どのような患者さんに心臓リハビリテーションを行えばいいかというと、循環器疾患を患っているすべての患者さんが対象となります。しかし、基本的には保険医療ですので、保険で償還される患者さんに行っていくということになります。
ちなみに、運動療法には禁忌となる患者さんはいますが、心臓リハビリテーション自体が禁忌となる患者さんはいません。急性期から慢性期までのすべての循環器疾患の人に適応があると考えます。
以下の患者さんが保険償還される患者さんになります。(心大血管リハビリテーション料、平成30年度改定より)
心大血管疾患リハビリテーション料の対象患者
「急性心筋梗塞、狭心症発作その他の急性発症した心大血管疾患又はその手術後の患者」
「慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患その他の慢性の心大血管疾患により、一定程度以上の呼吸循環機能の低下及び日常生活能力の低下を来している患者」
となっています。
次の補足説明がなされていて、
「急性発症した心大血管疾患又は心大血管疾患の手術後の患者とは、急性心筋梗塞、狭心症、開心術後、経カテーテル大動脈弁置換術後、大血管疾患(大動脈解離、解離性大動脈瘤、大血管術後)のものをいう。」
「慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患その他の慢性の心大血管の疾患により、一定程度以上の呼吸循環機能の低下及び日常生活能力の低下を来している患者とは、
(イ) 慢性心不全であって、左室駆出率40%以下、最高酸素摂取量が基準値80%以下 脳性Na利尿ペプチド(BNP)が80pg/mL以上の状態のもの又は脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)が400pg/mL以上の状態のもの
(ロ) 末梢動脈閉塞性疾患であって、間欠性跛行を呈する状態のものをいう」
というように定義されています。
大きく分けると、1) 心筋梗塞・狭心症、2) 大血管疾患、3) 心臓血管外科手術の術後、4) 心不全、5) 下肢動脈閉塞 になると思います。
1)は、心筋梗塞であれば、発症の時期は問われません。発症直後でも、いつ発症したか定かですらない心筋梗塞でも、心筋梗塞の診断となるのであれば、大丈夫です。ただ、一般的な心リハの保険が3か月なので、発症時期よりも心リハ開始時期が重要になります。
(いつ起こったか定かではない心筋梗塞の診断には、心筋に局所的な壁運動異常があって、それを潅流する冠動脈に異常があるか、異常はないもある特定の冠動脈に閉塞(血栓など)が起こったことでしか説明できない場合には診断としてもよいと考えています)
急性心筋梗塞であれば、病態をみながら少しずつ、初めちょろちょろなかぱっぱという感じで慎重かつ段階的にその段階段階に応じた負荷検査を行いながら、運動療法などの心リハを勧めていく必要がありますし、いつ発症したか定かではないものに関しても、2次予防・3次予防であったり、動脈硬化による心筋梗塞であれば、脂質異常や併存疾患などに対する運動療法などの包括的な治療が有効であったりするため、とにかく心筋梗塞であれば、適応として、その患者さん毎に応じたリハビリメニューを行っていってくださいねということです。
(基本的にお役所は心リハを推奨したいとのことで、条件の緩和や適応疾患の拡大を行っています)
狭心症は、冠動脈の狭窄による症状のある状態のことで、症状が出ない範囲で、2次予防的に行われることが多いかと思います。
3)に関しては、昔々は確か開心術後ということだったと思いますが、すぐに開心ではないけどバイパス術もOKですよということになり、平成30年の改定で経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)もOKですよということになりました。特に、TAVI自体は、特に大腿動脈からアプローチするものに関しては、かなり侵襲性は低いので、TAVI術後そのものに対するリハビリはいりませんが、手術するほどの大動脈弁狭窄症が、開心手術を選択されなかった中から高リスクの人にあったわけですから、手術になるまでにそれなりに廃用が進んでいた可能性が高いので、この手術するまでに衰えてしまった全身に対して、大動脈弁をせっかく直したのだからリハビリをしてもらって、より一層元気になっておらってくださいねということになります。
他の手術に関しては、TAVI同様手術になるほどの異常を抱えていたということもありますし、全身麻酔での開心手術(特にCABG以外)は、手術自体での消耗もあるので、しっかりリハビリをしましょうということになります。
また、心リハは運動療法だけではなく、栄養や服薬管理なども含めた包括的な治療ですので、動脈硬化性疾患であれば、リスク管理の重要性を一緒に考えていく必要もあります。