心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

高血圧とは。そもそも血圧とは何か。治療はした方がいいのか。(15)

(薬物の選択)

薬物治療を始めるとなったら、どうすればいいのかということですが、基礎疾患(*)のない方に関してはなんでもいいです。

大きくわけて、

①利尿薬

②ACE阻害薬

③カルシウムチャンネル阻害薬

④ARB

⑤β遮断薬

他には、補助的にα受容体遮断薬、他の薬との併用効果がいまいちで、単独では値段が高いためにあまり使われない不遇の直接的レニン受容体阻害薬があります。

また、1週間に1度内服でいいものや、アンギオテンシン系を狙った注射剤などさまざまなものがあります。

他には、糖尿病薬の中ですこし降圧効果のあるものなどもあります。

また、カテーテルによる高血圧の治療も最新のデータではいい結果が出ています。

(*)ここでの基礎疾患は、心不全、動脈硬化性疾患(心筋梗塞、狭心症など)、糖尿病、腎疾患、頻脈性不整脈

 

降圧薬には、それぞれ標準用量というのが決まっていて、その量であれば降圧効果はほぼ同じです。

降圧療法に関しては、さまざまな臨床試験が行われていますが、特に重要な試験としては、ALLHAT試験と、さまざまな臨床試験の結果をまとめたメタアナリイス(複数大規模な臨床試験を総合的に取りまとめたもの)であるBPLTTC(Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration)の結果だと思っています。

 

この二つの結果を総合的に、端的にいうと、降圧薬の種類による基本的にはない。ただ、利尿薬で心不全が減少し、ACE阻害薬で冠動脈疾患が減少するという2点のみ個別に勘案される効果といえるということだと思います。

 

以前、厚生労働省の職員が、降圧治療薬は利尿薬が第一選択でいいと発言し、医療界から大きな反発を受けたということがあります。

現場で患者をみている医師が、現場を知らない官僚の発言に対して強い反発をしたとい経過ですが、今までの臨床試験の結果をみると、何をどうみても、薬剤間に効果の差はほとんどなく、基本的に利尿薬でいいという発言は、理にかなっています。

なぜなら、安いからです。利尿薬は浮腫などをはじめとしたうっ血をとる効果があります。その中でも特にサイアザイド系利尿薬と一応利尿薬にはいるアルダクトン、エプレレノンというアルドステロン受容体阻害薬が降圧薬として優れています。

特にサイアザイド系利尿薬は安いです。正確にはサイアザイド系ではないのですが、それと近いもので、私がよく処方する降圧利尿薬は、ジェネリックではないもので、1日1錠11円です。1か月300円です。計算間違えているかと思うくらいです。

利尿薬系は増量しても、副作用が増えるだけですので、降圧効果が弱いからといって、増やしてもあまり意味がないので、他の薬剤との併用が有効です。

個別の薬剤については、あとで述べますが、利尿薬はこの値段で、臨床試験された裏付けされた結果があるのですから、かなりいいと思いませんか。

 

個別案件は別にして、降圧薬はこのように副作用という点からだけ考えればいいということになります。

ただし、副作用もほとんど頻度は変わりません。利尿薬で脱水とか言われますが、そもそも、高血圧は塩分過多の状態です。その塩分は、体の間質に水分を保持します(有効循環血液量ではありません)。それをちょっと抜いてやるだけです。どんどん水と塩を抜くわけではないので、脱水はほとんど起きません。そもそも、この程度の少量の利尿薬で脱水になるなら、よほどの高齢者かカヘキシーという状態ですので、そういった方の降圧に関しては、そもそも必要かどうかを考える必要があります。

冠動脈疾患の方などに関しては、ACE阻害薬というタイプが有効だと思います。これも結構お安いです。一般的な薬のジェネリックで15円程度です。ただ、このACE阻害薬は海外から国内に導入される際に、半量にされています。これには、何の科学的な根拠もなく、これ以外の薬は標準要量は同じですので、ACE阻害薬の用量に関しては注意が必要です。国際的な標準量に合わせると30円程度になります。これで、1か月1000円。

他に、心不全の人に関して、いわゆる冠動脈の異常であったり、心筋そのものの異常による心臓が大きくて動きの悪いものに関しては、β遮断薬とACE阻害薬を中心に薬剤を調整し、それでも、まだ血圧が高いときには、カルシウム阻害薬を導入するというようなこつがいりますが、このような基礎疾患をお持ちの方は、循環器内科にかかっていると思いますので、主治医と相談いただければと思いますし、いずれ、心不全に関しても、詳しく説明していく中で必ず説明します。