(治療の第一は塩分制限と運動)
まず、繰り返しですが、基本は塩分制限です。
もともと塩分感受性の高いような人に関して重要であることはもちろん、その他の人でも、高血圧の状態となっていると塩分に対する感受性は亢進しています。
多めの塩分をとっても高血圧にならない人がいるということと、そういう人でも高血圧の状態になったら、塩分と血圧に関連が出るということは、一般的にみられることです。(He FJ, BMJ. 2013 Apr 3;346:)
高血圧になると特に若年者であればあるほど、強く脳血管や心疾患の頻度が高まること、高血圧となった人が塩分を制限することで、血圧が低下するということは、現時点までの様々な臨床研究で確かなことだと考えます。(高血圧ガイドライン)
そのため、日本での正常高値血圧とされる130/85mmHg、アメリカ基準の130/80mmHg程度の人に関しては、特に若ければ若いほど塩分の制限を気にするほうが良いと思います。
また、全身の循環や筋肉の維持のためにも少し強度の強めのウォーキングは必須です。下肢などを中心とした軽い筋力トレーニングも有効です。
(ガイドラインと臨床試験)
さて、診断・治療を決めていく中で、ガイドラインというものが、ほとんどの病気で決められています。では、ガイドラインがどのようにして決まっているのかというと、日本固有のガイドラインの場合は、複数のその領域の専門家が集まって、さまざまな治験や臨床試験や海外の動向などを注視しながら、一つ一つの項目に関して決めていきます。もちろん、高血圧に関してもガイドラインがあり、高血圧学会が数年に1度改定を繰り返しながら発行しています。学会のホームページから無料でみることができます。
臨床試験というのは、いろいろあります。
患者さんの治療の経過をただ追っていくだけの観察研究。
観察研究は、ある特定の集団を決めて、その集団に、一度にざっと問診や検査をしたりして、その時点でのデータを集めるものや、アメリカのフラミンガム研究、日本の久山町研究のように、ある特定の地域の集団に対して、一定の期間毎に、いろいろな検査を行うなどして、例えば、心疾患を発症するのはどのような人かなどをみていく研究です。
治療に対する介入などはせずに、状況把握に努めます。
これらの研究結果から、今はだれでも知っているような高血圧、脂質代謝異常などが心疾患の発症に強く関連しているなどということが裏付けられています。
また、病院単位で患者さんのデータをデータベースにして集積していることもあり、これらを解析することもあります。これらのデータを集め、解析する時には、個人情報の取り扱いを含め、患者さんに周知し、拒否する権利をもってもらうことが必須です。
さらに、後ろ向き観察研究といわれるものがありますが、これは今までの患者さんの病院の治療歴などから、ある因子が病気の発症と関連があるかなどを調べるときに行います。この研究は最も信頼性がなく、あくまできっかけを探すという程度に用いられます。また、診療に関係なく個人のカルテを閲覧することは、法律で禁止されていますので、かならず後ろ向き研究を行うときには、事前に倫理委員会の承認を得てからデータを集積することが必須です。
最も、厳格に法律などのもとに行われるのが治験です。新薬などを厚生労働省に認可を受けるために行われます。
ついで、医師主導型臨床試験があり、これはすでに認可されている薬を別の目的で使ったり、2つの薬のどちらがより有効か、どのタイミングで使用すればより有効かなどの検証のために行われます。
これらの試験に参加する時には、かなり入念な説明があると思いますが、ある程度の希望の病院にかかっていなければあまり参加する機会はないかもしれません。