心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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ダパグリフロジン(フォシーガ®)は、糖尿病のないHFrEFにも良い可能性あり。

Petrie MC,et al. JAMA. 2020 Mar 27.

Effect of Dapagliflozin on Worsening Heart Failure and Cardiovascular Death in Patients With Heart Failure With and Without Diabetes.

 

3月の終わりに、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬がHFrEF(Heart failure with reduced Ejection Fraction)に有効であると、しかも糖尿病の有無にかかわらず、という論文が発表されていました。

私は、個人的には糖尿病と診断される前に形成されるインスリン抵抗性がないとさすがに効かないのではないかと思っていました。ただ、こういう臨床研究は予想とは逆の結果になることは結構ありますので、予想は外れましたが、驚きはしなかったというところでしょうか。そもそも、予想と言っている時点で科学的に突き詰めた予測ではないので、所詮は当たるも何とやらというところだと思います。

 

今回もアブストラクトしかみれませんので、その範囲でということにはなりますが。

さて、論文の内容としては、20か国400の施設で共同研究を計画し、LVEF 40%以下で、BNP or NT-proBNPが高値の人を4700人ほど集めたグループでの研究です。平均年齢は66歳で、糖尿病のない人が2600人で半数強ということになります。

正直、400施設から集めた割に、少ないなと思いました。登録基準がそれほど厳しくない上に、あまり合併症もない薬剤の投与のわりに、1施設10人程度かというのが第一印象です。各施設の登録者数に傾斜はあると思いますが、ちょっと控えめな数だなと思いました。

dapagliflozin 10mgかプラセボの2郡に分けて、2年弱フォローして、心不全の増悪か心血管死をメインのアウトカムにして、その発生をみているようです。

 

そうすると、Hba1c5.7%を下回る、まぁほぼほぼ糖尿病でも耐糖能異常でもなさそうな人でも、糖尿病の人でも、メインのアウトカムは同等に抑制されていたようです。(ハザード比 0.7程度で、N数によって信頼区間の広さは違う)

ということで、もちろん、この研究だけでdapagliflozinはHFrEFにいいんだ、積極的に投与しようということにはなりませんが、この結果であれば、各メーカーお金をかけて非糖尿病患者に絞っての臨床研究をしようという動機付けにはなると思います。

 

少し話はずれますが、もともとある臨床研究の中のサブ解析というのは、この論文のように、どのサブ解析でもメインの結果はかわりませんよということを証明するために行われます。そのため、臨床研究全体では有意性はないが、あるサブグループ解析の限定された範囲では、有意でしたというのは、基本的には意味がないことです。

あるサブグループで証明されたことを次の臨床研究のメインテーマとして、しっかりと意味のある形で臨床試験を行うきっかけ程度にはなると思います。