心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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感染性心内膜炎(1)

 
感染性心内膜炎は、心臓の心内膜や弁など構造物、ペースメーカーや人工弁などに細菌感染が起こる病気です。
診断が付けば、まずは、グラム染色などを参考にempiricに治療を行い、感染菌の同定後には、descalationを行って、しっかりと抗生剤で治療しつつ、合併症を評価しながら、必要なタイミングで必要なあれば外科手術などを行っていくことになります。
診断と外科手術のタイミングという2点が大きな問題となると思います。
 
日本循環器学会のガイドラインである「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」が非常に参考になりますので、こちらに私の経験と私見を加えながらお話ししていきたいと思います。
 
感染性心内膜炎は、疑うという点が最も難しいと思います。人工弁手術後などで循環器がみていれば、疑いやすいかと思いますが、特に弁膜症があるかどうかわからない状態の患者さんが、普通の内科に発熱で入院していて、実は感染性心内膜炎という可能性はあるにはありますが、なかなか感染性心内膜炎を疑うこと自体が難しいと思います。
以前、褥婦さんの左室壁に疣贅がベターとくっついていて、もともとの弁膜症どころか、弁の破壊すらない人の紹介を受けましたが、よく診断できたなぁと心の底から素晴らしいと思ったことがあります。
 
心エコーでの所見が重要なことは、ガイドラインなどに記載されていますが、特に初回の診断で、心内膜炎を除外するかどうかというときには、かならず経食道エコーで評価することが重要です。
大動脈弁など経胸壁心エコーでは見えない粥腫があるということはまれではありません。感染性心内膜炎ではないというときには、経食道エコーでの評価が必要です。
 
 
また、全身に血栓塞栓が飛んでいるかどうかを調べることも重要で、手足などの四肢末端は症状が出るのでいいですが、頭部MRI(出血もみれるT2star含む)と腹部臓器などの造影胸腹部CTを行うことが必要だと思います。
 
リスクとしては、菌が血流に入ることが感染の根本ですの。感染性心内膜炎の原疾患として多いのは、歯科治療、アトピーなどの皮膚炎、糖尿病だと思います。
人工弁の置換術後に、感染のリスクを極力減少させるために、特に予定手術では、糖尿病のコントロールだけでなく、歯科でしっかりと歯周病をみてもらい、後はアトピーなどの皮膚疾患に関してもいろいろと治療や考え方が変わってきているようですので、診療をお願いすることが重要です。