健康リブ ー健康に生きるために病気を知るー

セミリタイアした医者のブログ。元気に長生きするためにしっておいてほしいこと。平日は毎日更新していこうと思っています。

高血圧とは。そもそも血圧とは何か。治療はした方がいいのか。(20)

(β受容体遮断薬)

β受容体遮断薬は、今までの降圧薬と違って、高血圧だけの患者さんに対しては第一選択にはなりません。第2、3選択にはなっていきます。

たま、特定の不整脈の方や、心臓が大きくなるような心不全を合併しているような方に関しては、第一選択になります。

 

今まで、高血圧は、血管不全(動脈硬化などによる)や腎臓の食塩感受性などを基礎にして、脳における血圧の設定値の制御異常であるとお話してきました。

また、その中で交感神経が非常に重要な役割を果たしていることも合わせてお話しました。

 

少し、血圧における自律神経(交感神経・副交感神経)のお話をします。

簡単に言うと運動中や、戦闘のように緊張したときに活性化しているのが交感神経で、リラックスしてだらーんとしているときに有意なのが副交感神経です。

自律神経は、何かを感知して、それに対して最速で対応するような回路を形成しています。そのため、脳の高次機能は関与しておらず、出血などで循環血液量が下がってきたから血圧上げようかなとか考える必要もなく、血液量が少なくなることを感知すると直ちに血圧が上がるようなシークエンスが作動し、血圧を維持するようになります。

運動の時も、まず運動により血液が必要と体の末梢の組織が反応し、筋肉の末梢血管が開いて筋肉に血液がより流れるようになります。また、交感神経も速やかに反応して、心臓に対して、強く打つような刺激と早く打つような刺激を出します。ちなみに、心臓移植後の患者さんは、心臓と自律神経がつながっていなので、運動直後のこのような反応がなく、運動開始後しばらくしてゆっくりと、心臓への作用が出てきます。これは交感神経が副腎に対して作用し、交感神経を活性化させるホルモンを上昇させたことによる変化です。短期間の反応は、副腎のホルモンと関係なく起こっています。

自律神経が、どうやって感知するかというと、血圧の変化(変化する速さも関係します)、血液の酸性度の変化を感じることにより循環している血液の量の変化を判断しています。

具体的には、心臓から出てすぐのところにある大動脈弓や、首の頸動脈あたりの血管に伸展を感知するレセプターがついています。循環血液量が増えると大動脈の径が拡大するので、それを感知して、血圧が増えているとか、減ってきているとかを判断して交感神経の刺激を出したり、弱めたりします。動脈硬化がすすんでくると、この動脈の変化が少なくなるので、この刺激が働きにくくなります(動脈が硬いと同じ血圧でも動脈は伸びなくなっている)。

ほかにも首のあたりに酸性度を感知するレセプターがあります。これは、普段は呼吸中枢と密接に関係していますが、極度に血圧が低下したときには、この刺激も血圧を上げるような刺激となります。

さらに、腎臓などでは尿細管内の主にクロール濃度が低下することを血液量の低下と判断し、レニンが分泌され、アンギオテンシンIIが増加します。レニンは交感神経の受容体(β1)があり、交感神経の刺激によっても分泌が増加します。動脈による血管抵抗を作る動脈の平滑筋にはアンギオテンシンIIの受容体があり、それにより収縮が起こるのとは別に、アンギオテンシンIIには、脳幹という部分(特に脳幹の最後野)に作用して、交感神経系のコントロールに関係します。

このように交感神経は高血圧を緻密にコントロールしています。そのため、この交感神経をブロックすれば、血圧が下がりそうなもので、確かに交感神経の遮断薬により血圧は下げります。

 

交感神経には、大きくα受容体と、β受容体があります。α、βの中のに1とか2とかというように種類があります。特にα受容体では、アンギオテンシンなどと同様に、1受容体と2受容体はアクセルとブレーキのような役割を果たしています。α1受容体は、血管を収縮させますが、α2受容体は血管を拡張させます。短期的には、α1に働いて血圧を上げ、ずっと上げているわけにはいかないので、α2は時間経過とともに効いてきて、α1の作用を和らげます。非常に精巧にできています。

さて、血管には、α受容体が主にあります。α1を刺激すると血管収縮で、βを刺激すると間接的に血管は拡張します。不思議なことが起きます、世の中にあるほとんどのβ授与体遮断薬とされる降圧薬は、基本的にβ1受容体遮断する作用を持ちます。すなわち、血管を拡張させる作用をブロックする薬が降圧薬なのです。

これを説明するには中枢神経のコントロール系に、その作用の説明を求めなければ合理的な説明はできませんが、これに関してはまだわかっていません。少なくとも、β遮断薬の高血圧への作用でよくみる心臓を休めるというのでは説明できません。心臓が休んで楽に動けたとして、それで血圧が下がる理由にはなりません。血圧を決めるのは、循環血液量は確かに要素になりますが、心臓の能力・働きはこれを決める要素にはなりません。循環血液量は体が必要な分を心臓が出しているだけなので、心臓は直接動いてはいますが、決める権限は持っていません。唯一、心臓が弱り果てて、この必要な量を満たせないときだけ心臓が決定因子になりますが、これは心不全といわれる状態ですので、普通の血圧の時の話ではありません。

交感神経全体の制御とレニンの分泌抑制を通して、降圧しているものと考えられます。

自律神経系は、血圧に関しては、体の血管が伸展の変化を感じることができて、それによって血圧が上下するということを覚えておいてください。

 

ちなみに、一般的に言われる自律神経失調症は、医学的には存在しません。存在するとしたら血圧変動異常を伴うはずです。自律神経は、心臓には作用しても、心に影響は与えません。

 

さて、β受容体遮断薬ですが、絶対に出してはいけない人がいます。それは気管支ぜんそくの人です。平滑筋にβ受容体があるのですが、気管支喘息は気管支の平滑筋が収縮する病気です。β刺激は平滑筋を弛緩させて、喘息の症状を緩和します。そのため、気管支ぜんそくの治療薬にβ刺激の吸入薬があります。そのため、このβ受容体をブロックする薬はぜんそく患者さんには絶対に使ってはいけません。

慢性閉塞性肺疾患の患者さんには、慎重に使ってもいいことになっています。慢性閉塞性肺疾患の患者さんは、動脈硬化があり、多少の心疾患なども併存していることが多く(タバコが共通の原因となるため)、この薬剤を適切に使用することが重要です。

 

 

副作用は、徐脈などがありますので、少量からの投与が進められます。基本的に服用をやめればすぐに改善するものばかりですので、慎重に投与さえすれば、さほど気にすることもないかと思います。