心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

健康診断で聴診異常を言われたら

(呼吸音)

健康診断の時に、聴診器で胸の音を聴かれると思います。

その時に効いているのは、心臓の音と呼吸の音です。

個人的には、前から聴いているのは主に聴いているのは心臓の音で、背中で呼吸の音を聞いています。

 

まず、呼吸の音ですが、呼吸の音を効くのには、大きく呼吸をして、肺の末端の肺胞をよく換気していただかなければ聞こえませんので、深呼吸を普通の呼吸よりやや早いくらいでしていただければ助かります。1秒で吸って、1秒で吐くくらいの早さです。

 

風邪などの時に、医者が呼吸の音を聴きますが、この時は、前6か所程度と後ろも6か所程度聴きます。これは、肺炎になってないか、喘息性気管支炎になってないかをしっかり聴診で評価したうえで、レントゲンが必要かを判断しているからです。

もちろん、呼吸音に異常のない肺炎も2-3割程度あるとのことですが、他の情報も合わせて評価はしていきますが、やはり、肺胞に水が貯まっていそうなごぼごぼした音や、ヒューという気道が細くなってそうな音が聴こえるかどうかは重要です。

 

健康診断の時にはほとんどの方がレントゲンを撮りますし、基本的に健診の方はもちろん健康な方です。レントゲンが正常で呼吸音が異常というのは気管支喘息ぐらいです。気管支喘息であれば、背中だけでも正直十分だということもあります。

それと呼吸音を聴くときには、服の上に聴診器を当てて聴こうとしても、呼吸して胸が動いた時に、服のせいで雑音が聴こえます。そのために、かならず直接皮膚にあてる必要があります。これが健診では結構問題になることがあって、前から直接聴こうとすると、女性の方でも胸をはだけていただかなければなりません。そういうこともあって、基本的に呼吸の音は背部からしっかりと聴くことにしています。

 

(心音)

心音は、前から心臓のあるあたりに聴診器を当てて、心臓の弁が閉まる時になる音を聴いています。(聴いている場所はおおよそ心電図をはるところらへんです)

心臓には、4つの弁がありますが、僧帽弁と三尖弁は同時に閉まり、また、大動脈弁と肺動脈弁は少しずれますが、ほぼ同時に閉まりますので、それぞれ1つの音に聴こえます。この2つの音を聴いています。

この2つの音以外が聴こえたら、基本的には異常心音となります。

(若い方に関しては、2つの音以外に心房の音が聴こえることがありますが、これは正常です)

 

健康診断で心雑音として多いのは、弁膜症だと思います。

弁膜症というのは、4つの弁のどれかが異常を起こす病気です。

心臓の弁は、逆流防止弁の働きをしていて、しっかり開いて血液を順行性にながして、それ以外の時にはしっかりとしまって、逆流をさせないというようになっています。

しかし、何らかの原因で、弁の開きが悪くなって、血液の流れが妨げられ乱流になったり、弁のしまりがわるくなって逆流をしてしまうときに雑音が聴かれます。

雑音の場所と、雑音のおこるタイミングなどで、おおよそはこの弁のどういう異常かの見当はつくことが多いです。

しかし、重症度まではわかりませんし、弁膜症といっても原因や心臓の状態はもちろんわかりませんので、初めて心雑音を指摘されたら、基本的には循環器内科を受診し、心臓超音波検査(エコー検査)を受けていただければと思います。

時折、この程度の雑音なら大丈夫といわれたという話を聞きますが、私自身は心雑音で重症度を理解できる耳はありませんので、エコーをお勧めします。

エコーで原因がわかれば、放置でいいものや、1年から数年程度に一度、レントゲンや心エコーでフォローが必要なもの、状況によっては手術が必要なものまでいろいろありますので、循環器の担当医師と相談いただければと思います。

 

最近特に多いのは、大動脈弁狭窄症といって、年齢と主に動脈弁という、心臓から大動脈の間にある逆流防止弁の狭窄です。加齢性に悪化することが知られていて、100人程度聴診すると1-3人程度はこの雑音が聴かれます。これは、基本的に進行性の病気ですので、重症度によって定期的な検査で進行の具合を見る必要があります。

 

また、弁膜症以外の原因としては、生まれた時からの異常や心不全に伴う異常心音といったもの、または、貧血などで一時的に聴かれる機能的な雑音もあります。

もちろん、これらの異常も一般的な検診と心エコーですべて原因はわかりますので、やはり、心雑音のある時には心エコーをお勧めします。

 

少しだけ、聴診をする上でのコツですが、心音はTシャツ程度であればそのうえから聴くことができます。

また、心音が小さくて聴こえない方もいます。その時には、息を吐ききってもらって、心臓と胸壁を使くすると聴こえやすくなることがあったり、聴診器を普段より2つ程度ずらすと音が聴こえやすいこともあります。参考にしていただければと思います。