(白衣高血圧と仮面高血圧)
前回、高血圧の診断としてもちいられている数字は、正しく測定された診察室血圧で140/90mmHg, 家庭血圧で 135/85mmHgと述べました。
また、最も信頼性の高いと思われる24時間自由行動下血圧で、昼間 135/85mmHg、夜間 120/70mmHg、1日平均 130/80mmHg以上が高血圧と診断されます。
診察室血圧と家庭血圧を両方測定している方の中で、2つの値が結構違うという方は多いと思います。
一番多いのは、家庭血圧が低くて、診察室血圧が高いパターンで、例えば、健診での診察室血圧は高いが、自宅でしばらく血圧を測ってみると全く高くないという方です。
これを白衣高血圧といいます。
白衣高血圧は、安静にした状態での血圧は正常であるため、腎臓などによる血圧の設定値の異常は起きていない状態です。
そのため、この状態で治療は必要ありませんが、少しの刺激で血圧が過剰に上昇するという状況であり、白衣高血圧の方の中には動脈の硬化が始まっていて、精神的な緊張による交感神経の亢進により、すぐに血圧が上昇するという素地ができている可能性もあります。
そのため、本当の高血圧の予備軍の可能性があるため、家庭血圧の定期的なチェックはしていただいたほうが良いのだろうと思います。
もう一つは、診察室での血圧は正常であるが、家庭血圧が高い場合です。このような方は仮面血圧といいます。
この仮面血圧の方がなかなかに大変で、まず診察室血圧が正常であるので、自分で血圧を測定するということをしない限り、実は血圧が高いということに気が付かないです。
この仮面高血圧は、通常の高血圧とほぼ同じように心疾患や脳血管疾患を発症しますので、家庭血圧を参考に治療を行わなければなりません。
この発見が難しいわりにリスクが高いというあたりがなかなかにやっかいな状態です。
仮面高血圧の原因としては、早朝高血圧の患者が多く含まれている可能性があります。普段の血圧は高くないが、朝一番の血圧だけが高いパターンです。
早朝高血圧というのは、実質的には2つの可能性があり、ひとつは夜間高血圧が残っているタイプで、もうひとつは早朝に急激に血圧があがる、モーニングサージといわれるタイプです。
通常夜間就寝中の血圧は、体が完全にリラックスしてい状態ですので、睡眠の周期によって多少の変動はありますが、基本的には昼間より10-20mmHg程度は低い状態になっています。これを受けて、24時間血圧での診断は、夜間の高血圧の診断が、日中よりそれぞれ15mmHg低い値になっています。(さらに20%以上下がる過剰降下型もあり、このような方も脳血管/心疾患のリスクは上がります)
早朝高血圧の原因としては、睡眠時無呼吸症候群や腎不全などの夜間に交感神経が活発化するような状態や、夜間にも塩分を排泄するために血圧を高い状態にしないといけない状態があります。
このような方に関しては、24時間血圧を測定しないとわかりませんが、心脳血管疾患のリスクが高いため、すべての人に家庭血圧を測定したりする必要はありませんが、腎不全や糖尿病などの、何らかの動脈硬化性疾患や心疾患を持っている方に関しては、診察室血圧が正常であっても、できる限り家庭血圧を測定していただき、早朝高血圧がないかどうかなどを調べていただいたほうが良いと思います。
糖尿病や腎不全、心疾患などは特に血圧の治療がその患者さんの予後にかかわってきますので、しっかりと評価して、適切な治療を行うことでできる限り致死的な疾患の発症を減らしてもらいたいと思います。