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AS(3):左室流出路狭窄時のエコー評価

大動脈弁狭窄症の診断や重症度評価に関しては、心エコーで可能です。ただ、エコーが万能というわけでもありません。
特に以下の点で注意が必要です。
1) 左室流出路に狭窄があり、加速血流がみられる場合
2) 基部から上行にかけての大動脈径が相対的に細い時
3) 1回心拍出量が低下しているとき
 
1)はどういうことかというと、大動脈弁の狭窄部分(正確には少し先)が最高速度をとり、その速度が狭窄度を反映するのですが、そのまえにその狭窄の前の速度が十分に遅いことが、必要な条件になります。つまり、左室の流出路が少し狭窄していて、加速していると、その加速は無視できなくなるので、単純に速度が狭窄の程度を示さなくなります。
例えば、左室流出路が2m/s程度の加速血流となっているときに、大動脈弁通過血流が4m/sとなっていても、高度狭窄ではありません。
狭窄前後の圧力の差(圧較差)は、速度の2乗の差に粘性などを考慮した係数をかけたものになります。エコーで使用される簡易ベルヌーイ式は、大動脈狭窄の場合には、左室流出路の速度は0(ゼロ)と近似されています。
つまり、本来は
左室圧-大動脈圧=係数×(大動脈弁通過速度の2乗-左室流出路の速度の2乗)
となっているところを、左室流出路の速度の2乗をゼロと仮定していますので、
左室圧-大動脈圧=係数×大動脈弁通過速度の2乗
という式を用いています。
 
左室の圧格差があると、左室流出路が無視できなくなります。
 
参考程度の値ではありますが、
大動脈圧格差を示す血流速度=√(大動脈弁通過速度の2乗-左室流出路の速度の2乗)
となります。
 
例えば、左室の流出路が2m/sの加速血流となっているときに、大動脈弁通過血流が4m/sとだと
実際の圧格差を表す速度は、
√(4*4-2*2) = √12 ≒3.5
つまり、3.5m/s相当の大動脈弁狭窄症と考えられます。

このような時に、心不全があるときには、状況によっては、カテーテルで中隔を焼灼しに行ったり、選択的ベータ1受容体阻害薬を使ったりすることがあります。
また、いずれカテーテル的な大動脈弁置換術(TAVI)が必要となる可能性が大いになりそうなら、その数か月以上前に、中隔を焼灼することも考えられます。
 
 
また、どうしてもこのような時に正確な圧較差の診断をつけて、手術かどうかの判断をしなければならない時には、心臓カテーテル検査が有効です。
心臓カテーテル検査で、側溝のついていない、先端だけ穴が開いている4Frのカテーテルを、ワイヤーを使って大動脈弁を通して、左室の心尖部と大動脈、左室の流出路の前と大動脈、大動脈弁直下と大動脈の3か所の圧較差を測定すれば、どこのどれだけの異常があるかを正確に診断することができます。
 
以前は、カテーテルを通すと脳梗塞になるといわれていました。もちろん、可能性がないわけではないので、むやみにする必要はありませんが、必要な時にはしっかりつワイヤーを先行させてそれに沿わしてカテーテルを入れると、脳梗塞は起きないと思います。現に、いまこれだけカテーテル治療の前にワイヤーでカテーテルを入れていますが、その時に、それが原因となる脳梗塞が起きたという話は聞いたことがありません。
 
大動脈狭窄などのときの、カテーテル操作で気を付けなければならないのは、両用のカテなどで弁をこすることです。絶対に動脈弁が硬化しているときに、弁に押し付けた形でのカテ操作をしてはいけません。