心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

高血圧とは。そもそも血圧とは何か。治療はした方がいいのか。(11)

(2次性高血圧)

高血圧の診断が2つあるとお話し、まずは、高血圧かどうか自体の診断のお話をしました。2つ目の診断とは、まず1つ目の高血圧と診断されたら、次に原因となるような疾患があるかどうかを診断することになります、これが2つ目の診断です。

今までお話ししたように、高血圧になる原因は、血圧をあげるようなホルモンが過剰に産生されているか、塩分の感受性が高い人が過剰な塩分をとる、または、なんらかの血管不全(動脈硬化など)が生じている状態で塩分摂取などにより、体内の平均血圧が高い位置で設定されてしまうということです。

2次性高血圧の診断はここでいう主に血圧をあげるようなホルモンが過剰に産生されている状態を調べるということになります。

どうのような状態があるかというと、ある種の比較的珍しい疾患で、ホルモンを過剰産生するような腫瘍性の病気や、腎臓の血流不足になるような腎臓の血管の狭窄をきたしような疾患です。また、肥満や睡眠時無呼吸症候群も2次性高血圧の原因となることがありますが、ここでは血圧をあげるホルモンの上昇を伴うものに絞りたいと思います。

血圧をあげるホルモンとして有名なものは、カテコラミンとレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系のホルモンです。

(褐色細胞腫)

カテコラミンは副腎という腎臓のそばにある臓器で産生されるために、このカテコラミンを産生する細胞が増加するような副腎の腫瘍性疾患(褐色細胞腫)により高血圧が起こります。この疾患では、カテコラミンが常に高い値にあるため、動機や発汗などを伴うことが多いです。血液検査や特殊な畜尿検査、腹部の画像検査などで診断を行います。罹患率が低いので、ただ血圧が高いというだけでこの疾患を調べに行くことはほぼないです。

(腎動脈狭窄)

ただ、次の腎動脈狭窄に関しては、カテーテルで治療が可能であることと、腹部の血管エコーで除外診断がほぼ可能(肥満の人はみえないのでわからないことも多い)なので、比較的若い人であれば、一度は検査してもいいと思います。特に、若い女性の特殊な病気(動脈炎や繊維筋異形成)などがありますので、特に肥満でもない、塩分もとっていない、家族に特に高血圧が多いわけではないというときには、血管エコーで診断可能なこともあるので、一度疑ってもいいのではないでしょうか。

腎動脈が狭窄すると、なぜ高血圧になるのかといいますと、腎臓が血圧をコントロールしているといっている所以なのですが、腎臓が血流・圧不足に陥ると、腎臓は全身が血流不足に落ちったと判断し対応します(腎臓だけか、全身かは判断できない)。

反応するのは、腎動脈にある交感神経の受容器で、腎動脈の圧が不足すると交感神経の刺激を増やすように反応が起こり、全身の交感神経の刺激が増加し、血圧が上昇します。また、長期の刺激は心機能などにも大きな影響を及ぼします。

また、腎臓の中でも今まで述べてきた、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系という一連の昇圧反応が起こります。

まず、腎臓の血流不足で、レニンが腎臓の傍糸球体装置というところで分泌が刺激されます(正しくは、尿細管内のクロール濃度の減少ですが、それはまた、いずれお話しします)。また、これレニンは交感神経の刺激でも分泌が増えますので、ダブルパンチで増加します。このレニン自体にも昇圧効果がありますが、レニンによってアンギオテンシンI→アンギオテンシンIIというたんぱくが続いて作られます。このアンギオテンシンIIが強い昇圧効果を持っています。そのため、このアンギオテンシンを作る酵素(ACE)を阻害する薬剤とアンギオテンシンII自体が受容体にくっついた作用するのを邪魔する薬剤が、降圧薬の一翼を担っています。特に、ACE阻害薬は、循環器疾患の治療薬としても非常に有用な薬剤です。さらに、アルドステロンという昇圧作用をもつホルモンが作られます。このアルドステロンが、現時点で分かっている範囲ではこの系の最終生成物質です。このアルドステロンも昇圧効果がありますし、また、これも心機能などに悪い作用があります。このアルドステロンの作用をブロックする薬剤も、降圧薬の一つです。このアルドステロンのブロッカーは、心不全に非常に有用な薬剤です。もちろん、降圧薬として、2種類くらい使って、3種類目として使われますが、利尿作用もあり、これで降圧が達成される人も相当数います。

この腎動脈狭窄で注意するのは、特に血管炎や動脈硬化の強い人で、両側に狭窄があるときには、薬剤に注意しないと非常に強い降圧作用が出て、危険な状態になることがあります。そのため、レニン・アンギオテンシン系をブロックするような薬剤は、この両側腎動脈狭窄では使用してはいけないことになっています。

(原発性アルドステロン症)

次に、これも腫瘍性の疾患ですが、原発性アルドステロン症という、副腎でアルドステロンが過剰に産生される疾患です。アルドステロンが過剰にでるので、血圧が上がりますし、アルドステロンは、慢性的な高値は心臓や腎臓の機能低下をおよぼします。このアルドステロン症に関しては、まず、血液検査で、レニンとアルドステロンを測定して、その比から、レニンが増えてアルドステロンが増えているのか、それともアルドステロンがレニンに関係なく増えているのかを調べるのと、腹部エコーやCTで副腎あたりに腫瘍がないかを調べに行きます。疑わしい場合は、さらに詳細な画像検査やカテーテルでの検査を行いますが、血液検査で疑わしくいが、腫瘍性のものがない時には、ひとまずアルドステロンのブロッカーを投与して様子を見ることが多いと思います。

蛇足ですが、通常の状態で、アルドステロンの分泌を調整しているのが、アンギオテンシンIIとカリウムです。アルドステロンはカリウムをあげる作用もありますが、カリウムが高いと分泌が少なくなるように調整されます。カリウム摂取により、血圧が下がる理由の一つとして考えられています。

(薬剤性)

最後に、常に考えておかないといけない原因の一つが、薬剤です。

立ち眩みの薬や、痛み止めの消炎鎮痛薬、ある種の漢方(甘草湯はアルドステロンと似たふるまいをします)が、原因となることがあります。

もちろん、必要な内服は優先して服用して、そのうえで減らせるかどうかなど主治医と相談していただければと思います。