心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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AS(4):大動脈径が3cm以下の時のASの評価

大動脈弁狭窄症の診断や重症度評価に関しては、心エコーで基本的には診断可能です。ただ、エコーが万能というわけでもありません。特に以下の点で注意が必要です。
1) 左室流出路に狭窄があり、加速血流がみられる場合
2) 基部から上行にかけての大動脈径が相対的に細い時
3) 1回心拍出量が低下しているとき

 

2)についてですが、上行大動脈の血管径が小さい時に、大動脈弁の狭窄の面積のわりには、通過血流が速くなるので、過大評価となり、中等症程度の狭窄なのに重症と判断してしまう可能性があるということです。そのために、こういう状況の時には注意するのと、補正する必要があるということです。

 
補正式は、いろんなサイトにありますので、[aortic stenosis pressure recovery calculation]で、Google検索してみてください。いくつかサイトが出てきますが、身長、体重、左室の流出路径、大動脈径、左室の流出路のVTI(速度時間積分値)、大動脈弁狭窄の通過血流のVTIや、最大値と、推定平均圧をいれると、補正前の弁口面積と補正後の弁面積を計算してくれます。
例えば、左室流出路の径を2cm、VTIを15㎝、大動脈弁狭窄のVTIを60㎝とします。
無補正では、大動脈弁狭窄の面積は、0.8cm2です。
この時に、大動脈径3cmでは、補正で0.88cm2となりますが、大動脈径が2.5cmでは、0.93cm2となります。
 
大動脈径が3cmというのは、一般的な血管径ですが、これでも約10%程度の補正がかかります。日本人の高齢女性では、2.5cm程度ということもよくありますが、この時には、20%程度の補正がかかります。
3cm以下の大動脈径の時には、補正式を使って合わせて評価することが必要だと考えられますが、実は血管径3cmの時点ですでに、10%程度の補正がかかることも知っておいてください。
 
 

理屈的には、流体力学の分野になります。この理論はよく理解できていないので、割愛させてください。すいません。