心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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心不全のすべて(29:運動耐容能の指標-2, 6分間歩行距離)

運動耐容能の検査として、心不全が安定している時に行う客観性の高い検査が、6分間歩行距離やCPXといった検査になります。
 
③6分間歩行距離 (6 minute walk distance、6MWD)
歩行という、日常的な動作を用いて、どれだけ心肺機能が運動に対して耐容性があるのかをチェックします。
6分間という時間の中でどれだけの長い距離歩けるかで評価します。検査の単位はM(メートル)になります。
 
30m以上の直線廊下がある場所であれば、どこでも実施可能ですが、心不全患者さんに行うときには、動脈血液中の酸素のヘモグロビン飽和度をみれるSpO2モニターと心電図モニターが検査中もみれるように、これらのモニターリングが無線で行えるようにした方が安全です。
 
呼吸器疾患の方と違って心不全患者さんでは、SpO2(動脈血酸素飽和度)が低下することはあまりありませんが、呼吸器疾患を合併している(特に高齢男性)とか、また、低拍出状態(低灌流所見はない安定した状態でも心拍出量が低い人)があると低下することがありますので、一般的にはSpO2 88%以下で中止といわれていますが、心不全患者の時には、3-5%程度低下したら中止するほうが安全かと思います。
 
やり方は、スタート位置に椅子などに座って、10分程度安静にして、その間も心電図とSpO2モニタリングを行います。
不整脈などを確認し、血圧、脈拍を測定したうえで、検査を開始します。
また、この時に、Borg scaleという指標で呼吸困難と下肢の疲労感のチェックを行います。
 
修正Brog scale
0 感じない
0.5 非常に弱い
1 やや弱い
2 弱い
3  
4 多少強い
5 津代愛
6  
7 とても強い
8  
9  
10 非常に強い
 
Borgというのは、どれくらい呼吸困難と倦怠感があるのかを数値で分類した表です。
最近用いられるのは、修正Borg表という表です。
これは非常に有効で、数字でしんどさ(呼吸困難感や倦怠感などを包括した関西弁)を表現できます。
検査の前は、Borg 0だと思いますが、安静でも0.5くらいの人は心不全ではいます。
 
血圧・脈拍・Borgを確認したら、歩行開始です。
30mの距離をただただ往復してもらいます。
検査についている医療者は、1分経過ごとに声掛けを行います。「残り5分です」など。そして、15秒前に最後の声掛けを行い、6分時点で、止まってもらい、その場所まで椅子を持っていって、血圧を測定し、修正Borg scaleの数字を確認し、距離を確認します。
 
 
15分以上の休憩時間をおいて2回測定することになっています。
入院患者さんであれば、病室で休んでもらってからでいいと思います。
2回測定して、良いほうの記録を採用します。
 
 
一般的な方の距離は、文部科学省によって性別と年齢別に調査されていて、おおよそ65-69歳の男性 620m, 女性 570mだそうです。
(6分間歩行は65歳以上で実施。20-64歳は20mのシャトルランが実施されている)
心不全患者ばかりの6分間歩行を行ってきた身からすると、600m越えってすごいなと思います。
確か、私が35歳ころに測定したときには、600mちょっとだったと思います。
 
さて、心不全患者の平均値はもちろん心不全の重症度によってかわるため、一概には言えません。
ただ、400mをきっていると心不全としての予後はあまりよくないと考えられています。低下すればするほど、予後が悪いとさまざまな論文で報告されています。
ちなみに、この400mというのは、おおよそですがCPXにおけるpeakVO2 14という値になります。
(Sharma R, Anker SD. Eur Heart J. 2001 Mar;22(6):445-8.)
さらに、このpeak VO2 14というのは、心臓移植が必要なほど心機能が低下しているという値になります。
 
実際に行っている様子は、6 minute walk distance や 6 minute walk testで、google検索して頂ければ動画を見ることができます。