心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

LVEFは60-65%がもっとも予後が良いとのこと。

Gregory J Wehner, et al.

European Heart Journal, Volume 41, Issue 12, 21 March 2020, Pages 1249–1257.

Routinely reported ejection fraction and mortality in clinical practice: where does the nadir of risk lie?

 

今回は、LVEFはどの値がもっとも予後がよさそうかということを検討した論文です。

いくつかの研究などでとられた心エコーのLVEFの結果の中から、LVEFの5%毎でグループ分けして、ニュージーランドの国民のデータベースで死亡の有無をエンドポイントして、予後予測をしたということになっています。

エコーデータに関しては、壁厚と左室容量係数が多少評価されていますが、基本的にはLVEFだけで評価していると考えていいような結果になっています。

 

結果的には、LVEF 60-65%というグループの死亡率が最も低いという結果で、それ以上でもそれ以下でも右上がり、ないし左上がりに死亡率が高くなるという結果です。

LVEF 70%以上の死亡率は、およそLVEF 35-45%程度と同じ程度となっています。

 

なんとなく臨床の肌感覚に近いように思います。いわゆるHFrEF(Heart failure with reduced LVEF, 左室駆出率の低下した心不全)では、やはりLVEFが低下していけば行くほど予後が悪くなるように思います。

今回のデータに関しては、かならずしも心不全があるわけではないので、心不全のないLVEFのいいひとに関しては、心不全を発症しなければ、予後は決して悪くないようにも思います。

ただ、壁厚がある程度厚くなると予後が悪くなっていっていて、この要因としては、なんらかの2次的な疾患によるHFpEF(Heart failure with presevered LVEF, 左室駆出率の保たれた心不全)が関係しているかと思います。また、HFpEFに限れば、LVEF 70%以上の予後はもっと悪いのかもしれません。

 

LVEFに関しては、いろいろありますが、意外にこの研究は実際の臨床現場の感覚に近いのかなという感じでした。