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AS(5):1回心拍出量が少ない時の高度大動脈弁狭窄症は要注意

大動脈弁狭窄症の診断や重症度評価に関しては、心エコーで基本的には診断可能です。ただ、エコーが万能というわけでもありません。特に以下の点で注意が必要です。
1) 左室流出路に狭窄があり、加速血流がみられる場合
2) 基部から上行にかけての大動脈径が相対的に細い時
3) 1回心拍出量が低下しているとき

 

3)についてですが、これは偽性高度大動脈弁狭窄症の可能性がある状態です。

偽性高度大動脈弁狭窄症は、弁自体が開放できる能力的には高度ではなく中等度程度の大動脈弁狭窄症であるが、何らかの理由で1回心拍出量がすくないために、弁開口時の弁口面積が狭くなっている状態です。押し出す力が弱いため、弁が十分に開口していない状態です。
もちろん、心拍出量が少ないからといって、必ずこの偽性大動脈弁狭窄ではなく、心拍出量が正常まで増えても、高度狭窄のままである、本当の大動脈弁狭窄症の可能性もあります。そのため、1回心拍出量が少なく(low-flow)、圧較差自体は大したことはない(low-gradient)が、弁の開口面積が狭い場合には、偽性なのか、本当に狭い真性なのかを考える必要があります。
 
ちなみに、1回心拍出量の低下は、低心機能であったり、もともと高齢女性では必要とされる循環血液量が少なく1回心拍出量が少ないためにおこります。
1回心拍出量が60ml以下の時には、この偽性高度大動脈弁狭窄症の可能性があります。
 
また、このような1回心拍出量が少ない(low-flow)時に、大動脈弁の開口時の弁口面積自体は1cm2より小さくものの、狭窄部の最高血流速度や平均圧較差が高度の基準に達していないこと状態をlow-flow low-gradient severe ASといいます。単に、low-lowといったりすることもあります。

paradoxical low-flow low-gradeint severe ASというのもあります。これは、左室駆出率(LVEF)が正常範囲内なのに、Low-flowである状態ですが、肥大心や高齢女性では、LVEFは正常や過剰収縮の状態でも、全然1回拍出量が少ないことはあります。LVEFが収縮機能の指標ですが、これがいいから心拍出量があるという思い込みがあるということを傍証する言葉だと思います。

 

Low-low severe ASの時には、心拍出量を変化させて、その時の弁の開口面積により真性か、偽性か、どちらともいえないかの3つに分けます。

心拍出量を変化させるのには、強心薬を用います。

一般的な負荷と異なり、1回心拍出量を増やすことが目的ですので、運動負荷などではなく、ドブタミンを用いて1回心拍出量を増やしていきます。ポイントは、心拍数をないことです。普通の負荷は、心拍数をどんどん上げることで心臓の仕事量を増やしていきますが、Low-low severe ASに対する負荷は、あくまで1回心拍出量を増やすのが目的ですので、ドブタミンを調整して、心拍数があがったらそこで負荷は終了です。

だいたい、3γ程度から開始して、5→10→(15)→20γと、3-5分程度で上げていって、負荷前と、それぞれの負荷量で、弁口面積を測定します。測定は、基本的には心エコーで行いますが、同時に右心カテーテルの値も測定しておきます。

 

ドブタミン負荷で、1回拍出量が60mlを超えた場合には、その時の弁口面積が1cm2(または、0.6cm2/m2)を超えていれば、心拍出量低下による偽性高度大動脈弁狭窄症と診断されます。

 

次に、1回心拍出量がある程度増えはしたが、60mlには到達しなかった場合には、安静時から、それぞれのドブタミンの負荷量の時の1回心拍出量とその時の弁口面積をグラフにプロットして、1次関数になると仮定して(本当に1次関数になるかどうかはわかりませんが、狭い範囲ならそうなのかもしれません)、1回心拍出量が60mlの時の弁口面積を求めます。

例えば、2つのプロットで、安静時(1回拍出量 20ml、弁口面積 0.6cm2)、ドブタミン5γ(1回拍出量 30ml、弁口面積 0.8cm2)であったら、

(弁口面積)=0.02×(1回拍出量)+0.2

となりますので、60mlの時には、1.4cm2となり、中等度の大動脈弁狭窄症になります。そのため、この時には、偽性大動脈狭窄症であるという診断になります。

もちろん、できるだけ正確にするために、プロットする点を多くして、エクセルか統計ソフトで1次関数に近似させて求めてください。

この60mlの時の弁口面積で、真性の高度大動脈弁狭窄症か、偽性の大動脈弁狭窄症かが診断できます。

 

最期に、ドブタミン負荷によりほとんど心拍出量が増えない時はどうするかです。

おそらく重症の心不全か、すぐに心拍数が上がってしまうようなときだと思います。

このような時には、真性か偽性かわかりません。

ただし、このような時には、手術により心機能や生命予後が改善する人がいることは報告されています。真性なのか、中等度の狭窄でも心機能に悪影響を与えている可能性があるのかとのどちらかだと思います。

現在の鼠径部から行うカテーテル的大動脈弁置換術が可能であれば、侵襲性が低いため、個人的には積極的に弁置換を行ってもいいのではないかと考えています。

もちろん、バルーン拡張を行って、その反応を見てから弁置換でもいいとは思いますが、このような患者さんには積極的にできる治療を行っていくしかないのではないかと思います。

 

大動脈弁狭窄症の時には、弁置換後も多少圧較差がある大動脈弁の軽度狭窄状態になりますが、同じ圧負荷で、低圧になるので、血行動態的には悪くなることはありません。このあたりが、大動脈弁閉鎖不全症とはちがうところです。

 

もちろん、手術には年齢、認知機能や日常生活における元気さなどの因子が十分に手術するに値すると判断される状況であるという前提は必要です。