心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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高血圧とは。そもそも血圧とは何か。治療はした方がいいのか。(7)

(家庭血圧測定)

実際に血圧を評価する際に、多くの臨床医が参考にしているのがこの家庭血圧です。

先に述べたように、どうしても診察室血圧は、適切な状態で測定することが困難で、さらに、1日の中でも変動する値を、その日の任意の1点の血圧をもって判断するということは適切な診断ではありません。

家庭血圧であれば、正しいやり方で1か月毎日測定して頂ければ、朝30、夕30、合わせて60個もの血圧のデータを集めることができますので、正確に診断できる可能性が非常に高くなります。これはもちろん、治療を開始した人にも同様に言えます。

家庭血圧を測定して頂かないと、治療をしている人に関しては、今の薬が適当かどうか、治療の目標としている値になっているのかどうか、血圧が下げりすぎていないかなど、まったく把握できません。2-3か月に一度診察室で血圧を測定しても、内服の調整などできないのです。

 

測定の仕方は、朝忙しいとはいえ、数分の時間を用意して頂いて、起床後にトイレに行って膀胱を空にし、水を一杯飲んで、数分安静にして穏やかな心で測定してください。

尿意は結構血圧を上げますので、かならず排尿後に測定してください。

また、夜間に測定するときにも、できるだけ同じような状態で測定してください。

飲酒後はだめです。食事からは2-3時間程度はあけたほうがいいかもしれません。

また、重要なのは、血圧計で、どの機種がいいとはいいませんが、血圧を測定するには、上腕をしっかりと覆えるもの(8割以上)で、膨らむ部分(ゴムなど)も腕の半分程度以上あるのがいいとされています。

この点でも、診察室血圧では、患者さんの体格に合わせてサイズを複数おくということはなかなかできませんので、正しく測定できない原因にもなります。

さらに、測定するときには、血圧は重力で変化しますので、必ず心臓の高さと血圧の測定する高さをそろえてください。この高さが変わると血圧も変わります。本当は寝て測定するのがいいので、それができる方はもちろんベットの横に置くなどして測定して頂ければと思います。

 

次に、何回測定すればいいのかということですが、一般的に多ければ多いほど正確な値に近づくと思われますので、世界的にも複数回の測定が推奨されています。

個人的には、3回測定して、その中央の数値がいいのではないかと思っています。(これには異論のある人もいるかと思いますが、1回よりはいいと賛成してくれるといます)

まず、測定するときの測定値の違いですが、安定した状態で、数分のうちに血圧が5-10mmHg変化することは、経験上あまりないと思います。

どんな経験かといいますと、集中治療やカテーテル治療中は、動脈の中にセンサーにつながった針の柔らかい外側(サーフローといいます)をいれたり、カテーテルから直接動脈の圧を測定しています。そういったものを見ていると、いきなり10mmHgとか上下に変動することはほぼありません。状態が変わらない安静時で、2-3分程度の間であれば、変動しても2mmHg程度ではないでしょうか。逆にいきなり10とか下がったり上がったりしたら、何か起こったのかと思ってしまいます。

そのため、複数回測定の結果の違いは、機械の問題か、十分に安静になっていない状態で測定を開始したためかと考えます。

1回の測定では、安静できていなのか、機械の問題なのかで、高めに出ているか、低めに出ているか少し判断が難しいこともあります。

高血圧学会は、2回測定して平均値をと推奨していますが、なかなか計算するのは、めんどくさいと感じるのではないでしょうか。また、これだと、1回目の測定が十分安静になっていなくて、少し高めに出ている場合、本来の安静時血圧よりも高く評価してしまう可能性があります。

そのため、私は、計算しないし、1回目高めに出ても自然と除外できるように代わりにもう一回測定し、合計3回の中央値をとることをお勧めします。