心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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高血圧とは。そもそも血圧とは何か。治療はした方がいいのか。(16)

(利尿薬)

前回述べたように降圧薬の中でも、本来最も費用対効果が高い利尿薬です。

利尿薬には、利尿を起こすための作用部位によってさまざまな種類がありますが、基本的には、すべて腎臓の尿細管に作用する薬です。

腎臓では、全身の20%の血流が流れます。血流の分布は、基本的にはその臓器が必要としている酸素量によって、分配が決まります。運動によって筋肉に酸素が必要になれば、全体の循環血液量が増えるとともに、筋肉への配分も増えますし、食事をすれば消化管への血流分配が増えます。では、腎臓は常にそれだけの酸素を必要としているのかというと、それは違います。腎臓への血流の分布量が異常に多いのは、血液が腎臓を通過することによって、尿として電解質や老廃物を排出させる臓器なので、腎臓は必要酸素量以上の血流が流れています。

電解質などの物質をコントロールしている仕組みは、ざっくりというと、血液の中のアルブミンより小さい物質(水、尿酸や尿素窒素、電解質など)を、糸球体という部分で、血管の外に押し出します。水と小さい物質などが押し出された先にはボーマン嚢という袋がありますので、その袋の出口が尿細管へとつながっていきます。

大きな湖に貯められた水が川となって海へ流れていくイメージでしょうか。

この段階では、アルブミンより小さい物質はひとまず尿細管へと流れていきます。この先の尿細管の再吸収という恐ろしく発達した機能が、人間の電解質バランスを保っています。必要なナトリウムなどは再吸収して、体の中のナトリウムバランスを一定に保つ機能です。

この詳細は腎臓のお話の中で詳しく述べたいと思いますが、ほとんどの利尿薬はこの尿細管で行われるナトリウムの再吸収をブロックすることで、体が本来再吸収するナトリウムより少ないナトリウムしか再吸収されなくなり、多めに尿の中へ排出されることで余分なナトリウムを排出します。

このような機序により体内のナトリウム量が減少することで血圧が下がる仕組みです。

利尿薬は、低い血圧でも十分量のナトリウムを排泄させることができる薬といえます。

その中でも、サイアザイド系、及びその類似薬が降圧薬として有効で、尿細管の最後の方の遠位尿細管というところで作用しますので、安定して効果が発揮されます。

副作用は、脱水を心配される方が多いかと思われますが、サイアザイド系単独では脱水をきたすほど利尿はあまりありません。投与初期は、過剰なナトリウムが体内から排泄されるため、しばらく利尿はありますが、脱水をきたすほどの利尿効果はなく、承認時のデータなどからも特に脱水の副作用は報告されていません。もちろん、高齢者には注意が必要ですが、そもそも高齢者は何を出しても、注意が必要です(ACE阻害薬やARBでは腎機能など、カルシウムチャネルブロッカーではめまい立ちくらみなど、β遮断薬では徐脈など)。

新しい薬を処方されるときには、できれば、このように電解質などに作用する薬に関しては、処方前とできれば1週間後ないし2週間後に、アレルギー反応のチェックと電解質の異常のチェック、初期治療効果の確認などをしたほうがいいと考えます。