健康リブ ー健康に生きるために病気を知るー

心不全について私が知るすべてを話すブログ

一瞬心筋炎かと思った多枝冠動脈攣縮と攣縮に対する特殊な治療

 以前、50歳くらいの患者さんが救急外来にショック状態で運ばれてきました。

心電図では、右冠動脈の完全閉塞とほかの血管に異常があると思われるような所見で、多枝の心筋梗塞かなと思いエコーをあてると、全体的に心筋が動いておらず、え、心筋炎かと思いました。
とにかく、冠動脈造影をすると、右冠動脈と回旋枝が完全閉塞し、前下行枝が高度に狭窄していました。収縮期血圧も80mmHgあるかないかの状態でしたが、検査中にどんどんと血圧が低下していき、そのまま心停止となり、VA-ECMOとIABPを留置しました。
状態が落ち着いてから、冠攣縮を疑って、ニトロールを冠動脈内投与したら、冠動脈は完全に開存しました。
その後、CCUで、ニコランジル、ニトロール点滴静注し、アダラート®とエパデール®の経鼻胃管からの投与を行いました。
スワンガンツカテーテルを留置して、血行動態もモニタリングを行っておりましたが、CCUで再度心電図で右冠動脈閉塞の変化が出て、Cardiac Output 2.5L/min ⇒ 1.0L/minまで低下するということが起こりました。病棟で、ニトロール静注追加したり、気管挿管状態ではありましたが、ニトロペンを舌下投与してみましたが、改善はなく、結局再度心カテ室でニトロールを冠動脈投与し、改善しました。
 
しかし、再度CCUに戻ってしばらくすると、冠動脈攣縮がおこりました。その時に何度もカテ室に行く以外に方法はないのかものかと考え、IABPの先端は圧を測定するためにカテーテルになっていたので、IABPの先端からニトロールを打てば、上行大動脈のニトロール濃度は非常に高くなり、さらに、IABPの収縮・拡張によって、冠動脈にニトロールが高濃度の状態で押し込まれるので、よりよいのではないかと考えました。実際にIABPの先端からニトロールを5mg静注ではなく、動注すると、心電図で右冠動脈の虚血が改善したようになり、血行動態も安定しました。
 
その後も、攣縮が頻回に起こりましたが、IABPの先端からニトロールを投与すれば、攣縮が改善する状態ではありました。
しかし、攣縮はいつ起こるかわからず、そのたびにニトロールをIABP先端から投与する必要がありましたし、血行動態が不安定であったり、下血もありましたので、それらに対する対応を行う必要があり、まだ、私自身30歳前半で元気であったので、CCUに宿泊用ベットをつくり、CCUでの寝泊まり生活が始まりました。ま、それはいいのですが、とにかく攣縮が起こると一気に低拍出によるショックが起こるものの、IABPからすぐにニトロールを動注すれば改善することがわかりましたので、その治療を続け、徐々に攣縮の頻度が低下し、ほぼおこらなくなった3病日にECMO離脱し、それからしばらくすると攣縮は完全になくなりましたので、10病日程度でIABPからも離脱しました。
 
なかなかの攣縮であったと思います。
最終的には右室は、エコーおよび右心カテーテルのデータからは、障害はほぼないと判断されましたが、左室駆出率は40%程度での状態で最終的に退院となっています。
患者さんは50歳代であったこともあり、攣縮の嵐の時に、一度心臓移植も考えましたが、攣縮もコントロールでき、左室駆出率40%まで改善したため、そのまま心リハを含めた外来治療を続けることになりました。
 
いまIABPの先端がコンデンサーチップになっているものもあるようですので、同じことができるかどうかはわかりませんが、静注で改善せず、冠動脈注入でしか改善しないものに関しては、IABP動注が攣縮の治療として有効な時があります。