心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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高血圧とは。そもそも血圧とは何か。治療はした方がいいのか。(22)

(アルドステロン拮抗薬)

アルドステロン拮抗薬は、高血圧治療で第一選択となる薬剤ではありませんが、併用することで非常によい降圧を示すことがあります。また、心不全の治療薬としては、心臓が大きくて悪い人も小さくて悪い人にも有効性を示すデータがあり、利尿作用もあるので、多少の浮腫などであれば、この薬剤で改善することがあります。

アルドステロンは、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系といわれるシークエンスの中の最下流に位置します。血圧に関しては、腎臓の遠位尿細管といわれる腎臓でのナトリウムの再吸収が行われる最後の部分で、ナトリウムを再吸収して、カリウムを排出するように働きます。また、関与は少ないかもしれませんが、腸管の塩分の吸収にもENaC(上皮性ナトリウム)があって、ナトリウムの吸収に関与しています。これがブロックされて食塩の吸収量が下がることも一因かもしれません。

アルドステロンは、腎臓からレニンが分泌されて始まる血管を流れて全身の臓器に影響を与える経路と、組織内で完結される組織にレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系があります。
塩分摂取量が増えると、腎臓に流れ着くクロール濃度が上昇するために、傍糸球体装置のクロールによってコントロールされるレニンの分泌は低下します。しかし、塩分摂取によって組織のレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系は活性化するといわれています。組織で作られ、作用するアルドステロンは、その組織に炎症および繊維化といって臓器の機能低下を起こすような変化が起こりますし、炎症そのものがサイトカインという伝達物質を増やして繊維化もそうですが、細胞そのものの機能低下や、免疫の異常を引き起こして、適正な細胞機能管理を阻害するといわれています。
そのために、アルドステロン拮抗薬は、心臓、腎臓、脳をはじめとする臓器に対して、臓器保護的な薬剤といわれます。

また、アルドステロン症といって、副腎から過剰分泌したり、腫瘍などから(腫瘍としては悪性腫瘍(いわゆる癌)ではないが、体によくないホルモンを出し続ける)アルドステロンが出続ける病態があります。明らかに腫瘍がある場合になどには、ガイドラインに従って手術となることがありますが、取れるような腫瘍が画像的にないことも結構あります。
そのようなときには、アルドステロン拮抗薬を十分な投与して、しっかりとこのアルドステロンの全身に対する影響をブロックする必要があります。
また、一部の漢方薬では、アルドステロンのような作用を示すことがあって、偽性アルドステロン症といいます。このような場合には、基本的には当該の漢方薬を中止すればいいのですが、以前、ある漢方薬がその患者さんが悩んでいた症状に非常に有効であった注視したくないということがありました。その時にはアルドステロン拮抗薬を投与して、血圧やカリウムといた電解質を正常化したというようなこともありました。


アルドステロン拮抗薬ですが、この範囲に入る薬剤は、スピロノラクトンとエプレレノンの二つになります。スピロノラクトンはジェネリックで50mg 7円程度、エプレレノンはジェネリックがないので 50mgで80円程度です。
スピロノラクトンは驚異的な安さです、1か月で210円、1年で2520円です。ただ、スピロノラクトンには、ホルモン類似作用があり、女性化乳房などの副作用があります。エプレレノンは値段は高くなりますが、ホルモン類似作用がなくなり、副作用が少なくなっているのが特徴です。

副作用は、スピロノラクトンに前述の女性ホルモン類似作用と、共通して、高カリウム血症・低ナトリウム血症があります。腎機能の悪い方は電解質の異常が起きやすいので、注意が必要です。