健康リブ ー健康に生きるために病気を知るー

セミリタイアした医者のブログ。元気に長生きするためにしっておいてほしいこと。平日は毎日更新していこうと思っています。

高血圧とは。そもそも血圧とは何か。治療はした方がいいのか。(9)

(高血圧の診断)

高血圧にかかわらず、ほぼすべての病気には診断となる基準があります。

高血圧や脂質異常であれば、検査値で決まるし、癌であれば、基本的には何らかの方法で癌細胞の存在によって診断されます。

 

高血圧や脂質代謝の異常とされる数値はどのように決まるのかというと、ある値を超えると、それに起因すると思われる疾患にかかっている人が増加してくるというところをボーダーラインとして、それ以上を異常としています。

 

またこれとは別に、基準値というものもありますが、基準値は多くの健康であると思われる人の検査値の95%とか99%の人が入っている範囲を基準値とすることが多いです。

肝臓の数値(多くは何らかの酵素)などが、この基準値にあたるが、健康診断の数値で異常だったからといって、このような基準値の場合は、すぐに何らかの疾患になるわけではありません。

もともと酵素には産生と代謝(消失)に個人差があるため、特に値が高いから肝臓が悪いということにはならないし、胆道系の酵素が高いからといって胆道が悪いというわけでもありません。(そもそもほとんどの肝臓の血液検査は肝臓の機能は反映していないので肝機能異常ということ自体不適切なのであるが)

もし、あなたの血液検査が基準値を超えていたら、健康と思われる人の中で、上位2.5%とか0.5%程度の外れた値になっているので、肝臓や胆道に異常のある可能性があるから再検査や別の検査をすることを考えるということになる。再検査や画像検査の結果から、最終的には複合的に慢性肝炎といった診断になっていきます。

 

血圧の場合は、ある程度の人数を10年・20年と長期間経過を見た研究(久山町研究など)や日本人の大規模な観察研究などをもとに、血圧に起因する脳卒中や心筋梗塞、または全死亡などのデータを統計的にまとめて、高血圧にする基準値を出しています。

今のところ、日本では診察室血圧で 140/90mmHg以上、家庭血圧で 135/85mmHg以上を高血圧とすると決められています。

しかし、本来であれば、もっとも心臓や脳卒中などのリスクの低い値は、120/80であり、それを超えていくと心疾患や脳血管疾患などの発症率が高くなっていっているため、本来であれば、120/80を超えると高血圧とするのが妥当だと思います。

ただ、治療を含めて考えると、130/85程度の人を治療してもあまり低下効果はなく、治療による心疾患などの減少という面まで含めると140/90というラインが妥当なのであろうと考えています。

このリスクが上がり始めるという点をふまえたのか、130/80mmHgをアメリカでは高血圧の基準に下げました。このあたりでリスクが上がるという意味では、合理的な判断だと思います。もちろん、これを超えたからすぐに薬物治療ということではなく、高血圧に続く疾患のリスクの高い範囲に入りはじめたので注意を、ということろから始めようということです。

 

最近、日本人の3000-4000万人が高血圧と診断されると、これは、製薬・医療業界の儲けにつなげるために、このような基準を作っているという話が聞かれます。

人間の寿命が50年であったときは、血圧などたぶんたいしてどうでもいい問題だったであろうと思います。今の日本でも、高血圧が原因とされる病気に40歳でなる人は、未だ少数派であり、感染症や栄養不良で人が亡くなっていた時代は、そもそもこのような疾患に罹患することはほとんどなかったと思います。

しかし、感染症が克服され、栄養状態も改善され、人生80歳、100歳時代になり、2人に1人は癌に罹患する時代になりました。2人に1人が癌になる時代に、3人に1人が高血圧でもおかしくないと思われますし、さらに、高血圧の基準値は、上記のように統計学的に高血圧が原因となると考えられる疾患の罹患という明確なもので決められています。

 

少し話がそれますが、高齢者は血圧が高いくらいがいいという自説をもって、全体の血圧診療を否定する人もいますが、そもそも診断と治療は別に考えていただきたいですし、ガイドラインでも超高齢者の治療に関しては、薬剤に対する影響を不耐性という言葉を用いて、十分に個別対応することを勧めています。何も誰でも彼でも、薬を飲まして、血圧を下げて、それでふらついている高齢者をそのままにしておけとはいっていないことは述べておきたいです。

超高齢者であれば多少血圧が高くても、臓器の不全の状態などを鑑みて、今と数年、数か月先を見て治療をすればいいですが、若年者の場合は、世の中がどうなっているか予想もできない数十年先の影響まで考えて診療を行っていかなくてはならないのです。わずかな経験論や黒幕説で、若年者の疾患予防に障害をきたしてはなりません。