心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

高血圧とは。そもそも血圧とは何か。治療はした方がいいのか。(23)

(腎動脈アブレーション)

SPYRAL HTN-OFF MED Trial  Lancet. 2017 Nov 11;390(10108):2160-2170  

Prof. Dr. Michael Böhm 

 

2017年にLANCETという超一流雑誌に掲載された臨床試験です。  

腎臓の動脈にスプリングのような形態をしたカテーテルを使って、アブレーションといって通電を行うことによって腎臓の交感神経を麻痺させるという治療です。 

 

 

2009年頃に初めての診療試験が行われた新しい治療です。 

今まで何度か臨床試験が行われてきましたが、評価方法の違いで結果が異なったりして効果が定まっていなかった治療です。 

今回は、さまざまな条件に適合して選ばれた80人の高血圧患者に対して治療が行われました。 

この試験は、患者さんが自分が治療が行われたかどうかはわからないようにしています。どのようにするのかというと、事前に治療するグループ(治療群)と治療せずに経過をみるグループ(偽治療群)に分けられているのですが、偽治療群もカテーテル室へいって、カテーテルの挿入と造影検査は行われます。 

開始時点で、すべておよその平均ですが、年齢は54歳、70%が男性、体重 90kgで、血圧は、診察室血圧で、162/100mmHg、24時間平均血圧で 152/99mmHg程度であったとのことです。 

体重がかなり欧米ですが、55歳くらいの血圧160/100程度の方は日本でもちらほらいるようなと思われますので、かなり一般的な患者像だと思います。 

そのような方の中で、38人にカテーテル治療を、42人にはカテーテル挿入だけを行いました(患者さんは自分がどっちかわかりません)。 

治療時間は、60分程度とのことですが、造影剤が250mlも使ったようです。この量がどのくらいかというと、冠動脈のカテーテル治療で最難関の閉塞病変をするときくらいの量だと思っていただければいいかと思いますので、結構多い印象です。 

そして、治療結果ですが、3か月経過時点で、治療群は、24時間血圧で収縮期5.5mmHg,拡張期で4.8mmhg程度、診察室血圧で収縮期10.0mmHg、拡張期5.3mmHg低下し、偽治療群がほとんど低下していないので、これは治療として有効と判断されました。 

治療された人数は決して多くはないものの、かなりこの試験でこの治療が有効かどうかをはっきりさせるという強い意思で厳格に行われたと思います。もし、この試験で結果が出なかったら、この治療はもう無効な治療として終わっていたと思いますので、かなり重要な結果であると思います。 

この試験は、3か月目の段階で有効性が評価されましたので、偽治療群をいつまでもほっておくわけにはいかないですし、治療群も決して高血圧の目標とされる血圧まで下がっていない人が半数以上だと思われますので、この段階で治療は終了しています。 

現在、どのようなフォローが行われているか、私は知りません、すいません。偽治療群は、速やかに内服治療か、もしくは、治療に参加する段階で偽治療群の場合には、試験終了後にカテーテル治療を受けられるとかという契約もあったかもしれませんが、内服などの治療が行われていると思います。 

興味があるのは、やはり治療群で、一般的な内服は3か月くらいでの血圧がそれ以上に下がることはなく、一般的には徐々に上がることのほうが多いので、この治療群のその後のフォローを世界は期待していると思います。この治療で、ゆっくりと下がり続けるのか、それとも1年程度で完全に元に戻るのかが重要だと思います。