続評価できるように留置します。この時に、繰り返しますが、この時点よりも刻々と心機能は悪くなっていきます。このことを念頭において、IABP、Impella、VA-ECMOを導入します。また、IABPやImpellaもいいですが、右心・左心もやられるということも重要で、左心を中心の補助するデバイスでは、病態の進行に、押し負ける可能性がありますので、常に、VA-ECMOを念頭に治療する必要があります。

その時に、病理部が動いている日勤帯かどうかで場合分けになります。病理部が動いている時間なら、そのまま検体を提出して、ステロイドが有効な心筋炎であれば、ステロイドのパルス療法(1g×3日)を行います。好酸球心筋炎であれば、パルスだけを行って様子を見るか、40mg程度で継続して、徐々に減量するのでもいいと思います。

巨細胞性心筋炎の場合には、ステロイドパルス療法の後は、免疫抑制薬を使用します。子の場合は2剤併用で、長期間の使用になりますので、通常の医療機関で対応することはないと思います。

病理部が動いていないときには、夜間などになると思いますが、とにかく心筋生検できる人間を呼び出して、心筋生検を含めた心臓カテーテル検査を行います。病理部が動くまでの間に、どの心筋炎かわからない状態でありますが、とにかくステロイドパルスとして1g投与します。1日だけ投与して、翌日すぐに心筋炎の診断をしていただいて、ステロイドパルスの適応があれば続けて、なければ中止です。

この判断には異論があると思います。

劇症型のような状態であれば、いわゆる敗血症性ショックの治療が感染の部分を除いて適応される可能性があり、その時のステロイド投与(300-500mg)は、悪いことはしないという(症例によってはよくなる程度)結果ですので、1回1gの投与であれば、心筋炎の治療という意味では、ステロイドの適応がないものであっても、感染なども問題にはならないと判断しました。

また、ステロイドが有効でない心筋炎の場合には、両室の補助人工心臓を導入する可能性がありますので、免疫を抑制するステロイドパルスをすると術後感染や縫合不全の可能性があります。ただ、これに関しては、1度のステロイド投与で術後問題となるようなことはないように思うとの心臓外科側からの意見もあり、行っていました。一度のパルスよりも、中等量の持続投与のほうが問題になるのではないかということでしたが、もちろん、データに裏付けられたものではありません。

 

 

心筋炎の治療に関してのポイントは、主にこの2つです。

入院後も心機能障害自体が増悪していく

心筋生検は可能な限り早く行い、ステロイドパルスはフライング気味で開始する。

 

あと、追加するとしたら、心筋梗塞のCKの値と、心筋炎のCKの値は異なるという点だと思います。

 

心筋炎の原因を別にまとめようかと思いましたが、多くはウイルス性で、時折全身の好酸球が上がる疾患の随伴、おそらく次に多いのは薬物(合法、非合法、変なガス含む)あたりかと思います。AHAのガイドラインでは、他に細菌や真菌などの感染症を起こすほぼすべてのものや全身疾患が列挙されています。

ちなみに、好酸球性心筋炎は、全身の好酸球が上がる疾患に随伴するものもありますが、末梢血の好酸球が上がらないものも結構ありますので、注意してください。