健康リブ ー健康に生きるために病気を知るー

心不全について私が知るすべてを話すブログ

心臓リハビリテーション(9)

運動療法などを行っているときに、どのような所見に注意して行っていけばいいのかも重要です。
 
ここでもアンダーソン・土肥改定基準が参考になります。(一部用語を変更)
 
途中で運動を中止する場合​
 ・中等度の呼吸困難、めまい、嘔気、胸部症状などの出現​
 ・脈狛数が140/台を超えたとき​
 ・不整脈(心室性期外収縮〉が1分間10回以上出現​ 
 (案:心室性期外収縮のの明らかに増加、ないし2連発以上の新たな心室性期外収縮の出現​)
 ・頻脈性不整脈​
 ・徐脈の出現​
 ・収縮期血圧40mmHg以上 または拡張期血圧が20mmHg以上上昇したとき​
 
 
何らかの症状が出た時や、悪化したときには運動リハを速やかに中止して、安静にするなどの対応が必要です。
中止基準の一つとして中等度の呼吸困難とありますが、もう少し具体的に言うと、当初予定していたBorg scaleなどの設定値を超える症状の出現とした方がいいかと思います。また、定期的に運動リハビリテーションを行っている人では、いつもでている症状が、普段よりも早い段階で出現することがあれば、心不全などの状態がやや不安定になり始めているか、心不全とは関係ないものの何らかの異常が起こり始めている可能性がありますので、運動リハビリテーションを中止して、主治医に状況を報告し、再度尿量や体重などの変化をみたり、一通りの心不全の評価をする必要があると思われます。
安静にして症状が改善し、主治医が診察などを行った上でリハビリが可能と判断されれば、少し慎重に低強度で、1-2段階くらいリハビリ強度を落としてみて、いけそうなら次回からは通常のメニューに戻すということを考えます。あくまで、安全の上に安全にいくことが重要かと思います。適切な強度でのリハビリは重要ですが、1回や2回強度を落としたところで有効性が激減するわけではないので、安全に行くことが何より重要だと思っています。
 
また、心拍数に関しては、洞調律の時であれば、120bpm程度を越えたら少し注意する必要があります。あくまで、症状を優先して、症状が同程度であっても、心拍数が140bpmを超えるようであれば、運動負荷が大きい可能性があります。
心拍数で運動強度を推測するということは、かなり以前からなされていています。一般的な運動リハビリテーションの強度として重要とされる嫌気性代謝閾値という概念があって、リハビリでは体の中の代謝が嫌気性代謝が始まるレベル(=嫌気性代謝閾値)を超えない運動を行うという考え方ですが、これを個人個人で調べようと思うと心肺運動負荷試験(CPX)を行う必要があります。もちろん、心不全患者にとってかなり重要な検査になりますので、できるだけ行いたいところですが、特に入院中の心不全リハが始まる段階では、このような負荷試験はできませんので(軽い状態で止めるならできますが、手間を考えるとやりずらい)、これの代わりにある程度参考なるのがバイタルサインの中では心拍数ということになります。
(CPXで求めたATの時の心拍数を目標に運動するのが最も良いとはされています)
心拍数で、嫌気性代謝閾値を超えない運動であるという目安をつけるのに、適当な運動強度(0.4-0.6程度)を設定して、心拍数を目安に運動を行っていくという考えで、この時の心拍数を概算するのにカルボーネンの式というものがあります。
 
嫌気性代謝閾値の目安となる心拍数 = {(220-年齢)-安静時の心拍数}X運動強度(0.0~1.0)+安静時心拍数
 
となります。運動強度は、心不全の方の場合には、0.4-0.6くらいの値がいいと思います。(スポーツマンなら0.8-0.9とか)
 
例えば、高齢心不全でみられる70歳、安静時心拍数70bpmの方では、
運動強度 0.4としたら、心拍数 102で、0.6としたら、心拍数118となります。
このように、だいたい0.4-0.6くらいの心拍数を概算しておくと一つの目標になりますので、自覚症状が許す範囲であっても、心拍数120bpmを超えるような運動リハは少し過剰な運動である可能性があります。
そのため、一般的な循環器疾患に対する運動での心拍数は120bpm程度まで、140bpmを超えるようなときには、過剰な運動であったり、心不全が不安定化している可能性があったり、何かの不整脈になっている(運動中に心房粗動になっていたなど)可能性がありますので、いったん中止して評価する必要があります。
心拍数は同じ運動でも、運動療法が進んで運動耐容能がよくなっていけば、上がりにくくなります。運動療法の効果を感じる瞬間でもあります。
 
また、血圧や心拍数は、運動で上がることはあっても下がることはありません。運動開始の直後であれば、多少下がることがありますが、負荷が上がるにつれて血圧と心拍数は上がっていくのが通常であり、下がることはありませんので、下がっているときには、運動を中止して、正確に測れているかを確認して、正確に測れているなら何か異常が起こっていないか調べる必要があります。
心拍数に関しては、ある心拍数を超えると洞房ブロックや房室ブロックなどが出現することがあり、いきなり心拍数が半分になったりすることもありますので、十分に注意が必要です。