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感染性心内膜炎(3)

感染性心膜炎(IE)の診断が付けば治療と、必要な追加検査、手術の必要性の検討となっていきます。
 
診断については、最近は次世代シークエンサーでRNAなどを特定することができ、血液培養よりも、菌の残骸といいますが、断片といいますか、そのような感じのfragmentしたRNAを検出して診断ができるようになってきているようです。
ただ、これでどの種類の菌に感染しているということはわかるとはおもいますが、薬剤耐性はわからないように思います。同じMSSAというくくりでも、地域や病院間で、微妙に耐性を持っている抗生剤に違いがあったりしますので、やはりきれいに血液培養をとって、グラム染色ならびに細菌培養を行うのは重要だと思います。
 
さて、日本循環器学会(日循)のガイドラインは、睡眠時無呼吸症候群のような結構いまいちなガイドラインもありますが、IEのガイドラインは、かなり秀逸で分かりやすいので、抗生剤についてはダイジェスト版でいいので、日循のガイドラインを参考にしてください。
 
ちなみに、他の学会とかは、ガイドラインなどを無料で見られないところが多いように思います。日循に関しては、論文化できるものは日循のCirculation journalで公開したうえで、すべてのガイドラインを日本語でホームページで無料公開しています。その分の経費の原資となる学会費を払ったりしているのは、我々循環器や心臓外科・小児科ではあるのですが、他の診療科の先生方がフリーでアクセスできるガイドラインをあのような種類無料公開しているのなら、その価値はあるのかなと思います。たぶん、ガイドラインの編集の先生方は、ほぼボランティアか、名前が載りますので、名誉的な部分でされていることと思います。
 
グラム染色で菌が検出できれば、ある程度絞った抗生剤の投与ができますが、まったく検出されない場合には、ある程度広域にいかざるを得ません。
また、元々の自分の弁の時と、手術後の弁では対応に違いがありますので、注意してください。
 
抗生剤の投与の開始と同時に、原因を調べることも重要ですし、IEによる合併症を評価することも必要です。
ガイドラインでは、原因が多分野に及ぶことから、IEチームがどうこうと書かれていますが、そんなチームはないのがデフォルトですし、作ったとしても継続した案件がなければ、自然消滅すると思いますので、IEが常に数人は入院しているというかなり特殊な施設でもなければ、そんなチームは維持できないと思います。そのため、チームがないのはいいのですが、その分、IEの時に行う検査や他科紹介などに関しては、電子カルテ内に文書化して統一しておくなどして、ルール化しておくことは重要かと思います。
 
IEが起こりやすい糖尿病のチェックや維持透析かどうか、ステロイドを使っているかどうかなどは普通にしていればわかりますが、全身のCTによる血管現象、特に感染性動脈瘤のチェックや、脳MRI、そして、歯科受診は必ず行わなければなりません。CTはできれば、造影CTが望まれます。多少薄くても構いませんので、腎機能などと相談しながら造影CTを試みてください。
 
また、これらのどれかが実施できない場合や経食道エコーが十分に評価できない施設では、IEの診療は困難かもしれませんので、高次医療機関にお願いするほうがいいかもしれません。もちろん、社会背景を考慮してですが。
 
脳MRIや血栓塞栓症の評価は手術のタイミングに関わります。
元々疣贅が大きかったり(10mm以上)、可動性が高かったり、僧帽弁の前尖についていたり、原因菌がブドウ球菌や真菌であれば塞栓の可能性は高いといわれていますので、これらの所見はエコーなどで十分慎重に評価する必要があります。
また、必ず内科的治療で行けそうなときでも心臓血管外科の先生には知らせる必要があります。結局、内科医はエコー画像しか見ていないことが多いですが、外科の先生は、手術で直接疣贅をみているので、この違いは大きいです。手術中に見る経食道エコーと実際の疣贅を比較している側からの意見は非常に貴重です。
 
ガイドラインで、疣贅や血栓塞栓症の状態から、準緊急で手術をするかどうかの決め手になるとされています。
・1 回以上の塞栓症が生じ,残存(>10 mm)または増大する疣腫​
・10 mm を超える可動性の疣腫および高度弁機能不全がある自己弁IE
・30 mm を超える非常に大きい孤発性の疣腫 ​
・10 mm を超える可動性の疣腫
以上のような状態であれば、準緊急で手術を考慮する必要があります。
 
また、全身の検査して、脳に血栓塞栓症を起こしている場合には、脳梗塞で、出血がないか微小な出血程度の場合には、再度の塞栓のリスクがありますので、疣贅がよほど安定して、小さくなってきていない限りは、準緊急で手術が必要です。
心不全が悪化したり、多少感染が不安定になったとしても十分にリカバリーは可能ですが、塞栓症だけは、致命傷になります。絶対に、血栓塞栓症を起こさないように対応することが最も重要だと思います。
ただし、脳出血の場合には、ヘパリンなどの問題で心臓の手術自体が困難になりますので、一般的には4週間程度は間をあける必要があるとされていますが、この辺りは様々な状態をみて決める必要があると思います。
 
また、手術を考慮すべき条件がガイドラインで述べられています。
その中で、唯一緊急手術の対象となるのが、急性高度弁機能不全または瘻孔形成による難治性肺水腫・心原性ショック​の時となっています。IEで、高度な弁機能不全になるのは、あまりありませんが、腱索が切れたり、大動脈弁の感染による大動脈弁右室シャントなどになると一気に血行動態が崩れるときがあります。
逆に、IEの時の弁破壊は、小さい孔で慎重にみないと見逃してしまうような逆流などの時もあります。逆流の吸い込み血流も小さく、逆流の量としてはサボ度多くないため、カラードプラーも限られた角度でしかみえないということがありますので、慎重にエコーのプロープを動かしながらゆっくりと観察する必要があります。私は、以前4チャンバーから2チャンバーにプロープを動かす途中の2チャンバー寄りのviewでしか確認できない弁破壊によるMRを見逃したことがあります。後尖のmedialの真ん中あたりに穴が開いていて、吸い込みがほぼなく、さっと狭いカラードプラーが吹いていたのを見逃していました。左室長軸などでは部分的にしか見えなかったのかもしれません。なぜ、見逃しに気付いたかというと、翌日か、翌々日に経食道エコーをした先生から連絡があり、その時ははっきりとMRがあり、見返すと私がとっていた動画で一瞬そのカラーが見えたということでした。さらにいうと、静止画でも1枚そのカラーがわかるものがあったとのことでした。油断したつもりはありませんが、IEの時には、どこに孔があるかわからず、孔が小さくカラーが小さいことは十分にあり得ますので、普段のエコーとは違う覚悟を持ってやらなければならぬと思いなおした経験でした。
 
ガイドラインで述べられているIEに対する早期手術についての推奨をまとめました。
心不全​
 緊急:
  急性高度弁機能不全または瘻孔形成による難治性肺水腫・心原性ショック​
 準緊急:
  高度弁機能不全,急速に進行する人工弁周囲逆流による心不全​
難治性感染症​
 準緊急:弁輪部膿瘍,仮性動脈瘤形成,瘻孔形成,増大する疣腫や房室伝導障害の出現​
     適切な抗菌薬開始後も持続する感染(投与開始 2~3 日後の血液培養が陽性,3~ 5 日間以上下熱傾向を​認めない)があり,ほかに感染巣がない​
 状況により準緊急か待機的かが変わるような場合:​
  真菌や高度耐性菌による感染 ​
  抗菌薬抵抗性のブドウ球菌,非 HACEK グラム陰性菌による人工弁IE​
  人工弁IEの再燃 ​
塞栓症予防​
準緊急:
 適切な抗菌薬開始後も​1 回以上の塞栓症が生じ,残存(>10 mm)または増大する疣腫​
 10 mm を超える可動性の疣腫および高度弁機能不全がある自己弁IE
 30 mm を超える非常に大きい孤発性の疣腫 ​
 10 mm を超える可動性の疣腫
脳血管障害の時の手術時期​
 脳塞合併時にも,適応があれば IE 手術を延期すべきではない​
  注)昏睡やヘルニア,脳出血合併例,大きな中枢性病変を除く​
 新規の頭蓋内出血を認めた場合,4 週間は開心術を待機することを提案する​
  注)微小出血を除く