心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

高血圧とは。そもそも血圧とは何か。治療はした方がいいのか。(19)

(カルシウム チャネル ブロッカー:CCB)

今、第一選択としてもっとも多いのはこの薬剤かもしれません。

利尿薬も少ないのですが、やはり副作用が少ないというのが最大の売りで、高齢者にも処方しやすいイメージがあるとためだと思います。

値段も、標準容量のジェネリックで25円程度なので、1か月あたり750円程度ですので、まぁ悪くないと思います。

 

ここで、なぜカルシウムチャネルをブロックすると血圧が下がるのかを説明するにあたり、血管と血管の収縮・弛緩についてお話していきます。

 

まず、体中の血管は、動脈・静脈・毛細血管にわかれます。毛細血管は、物質などの交感を行う必要があるために内皮細胞という薄皮一枚の血管です。ただ、臓器によって内皮細胞間の並びの密度が変わります。脳ではかなりきっちり並んで、物質のやり取りを高度に制御していますし、肝臓や脾臓ではすかすかにして、物質のやりとりがやりやすい状態にしています。(脳でも血圧の制御をする部分は少し緩くなっていて、アンギオテンシンIIが入っていけるといわれています)

 

血圧に関係するのは動脈です。動脈もいくつかのタイプに分かれます。大動脈のように太い動脈は弾性動脈といって、心臓からどんと出た血液を一旦受け止めるようにできています。心臓からは、1分間に60回、一回につきおよそ80ml程度の血液が動脈に駆出されます。そのうち、幾分かはそのまま流れていき、残りは一旦動脈に受け止められます。受け止めるときに一時的に血管径を太くします。この時の太く、大きくなりやすさを柔らかさと表現します(少ない力で柔らかくなれるかどうか)。つまり、動脈が柔らかければ、心臓から出た血液は適度に大動脈にいったん受け止められ、その伸びた力を反動にして(ゴムのような感じ)、徐々に末梢へと血液を送ります。つまり、実は動脈も完全に受け身の力ですが、少し心臓のようなことをしています(同じ血液量を送るにしてもこのほうがエネルギー的に心臓の負担が少ないそうです)。これが、いわゆる動脈硬化といわれる状態になると、広がりにくくなって、血液をあまり受け止めることができずに、血液はそのまま末梢へと流れていきます。また、心臓にとってはそれだけ硬い血管へ血液を駆出しないといけないので、負担になります。この負荷が、実は慢性心不全への大きな一歩なのですが、また、心不全の時にお話しします。

次に、末梢のほうにある動脈は、筋性動脈といわれます。それは、さまざまな刺激を受けて、血管径を変化させることで、抵抗値を変化させて、全身の血流分布を変えたり、出血などの時には少ない血液でも血圧を維持できるように働きます。この二つの動脈の違いは、血管の平滑筋という筋肉の量と柔らかさの調整をする機構の違い(共通する部分が多いですが)で、弾性動脈は、どちらかというと硬くなったり、やわらかくなる変化(コンプライアンスの変化)で、筋性動脈は血管径を変える変化(レジスタンスの変化)ということになります。

血管は、3層構造になっています。一番内側には、毛細血管と同じ内皮細胞が一層で薄皮(内膜といいます)を形成しています。その外側には、平滑筋と間質からなる中膜があり、血管の主な構成要素です。次に、その外側には外膜という膜があり、血管を栄養するための血管などがあります。

内膜は、血管の中にレセプター結合部分を出して、必要なホルモンと結合したり、また、直接の血流を感じる部位でもあるので、血流の層状の流れからできる力(せん断応力といいます、川の流れが岸を削る力です)の変化を感知してさまざまなシグナルを出して、平滑筋側に伝えるような作用をします。この内皮の適切な作用が、血圧や血流の維持に非常に大事で、これが不具合を起こすと不適切な血管の収縮や大事にしないといわゆる粥状硬化などという動脈硬化のコレステロールリッチな状態などが生じることになります。

外膜は、外側にあって、血管を養う血管があったり、脂肪が張り付いて、動脈硬化に関係したりという程度でいいかと思います。

血管の柔らかさや血管径に直接関係しているのが中膜の平滑筋です。

中膜の平滑筋は、主に電解質(カルシウム)のバランスや濃度変化を感知したり、外からの刺激が何らかの受容体を刺激して、それがだんだんと細胞の中を伝わって、最終的に筋肉のミオシン軽鎖キナーゼというスイッチを収縮方向へ傾けたり、弛緩方向へ傾けたりして調整しています。

交感神経や、アンギオテンシンIIなども基本的に、カルシウムの濃度を変えたり、カルシウム以外の経路でミオシン軽鎖キナーゼをコントロールしています。

特に、末梢の筋性動脈では、カルシウムの寄与による血管の収縮が強い(大動脈はほぼカルシウムは関係ありません)ので、カルシウムチャネルブロッカーでカルシムの細胞内への流入をブロックすることで弛緩方向へ行きやすくし、血管を拡張させることで、血圧を下げる方向へもっていきます。

カルシウムチェネルは、心臓の心筋にもあり、これがブロックされると心機能が低下するのですが、今降圧薬として使われているカルシウムチャネルブロッカーは、血管にのみ作用して、心臓には作用しないので、心臓の悪い高血圧の人にも使えます。

 

副作用はあまりありませんし、容量もある程度増やせば、それなりに効果があるので増量も有効です。

稀に見る副作用は、浮腫や歯茎の腫脹。他には光線過敏症という光に当たると皮膚炎がるような状態です。

 

とにかく、使いやすくて、有効な薬剤だと思います。